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株高に対する考え方

2024年は年初から株高に沸いている。日経平均は〇〇年ぶりに節目の〇〇万円を突破したなどと、メディアも個人投資家も目の色を変えて喧伝している様子だ。2024年は新NISAが話題になったことも手伝い、多くの人が投資に関心を持った。最近は筆者の周囲でも、株や投資に関する話題や議論を耳にする機会は、昨年までとは比べ物にならないくらいに増えた。少し前までは「株なんて危ないから辞めとけ」というニュアンスの意見も聞いたが、最近はすっかり聞かなくなった。
一方、現在が株高(と思える株価)だとしても、株式に対する姿勢はそれ以前と何も変わらないのが論理的に正しい考え方だ。確かに、持ち株に含み益が出れば売りたくなるし、周囲に儲かっている人がいれば買いたくなる。(他人の儲け話は相当に心を騒つかせるものだ)
しかし、株高と言うが、そもそも何を根拠に「株高」と言っているのか不明だ。日経平均40,000円が「高い」のか「安い」のか、今を生きる我々に判断できるものではない。10年後には80,000万円になっていて、その時から見れば「激安」に見えるかもしれないし、20年後には20,000円になっていて、その時から見れば「激高」に見えるかもしれない。今年に入ってから「企業業績に照らして今の株価を見れば、、、」とか「バブルの時とはPERの倍率が違うので、今の株価は決して高くない。」とか「株価が上がってきたので、今から始める人は注意が必要だ。」とか、自称専門家が流す情報はいずれも傾聴には値しない。

さて、このような投資や株に関心が集まっている状況は、証券会社をはじめとした金融機関にとって絶好のチャンスなので、雑誌やテレビの特集なども投資関係の話題が増える。パッと思いついたものを書いてみよう。

 ・株価予想
 ・おすすめの投資信託
 ・アメリカ投資か、全世界投資か、新興国投資か
 ・新NISA口座の獲得競争
 ・初心者向けの投資信託の開発
 ・株価が高いか安いか論争
 ・ネット証券か、店舗型証券か

他にも筆者が知らない株に関する情報は数多発信されているだろう。株価の予想やおすすめの投資信託などのゴシップネタは、時代や状況が変わっても相変わらず人気コンテンツのようで、話題の大半を占めている。一方、インデックスファンドはここ1年くらいで急速に市民権を得た様子で、アメリカ株(S&P500連動型インデックスファンド)と全世界株式(MSCI オール カントリー ワールド インデックス)のどちらが有利か比較するような議論を見かけるようになった。
※ちなみに、この「どちらが有利か?」っという議論には全く意味がない。上記に限らず、結果的に有利だったものは未来にならないとハッキリしない。ゆえに、「どちらが合理的か?」と考えるべきだ。「どちらが合理的か?」と問われれば、答えは全世界株式で明快だ。

・「1銘柄の投資と2銘柄の投資」のどちらが合理的か?
・「10銘柄の投資と30銘柄の投資」のどちらが合理的か?
・「50銘柄の投資と300銘柄の投資」のどちらが合理的か?
・「アメリカ(500銘柄)の投資と全世界(約3,000銘柄)の投資」のどちらが合理的か?

実際は答えは明確で、特に議論するほどの話題でもない。しかし、「アメリカは世界経済の中心だから、、、」「アメリカの企業は世界中でビジネスをしているから、、、」などと言って煙に撒こうとする連中がいるので、ややこしくなる。わかりやすいところからシンプルに考えていけば、答えは単純なのだ。



さらに余談になるが、これはドルコスト平均法についても同じことが言える。投資できる資金が120万円ある個人を想定してみよう。例えば、全世界株式に投資する場合、下記のいずれが合理的に見えるだろうか?

①120万円を10万円ずつに分けて、1年(12ヶ月)かけて分割して投資する
②120万円を一括で、今すぐ投資する

①の方が合理的だと感じた方が多いと思うが、合理的な投資判断は②だ。話をわかりやすくするために、⓪を追加してみよう。今度はどう見えるだろうか?

⓪120万円を1万円ずつに分けて、10年(120ヶ月)かけて分割して投資する
①120万円を10万円ずつに分けて、1年(12ヶ月)かけて分割して投資する
②120万円を一括で、今すぐ投資する

現時点で手元に120万円の投資資金があるのに、それを10年かけて毎月1万円ずつチマチマ投資するでは、機会費用の損失が大き過ぎて話にならないことは、誰でもわかるはずだ。①と②でも同じことで、投資可能な資金は一括で投資してしまうのが、最も機会費用を逃さない合理的な判断だ。そもそも下がると思うなら、ドルコスト平均法で投資するのではなく「投資しない」のが最適解である。上がると思って投資するのだから、機会費用の損失は無視しないほうが良い。



さて、本筋に戻るが新NISAの獲得競争についても少し言及しておこう。各金融機関の熱量は多少落ち着いてきた感触だが、まだまだ健在だ。「NISA口座は1口座しか持てない」、「口座を他の金融機関に移す手続きが非常に面倒」という2つの要因が、NISA口座を自社に作らせれば顧客を囲えるという考えになりやすい側面がある。
しかし、金融機関にとってNISA口座はあまり旨みのあるものはない。特にNISAの「つみたて投資枠」は金融庁が認めた商品しか購入できない。この「金融庁が認めた商品」は金融機関側にとって儲けの少ない(顧客側にとって儲けの大きい)商品だ。そこで、NISAの「成長投資枠」で手数料を取れる商品を売ろうとする。これを「コアサテライト戦略」もしくは「コアサテライト投資」と呼ぶ。インデックス投資などの「守りの投資」とアクティブファンドや高配当投資などの「攻めの投資」を組み合わせましょうっということだ。筆者がこの売り方を知った時、あまりの商根に感動(本当に関心)した。よくそんなアイディアが思いつくものだ。

金融庁はもっと個人に投資してもらいたいと考えているはずだ。新NISAはそれを象徴している。ただ、主に投資を始めたばかりの人(というか個人投資家)が金融機関の食い物にされるような事態は避けなければならない。そこで、NISAのつみたて投資枠で販売できる商品は、金融庁が事前に「検品」することになったのだろう。
冷静に考えれば「つみたて投資枠」の検品済みの商品は相対的に「マシ」なはずなのだから、「成長投資枠」であっても、つみたて投資枠と同じ商品で良いと考えられる。しかし、それでは金融機関側が商売にならないので、このようなアイディアが生み出されたわけだ。コアサテライト戦略など相手にする必要はないが、その発想自体には大変感心した。

株価が変わろうと投資に対する付き合い方を変える必要はない。一見それらしく聞こえる話も、少し考えれば大抵の場合、正誤の判断ができるものだ。

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