野球IQ投手編

 

野球IQ


以前本ブログでは、技術的能力や身体的能力ではなく、試合中にどういったことを考えてプレイするといった「野球IQ」についてふれました。
では改めて「野球IQ」とは、、、
状況を理解し、次に何をすべきなのかを無意識のうちにできている人の事を「野球IQ」が高いと解説していました。
前回の「野球IQ」の記事では、主に野手の打撃、走塁、守備についてふれられていました。

そこで、今回の「野球IQ」の内容では投手の投球における「野球IQ」について解説していこうと思います。
ただし、「野球IQ」については様々な考え方があると思うので、あくまでも私個人が経験したことや、実践していた事なので、必ずしもこの考え方が正解というものではありませんので、その点を踏まえて読んでいただければ幸いです。


マウンドで考えている事


まず投手が求められる事といえば、「目の前の打者を打ち取りアウトを取る事」「相手に得点を与えない事」というのが前提であり、投手なら誰しもがこの気持ちを持ってマウンドに立っていると思います。
しかし、試合ではそういった考えだけでは不十分な場面が多くあります。
試合中は常に状況が変化していきます。
そのため1球ごとに、状況を確認し次のプレイ考えてマウンドに立たなければいけません。
では実際に、マウンド上でどのような事どんなタイミングで考え、次のプレイに入っていくのでしょうか。



野球は間のスポーツともいわれています。
「野球IQ」が高い選手は状況を理解し、次に何をすべきなのかを無意識のうちにできている人とありましたが、それを行うのが投球ごとの「間」です。
1球ごとに状況が変化する中で、この「間」を使い様々な事を考え、次のプレイに移っていきます。

実際にマウンドで確認する事や考える事は以下のような内容になります。

試合状況:イニング、点差、カウント、走者位置、守備位置
打席の打者:相手打者との相性や力量、事前のデータ、当日の打席内容、
上記をもとに予測に入っていきます。
予測:相手の作戦、相手がやりたい事、相手にやられたくない事
こういった考えをもとに、試合状況によってプラスアルファでこの打者と勝負するのか次の打者との勝負なのかを、天秤にかけアウトに出来る確率が高い打者との勝負を選択していかなければなりません。
勝負となれば最終的な基準を作り、最高の結果を再現していく為の配球を考えていきます。
(例)最高結果「三振」最低結果「ホームラン」最低限「犠牲フライ」
カウントや状況の変化によって基準も変わっていくので、同じ工程を繰り返し行っていきます。


状況を想定した考え方の例


ここからは、何パターンかの状況を設定し状況に応じてどういった事を考えているのか紹介していきます。
また、ランナーを背負っての投球は「野球IQ」の高さを紹介する上で分かりやすいと思いますので、ランナーを置いた状況を想定して紹介していきます。

ランナー2塁のケース(状況確認編)


例えば得点圏の2塁にランナーがいるような場面などでは、試合状況によっては外野がかなり前にポジションをとる事があります。
状況確認ができている場合、高目の投球はフライの打球を打たれ頭上を越されるリスクが高まるので、ゴロになりやすい低めの投球を意識しますよね?
ただ「野球IQ」が低かったり、バッターに投げる事で一杯いっぱいの場合、状況確認を忘れたり、どういった投球が求められているか理解できていないまま投球に入ってしまい、不用意に高めに投球してしまい外野の頭上を超されてしまうといった場面も高校野球などでは見かけることもあります。

状況確認すらせず、何の意図もなくただ投球していては投手としての野球IQが高いとは言えないでしょう。
必ず投球に入る前には、やってはいけない事・やらなければいけない事など、しっかりと整理して次のプレイに移っていかなければ、チームの作戦やベンチからの指示は何の意味も持ちません。

ランナー2塁のケース(組み立てで意識したい編)


次は組み立ての中で意識するポイントで、実践するには少しレベルが高いと思われる例です。
2アウトランナー二塁では、カウント3-2になる前に極力勝負できるようにといわれていました。
フルカウントにすると、基本的にはストライクゾーンで勝負していかなければいけない事や、こうしたカウントで自信を持って投球できる球種は絞られるため、打者もし狙い球を絞りやすくなることが言えます。
ただ、これはどんな状況でも言える事でランナーがいるいないに関係なく言える事です。
ランナー二塁でこういわれる理由としては、、、
カウント3-2にすることで、二塁ランナーが目視でストライクと判断すれば良いスタ-トを切られてしまう為、ワンヒットでホームに帰ってこられる確率が高くなる事から2-2までに勝負しなさいという事でした。
しかし、これはあくまで理想の組み立ての話で、3-2にしない為に簡単にストライクゾーンで勝負するというわけではないので誤解しないようにお願いします。
こういった部分もしっかり考え投球し実践できている投手は、「野球IQ」が高いだけではなく、技術的能力も組み合わせたパフォーマンスが出来ているといえるでしょう。


勝負する打者の選択


勝負する打者の選択の例でみていくと、、
ネクストのバッターなど、グラウンド以外の部分も考え状況が見えているかどうかという事です。
特に僅差の試合展開で終盤に差し掛かると、この選択を迫られる場面が多く出てきます。
私の場合だと、左投手という事もあり得点圏で右打者に回った際に次の打者が左であれば、左打者の方が抑える自信があるため、次の打者との勝負を選択することになります。
完全に勝負を避ける場合は、基本的にベンチの判断で敬遠を申告しますが、勝負している途中で、カウントが崩れてしまった場合は歩かせても良いというスタンスで勝負しに行く事もあります。
ここでは勝負しに行くといえど、初球から決め球を投球する意識で投球し絶対に投げ損ないをしないようにする事を絶対条件として投球していきます。
勝負していく中でカウントが崩れれば歩かせるといった打者との勝負をしつつ引き際を見極めて投球する事が求められます。
特にこういった場面での選択は、状況をしっかり把握して勝つためには何が必要なのかをしっかり理解していなくてはいけません。
こういった場面で正確な状況把握ができていないプレイや投球は、試合を決定づけるといった最悪の結果に繋がる事も考えられます。
こういった「野球IQ」の低い凡ミスは、チームの士気を下げるうえに自身の信頼をなくすので注意が必要です。


おまけ編


おまけの想定になりますが、最後は2アウトで8番をいかに抑えイニングを終えられるかが重要という考え方です。
これは、DHのないセ・リーグだからこその考え方といえるかもしれません。なので実践でというよりは、セ・リーグの試合観戦する上で参考にしながら見ると良いかもしれません。

投手は基本的にチャンス時でなければ、あまり積極的なバッティングをしません。(例外もいる)
つまり次の相手攻撃イニングの先頭が9番から始まるという事は、先頭打者をアウトにできる可能性が高くなるといえます。
どの状況でも集中しているんですが、特に「先頭を大事に」「先頭集中」など、イニングの先頭打者に神経を使いなさいといった声かけは良く耳にしたことがあるかもしれません。
理由としてはお分かりとは思いますが、先頭の出塁は相手チームに得点を許す確率が大幅に上がってしまうためです。

逆に先頭を抑える事で、得点の確率は大幅に減少し、同時にその後出塁を許しても相手はそこまで思い切った作戦を実行しにくくなると言えます。


特に長いイニングを投げる事を要求される先発投手は、こういった自身を楽にできる状況づくりの要素も考えながら投球していけるとさらにレベルの高いパフォーマンスに繋がるかもしれません。

こうした考え方は中継ぎ投手の出番があるか予測し登板の準備を開始する際の判断材料などとしてもチェックしているポイントとなります
試合状況などによって変わる事もありますが、継投タイミングが近くなったり、先発投手があまり内容が良くない際は継投のタイミングの1つとして考えています。

9番から→続投でピンチで上位まで回れば交代
1番から→イニングの頭から投手交代


といった事が考えられるので守備中だけではなく、次の展開や状況を理解し登板に向けた最適な準備を行えるといった事も、「野球IQ」が高い選手といえるのではないでしょうか。


まとめ


今回、こちらでいくつかわかりやすい想定を選び、投手の「野球IQ」要素をご紹介させていただきました。
どうでしょうか?
単純に投げて打者を抑える事だけに注力しているように見える投手ですが、意外と考えるべき事は多いと感じるんではないでしょうか。

こうした状況確認や考えを持ち投球に組み込んだりしていくには、まずは野球を知る必要があります。
前回の「野球IQ」の記事にも、野球を観ましょうとありましたが、まずはそこからがスタートです。


試合中だとどうしても視野は狭くなってしまいがちです。
こういった状況でいきなり「野球IQ」を高めようとする事は難しいと言えます。
まずは第三者として試合を観る事で、広い視野を持った状態で、今回説明したようなポイントを試合で投げている投手の立場になって考える事で、「野球IQ」を高める訓練をしていただければと思います。


著者紹介

ライブリッツ株式会社 中村恭平
9歳から野球を始め、立正大淞南高校を経て富士大学から2011年広島東洋カープにドラフト2位で入団。1年目から主に先発として登板して3年目にプロ初勝利。中継ぎに転向した2019年43試合に登板し、12ホールドを挙げるなど活躍し、2021年まで11年間プレイ。現役時代の故障経験や動作解析によるパフォーマンス向上を経験した事から、データを用いた取り組みの重要性を感じ、現役引退後の2022年4月にライブリッツへ入社。今後はアマチュアスポーツ界の技術力向上やケガやリハビリに対する意識改革に貢献していきたいと考えている。

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