一枚の境遇
女の人が白い日傘をもって歩きスマホをしている。とても起用な方だ。
傘を持ちながらスマホを持っているのだから。
前からネコが歩いてきているのにも気がつかない。
スマホの画面しか見えていなさそうだ。
昨夜、付き合っていた彼と別れたが
彼からの連絡が入っているか気になって仕方がないようだ。
ネコはというと何かに気に向けている。
ネコの視線の先にはピエロ。
街のネコと縄張り争いで敗れてしまった彼は
警戒心が強くなっていた。
そんな中、通りの角から異彩を放つピエロが現れたのだ。
前から歩いてくる女性の存在は忘れて
ピエロに警戒心を向けている。
ピエロな彼は社会に馴染めずこの仕事しか出来ない。
このままではいけないと思いつつも
どうしていいかわからない。
仕事の合間の休憩で
流れゆく人々を眺めては劣等感に苛まれむ。
ここでのたれ死のうと誰も気がつきはしないだろう。
孤独な女性が、失恋の痛みを知り
孤独なネコが、街での現実を知り
孤独なピエロが、絶望を知る
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