【エッセイ】続編 トルコの友人 Dike 3.「トルコ流おもてなし」2/3

 1時間半が経った頃、下に向かう用意をした。 キッチンの方から食器の当たる音が聞こえる。 Dikeは料理の真っ最中だった(ほとんど終えていたが)。 テーブルには4人分のナフキンと食器が用意されていた。

 「二種類のスープと、これがさっき買ったチキン、これから揚げるもの。昨日買ったCowの肉..なんだっけ?― Beef、そうBeef。全部試してほしい。トルコの料理を全部味わってほしい。あ、何か知っている料理があったら教えて。作ることができるから。」

 彼女は座ってて、と言うけれど、それは私の体が言うことを聞かない(下手に手伝わない方がむしろ相手にとってはやりやすいことを知っているが)。 だから、オーブンに冷凍ピザを入れて、ピザ係になってみた。

 そこに来客。 OmarのBaba(ぱぱ)登場。

Dikeは丁寧に挨拶をし両頬にキスをした。

私はつたない、例の唯一知っているトルコ語を口にし、自己紹介をした(ここ以外で晴れて披露されることは残念ながらなかった)。

そして握手。

上の階から、休憩していたOmarが降りてくる。 Babaにあいさつ。

 勝手にBabaと呼んだが、トルコ語やアラビア語でパパはBabaという。そういえば、アラビア語圏の私の友人たちは、アラビア語にpの発音がないために、代わりに発音がbになっていたな。でもDari語(Persianの一種の方言)にはPの文字があるんだよな、なんて考えたりした。

 「Lea、聞こえる?」

 外から誰かが何かを唱える声が聞こえた。 日が沈み、ラマダン中の人の食事が解禁される合図だ。 実際に聞いたのは私にとってこの時が初めてだった。 耳を澄ませながら、暗闇に包まれていく庭の緑を窓からしばらく眺めた。


 彼女はとっても料理が上手だった。

「今日はWelcome partyね、今日だけだよ、こういうのは。」

そう言って一つ目のスープをみんなに取り分けた。

「Leaもお茶いる?」

OmarとOmarの Babaは、トルコの伝統的な真ん中がくびれた小さなグラスで何杯もお茶を飲んでいる。空腹にはまずお茶だ。

 DikeはBabaにたくさん話しかけ、時折料理を勧めた。

Babaはピザ係の私を見て、「日本人らしい」と言った。さもなければ座って料理を待っていることだろう、と。Babaは時折私に気遣い、「日本でもピーマンにお米を詰めたそれに似たような料理があるのか」など、Dikeを介して質問をしてくれた。Omarの Babaなだけあって、優しく、穏やかで、非常にかわいらしい人であった。

 二種類のスープに、二種類のお肉、Babaが持ってきた、ピーマンにお米やお肉を詰めたピリ辛料理ドルマ(Dikeは辛すぎて食べきれず、Babaに悪いことをしたと食後にしょげていた)、私の担当だったピザ、そしてラマダン期特有のピタではないパンにホームメイドチーズと蜂蜜、オリーブ、全てありがたく試させてもらった。 食後には、鍋でコトコト抽出するトルココーヒーと、甘い伝統菓子をぱぱぱっと用意した。

 私は彼女の偉大で温かく感謝してもしきれない、とびっきりのおもてなしに心から感謝し、また自分のお腹がすべてを受け入れてくれたことにもほっとした。 朝はもう何も食べなくていい、むしろ食べない方がよさそうだ。そう思った。

(が、しかし..)

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