【エッセイ】続編 トルコの友人 Dike 3.「トルコ流おもてなし」3/3

 翌朝、昨日決めた通り8時すぎにジャケットとバッグを持って下に降りた。

 彼女は部屋着姿で紅茶を沸かしていた(二重になったポット。初めて見た)。 そしてオーブンにパンを入れ、お皿を用意した。

 「よく眠れた?今日はたくさん歩いて足が痛くなるよ。サンダルよりもスニーカーで行くのがいい。ちょっと格好悪いけど、そっちの方が大事。」

 私はいまだお腹いっぱいである。でも少しは入るだろうか(結局その少しの隙間に目いっぱい詰め込むことになった)。

 冷蔵庫からはチーズ、バター、オリーブのペースト、昨日の残りのピリ辛ドルマやお肉、サラダ、デーツ、プチトマト、続々出てくる。

 驚いたのがチーズと言っても3,4種類、バターと言ってもホームメイドと買ったもの、ジャムもゴマのペースト(ピーナッツバターみたいな)などいろいろある。 それらをパンに塗って食べる。 またそのパンもインドのナンみたいな大きさでまるまる一枚渡してくる。

 彼女の細い体のどこにそれらすべてが入っていくのだろうか(そういえばイタリアの細い友人も私よりもはるかにたくさん食べていた。それらがどこに消えるのかずっと疑問だった)。

 一度人にあげたものは、もうその人のもので、自分は絶対に受け取らない。 私が断ったところで彼女は私の分を食べることはない。再び、全ての食材の味見をし、食後にはコーヒー(紅茶はすでに入れてくれていた)と、残り物だというケーキまで切り分けてお皿に盛られた。 今日はもう本当に十分食べた。お腹いっぱい。


 今日は彼女の友人Alishaも来る。 DikeとOmar、そしてAlishaは、私の希望である中心地の観光に付き合ってくれる。結局私のトルコ滞在中ずっと一緒に過ごしてくれた。

Omarは今日も運転係。お礼を言う度に、きまって優しく柔らかな調子で、「なんでもないよ」と返す。そして口元をにこっとさせた。

 今日は昨日に増して暑い。

 Dikeは出かける準備をちゃっちゃとしている。「モスクに入るならこれね」と3人女子用にスカーフを持ってくる。

「おなかがすくからこれも。」と言って、昨日買ったあのRice crispyとチョコレートのビスケットを持ってきた。(私は昨日からすでにとってもお腹がいっぱいで到底必要がないように思われたが)

 そして彼女は何やらまたキッチンで活動している。3人分の袋にリンゴと、緑の小さな丸いフルーツをたくさん詰めている。

 ー ありがとう。私はトートバックを引っ張り出して、これらお菓子及びおつまみを詰め込んだ。

 これで準備万端。 出発はまだだろうか。Dikeはまだ何かしている。キッチンに入って覗いてみた。

― なんと!クルミを割っているではないか!

 どうやらおつまみは十分じゃなかったらしい。

袋いっぱいの全てを割ろうとしているように見えるのは気のせいか。

 「準備してくるから、やっておいてもらえる?」

そう言い残して、私はくるみ割りに初挑戦することになったのだが、その時私の頭に蘇ったのは、ドイツでDikeに森で拾ったナッツをもらった話である。結局ナッツが固すぎてどうしても割れず、森に返却しに行くことになった(ことは彼女には秘密)。

 「今日はたくさん歩くからできるだけ荷物を少なくね。」

という言葉とは裏腹に、お菓子及びおつまみバッグがかなりの幅を利かせていたが、それは彼女の目には映らないようだ。

 これもドイツでの話だが、彼女の荷物がいつもなぜか多かったのにようやく納得がいった。 小旅行でも、キャリーバックからリンゴとバナナが突然いくつも現れたっけ。お菓子もちょくちょく分けてくれた。

 Dikeは食事は大事とよく言っていたが、それは彼女の言葉と行為から十分に伝わった。人は人を食べ物でおもてなしし、またOmarやそのBabaがするようにラマダンで空腹に耐え、食べもののありがたみを知る。 私は当たり前として意識さえしなくなってしまった物への感謝を、ここで思い出すのであった。

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