なぜ逆張りデッキは勝てないのか【厳しい現実編】
どうも、割とどんな環境でも先攻ワンキルされなきゃ楽しめるカテキンです。
今回は以前書いた記事をより広く、抽象的に書いてわかりやすくしようというものです。
この記事では2022年4〜6月のスプライト一強と言われた時期を中心に、その頃にメタゲーム上に存在していた所謂逆張りデッキとの違いを考察しました。
しかし、読み返してみたものの、(記事を執筆中にイシズティアラが台頭してきてやる気が削がれていたとはいえ)テーマについての考察ばかり書きすぎてて「なぜ逆張りデッキは勝てないのか」というより「なぜ当時の環境で他のデッキが思うように結果を残せてないのか」という感じだったので、今回はテーマについて触れることは最低限にし、いつの環境でも当てはまるような記事を書くことを目的としています。
上の記事でも書いていますが、この記事は所謂逆張りデッキを使う人を批判したり、貶めたりするものではありません。
実際私自身は飽き性な方なのでしばらく経ったら一旦別のデッキを使うなどということは結構あります。それでも勝つべき時は勝てると思うデッキを使うようにしていますが。
あくまで逆張りデッキを使うならそれなりの覚悟と分析が必要だということを伝えるためのものです。
また、上の記事を読んだことがある人の中には気づいた人もいるかもしれませんが、この記事では「〜である。〜なのだ」といった書き方ではなく、「〜です。〜ます」の書き方にしています。
内容が内容なので批判口調に見えてしまうのを少しでも軽減するためです。
前置きはこれくらいにして逆張りが勝てない理由を自分なりにひとつずつ掘り下げていきます。
母数の違い
単純明快ですね。そもそも環境トップは強い故に多くの人が使います。対して逆張り側は少数派になります。強いデッキを使ってる人が多ければ、それだけ入賞率も上がります。
ただし、これは外から見た視点です。
逆張りデッキを使う人からしたら環境トップを使う人が多いことは願ったり叶ったりでしょう。
なのでこの項目についてもう少し掘り下げます。
研究量の違い
使ってる人が多いという事はそれだけそのデッキについて考えてる人が多いという事です。
プレイングやメタに対するプランの研究は使用者の数だけあるのですから、逆張り側が考えたプランが流行ったとしても、それに対するプランが早期に発見されることもザラです。
例えばティアラの対策としてさくらが流行れば、対抗できるプランとして烙印融合や沼地を使ったルベリオンや、サイドのクライムなどが考えられます。
「さくらが流行ってるけどどうしよう」と当時思っていた人も、誰かが考えたこのようなプランを真似する事で対応することができるようになります。
上記のような"メタのメタ"になるプランもそうですが、プレイングなどについても環境トップのデッキというのはたくさんの人がnoteやブログ、動画などで解説してくれているため、実践しなくとも空いた時間に学ぶことができます。
デッキレシピも毎週各地のCSなどで入賞したレシピがたくさん流れて来ますから、環境トップを使う人はその数ある選択肢の中から好みや周りの環境に合わせたものを拾って自由枠やサイドなどを調整するだけで完成度の高いデッキが出来上がります。
対して逆張り側はどうでしょうか。
逆張り側は当然環境トップより使ってる人が少ないので研究量は少なくなります。その分メタられることも少ないですから"メタのメタ"を考えなくていいというのは当然ですね。そのために使ってる節もあるでしょう。
しかしだからと言って研究量が少ないことは見逃せません。環境2番手(Tier2)ならともかくそれより下となると参考にする記事や動画は少なくなるし、自分が使うデッキに対して有効なメタカードが流行ってしまった場合に対抗できるプランが中々見つからないなんて事もあるでしょう。
流れてくるレシピも少ないですから参考にするレシピも少ないです。「最近これを入れたレシピが入賞してたぞ」みたいな事も少なく、メタを張るにあたってのインスピレーションも結局自分や周りの意見次第になるわけです。
そして研究量が違うとさらに逆張り側を悩ませる問題が発生します。
型の違い
環境トップと一言に言っても中身が同じとは限りません。
実際現環境トップのティアラですら前環境覇者のイシズ系全投型・ムドラケルドウだけ入れた型・ムドラケルドウ抜きの安定型・ビーステッドやさくらをメインから採用したピーキーな型など、多数のデッキタイプが存在します。
これらはそれぞれ明確にプランや有利不利が異なり、対応範囲も変わってきます。
こうも型がバラけているとティアラとばかり当たってるとはいえそれぞれの型で対応範囲に差があるので、逆張り側もひとつのメタに頼りきるなんてことが難しくなります。
中には初見の型もあるでしょうから「初見殺しするはずだったのに初見殺しされた」なんてこともあるんじゃないでしょうか。
まとめると
・逆張りがメタを張ってもそれをメタれるプレイングやプランが発見されやすい
・メタプランもプレイングも自分で研究していかなければならない
・型が多すぎると環境トップは1つのはずなのに対抗しきれないことがある
以上が使用者数の差による逆張りデッキの勝ちにくさの原因となっています。
環境トップ以外の存在
前の記事に書いたことではありますが明確な理由の1つではありますのでまた書きます。
大会ではありますが、分布を見るとTier2もそこそこいますし、逆張りを使うのも自分だけではありません。
逆張りを使う側の人なら経験したことあると思うのですが、対面の人に「うわー!知らねぇデッキだー!サイドから入れるカードなんてねぇよぉ〜」みたいなことを言われたことはないでしょうか。私は沢山あります。
ですがそのセリフ、自分も言ったことはないでしょうか。私は沢山あります。
いろんな大会の分布を見ると決勝トナメの分布は偏っても参加者全員の分布を見ると結構環境ではあまり見かけない顔ぶれもいたりします。
そもそも1強環境でも大会全体の参加者の分布で環境トップのシェアが5割以上なんて事は滅多にありません。
1回戦はランダムに割り当てられるので未知のデッキと当たる可能性は十二分にあります。
環境トップを使っていると未知のデッキが相手でもカードパワーで踏み越えていけますが、逆張り側は自分からカードパワーの低いデッキを使っているので環境トップに比べて相手のデッキに近い立ち位置で戦うことになります。
ティアラメンツメタでビーステッドを積みまくったデッキを使い、光闇が一切入っていないデッキや光闇が墓地へ行かないPデッキなんかと当たってしまうと、ビーステッドを積んだ数だけ腐り札を背負うことになります。その場合、メインデッキだと寧ろ近い立ち位置というより低い立ち位置になるかもしれません。
環境トップならそう言った腐り札を多少引いたところでカードパワーの暴力で乗り切ることができます。
対して逆張り側は環境トップに対する相性でカバーしていたカードパワーで、腐り札を背負った状態で戦うため厳しい戦いを強いられます。
言い方は悪くなりますが「環境トップが舐めてかかっても勝てるような相手に苦戦している逆張りデッキの図」が出来上がるわけです。
1回戦で負けるとほとんどの場合環境トップじゃないデッキと当たる確率の方が高くなりますから余計に厳しくなります。
決勝トナメに上がっても多少は逆張りデッキがいますので勝ち上がれば相性差を押し付けられると言うわけでもありません。
一言に逆張りと言ってもある程度のパワーを持っていないと環境トップ以外のデッキに勝ちづらくなりますし、環境トップ以外にも通用する的確なサイドプランを練る必要があります。
その点で言えば日本選手権のEM龍剣士は、
・公式が用意した大舞台であるため環境トップのシェアが非常に多くなると予想できた
・2強と言われた環境トップに対するメタカード(ビーステッドなど)をうまく掻い潜れた
・未知のデッキを上から踏み潰せる展開力があった
・展開ルートから止め方までほとんどの人が知らなかった
などの点から環境の意表を上手くついたデッキだったと思ってます。
少なくとも私はメインにさくらを入れて行った1回戦でドクロバッドジョーカー召喚から入られて頭が真っ白になりました。
汎用カードに苦しめられる
みなさんは環境トップに対する逆張りデッキを考える際にテーマ同士の相性だけで考えてはいないでしょうか。
実際お互いのデッキの大半を占めるカード群の相性なので重要であることには変わりありません。
しかし、デッキの核となるテーマカード以外は手札誘発や指名者などの汎用カードであり、大半の人がテーマ関係なくそれらの汎用カードを採用しているため、1日を通しての遭遇率は基本的に汎用カードの方が高くなります。
そう言ったカードに弱いとなるとどのデッキに当たっても飛んでくる可能性がありますし、不利相性と当たった場合にそのような汎用カードまで飛んできたら余計勝率は低くなります。
例として「ティアラには強く出られるけど、どのデッキでもメインからの採用率の高いフェンリルや、サイドのサンボル拮抗などの広範囲除去の類がキツイ」みたいな感じだと普通にキツそうに見えますよね。
サイドカードは人によってどこに重きを置いているのかで変わりますし、そもそも苦手としているサイドカードを採用していない可能性だってあるのでまだマシかもしれませんが、メインデッキに流行っているカードがキツイとなると逆張りとしては不適切だと思われます。
今の環境で言うところの泡影やビーステッドに弱いテーマなんかは例えティアラというテーマに強くても勝ち続けるのは難しいでしょう。ていうか泡影ビーステッドメインから入れても踏み潰して結果残しまくるティアラって何
相性はよくてもカードパワーは負けている
これ割と大前提なんですけど環境トップというのは今使えるカードプールの中で最もカードパワーが高いから環境トップなんです。
「メタる側を使っても結局カードパワーで押し切られる」とはよく聞きますよね。
環境トップというのは満遍なく通った時のリターンが高いカードばかりで構成されていて、(環境トップに比べて)カードパワーが低いカードで構成されている逆張りデッキでは少しの隙を突かれただけで負けかねません。
永続罠で相手の動きを封じたのまではよかったが、カードパワーの低さ故にライフを取りきれなかったり、完璧なロック盤面を作れなかった故にフェンリルなどの解決札を通す隙を与えてしまい、永続罠を剥がされた後にフル展開されてしまうというのは逆張り側が負ける時によく見る光景です。
こうなったら永続罠で抑えられてた環境デッキが、100のパワーを持って70ほどのパワーしかない逆張りデッキに畳み掛けるので勝てるはずがありません。
永続罠で使えなくなって手札に溜まってたカードが全て放出されるので盤面は殆ど残らない上に蓋までされてしまいます。
逆張りを使ってる側の人は環境トップにも付け入る隙はあると思ってるかもしれませんが、環境トップからしてもそれは変わりません。
相手を追い込んでいる様に見えても負け筋が常に見えているのが逆張りデッキなのです。
初見殺しという言葉はよく使われますが、知らないテーマでも落ち着いて考えたらペルレイノより強いカードなんてほとんどないんですよ。ペルレイノ無理すぎて負けたこと沢山ありませんか?そういうことです。
カードパワーに起因するプレイングの難しさ
これは自分自身が逆張りを使う上でヒシヒシと感じるものですが基本的にはルール介入型カード以外はカードパワーで負けてますので適当にカードを切っていっては勝てません。
ティアラメンツに有効なカードとして増殖するGがありますが適当に投げたところで勝てません。
キトカロスが出てくるタイミングで投げたところでサリークをサーチされ、サリークと5枚落としからの展開に耐えきれないなんてことはザラなので自分の手札と相談し、最も効率的な投げ方を考えなければなりません。
強制脱出装置のような使い切りのカードの場合は相手の手数を最も削ぐ使い方をする必要がありますし、時には読み合いをする必要があります。
例えば相手の盤面にシェイレーンとレイノハートが並んだ場合、ランク4やリンク2が出てくるのが考えられます。このタイミングでシェイレーンかレイノハートに強制脱出装置を撃つのはアド損であるため好ましくありませんが、ヴェルズビュートの可能性を考えるとそうも言っていられません。
このような状況の場合、ビュート警戒で次のターンの手数になるリスクを残しつつアド損をしてまで強制脱出装置を撃つのか、ビュートが入っていないもしくはビュートを出すとリソースが伸びなくて勝てないから出さないという様な相手の構築や考えを読んで待つのかという様な読み合いが発生します。
カードパワーが高いデッキだと2体並ぼうが容易に除去できたり、そもそも2体並ばせなかったりできますがこれは強制脱出装置を採用する逆張りデッキ特有の不利な読み合いなのです。
また、逆張り側が永続系のメタカードを置いたからといって簡単に勝てるわけではありません。
基本的に環境トップというのは永続系のメタカードに対してメインから回答を持っていることが多いです。
ティアラだけ見てもフェンリルとそれをサーチするパライゾス、ペルレイノ、カレイドハート、アーゼウスなど形態や出しやすさは違えど突破手段となるカードはかなり多いです。
これらのケアができなくなる状況になると負けに繋がります。
なので永続系のメタカードを張ったところで安心せず、常に突破手段をケアしつつ早急に決着をつけるプレイングが要求されるわけです。
上記のように相性がいいデッキ・カードを使ったからと言って楽して勝てるわけではありません。
永続系のメタカードを引けたからと言って油断できませんし、使い切りのカードであれば適切に切る必要があります。
また、サイド後になるとこれらの対策カードが入ってくることも見逃せません。
カードパワーの差故の適切なカードの切り方や詰め、メタカード対策の対策など、そう言ったところも磨いていかないと勝ち続けるのは困難なのです。
入賞リストの罠
これどのデッキを参考にするにあたってもそうなんですけど、入賞リストそのままで大会出ると上手く勝てない時ってありますよね。
それは別に構築が悪いとかプレイングが上手くないと勝てないとか運だけとかいう訳じゃなくて、単純に戦ってる環境が違うからです。
入賞レシピというのはその人が自分の参加する大会の環境で勝てるように構築(メタ張り)したもので、それが自分の周りの環境と全く違うなら構築を完コピしたところで全く的外れなメタを張ったものを使うことになります。
環境トップを使ってるのならそれでもテーマのパワーでゴリ押すことができますが逆張りを使っているとこういった構築のズレが大きく響きます。
今の環境で例えるならティアラを使っていれば多少メタ張りをミスったところでティアラの動きをしていれば大抵の試合を勝つことができますが、逆張りデッキを使っている場合、メタ張りをミスると途端に勝てなくなります。
極端な話をすればティアラが全くおらずクシャトリラばっかりみたいな環境で大会に出るのならティアラなんてメタを張る必要はないですし、逆にクシャを重く見る必要があります。
入賞リストが少ない逆張りを使う時もそうで、数少ない入賞リストを参考にするのはいいのですが、特に逆張りデッキは周りの環境の影響がモロに構築に出るのでそのままコピーするというわけにはいきません。
また、環境トップのリストを見る時もそうです。入賞リストのレシピではAというカードが流行っていてもあなたの地域ではBというカードが流行っているならば、Bに対する策を講じる必要があります。
それぞれ想定している対面もメタり方も違うのであれば、Aというカードを想定した対策をしてしまうと、Bというカードにバラバラにされるかもしれません。
このように環境トップを研究した上で、数あるレシピを過信しすぎず、自分の周りに合わせた構築を作る必要があるのです。
強い人は強いデッキを使っている
こういうこと言うと「お前自分が思ってるより雑魚だぞって言いたいのか?」的な事言われたりするんですけどそうじゃなくてもっと単純な話です。
掛け算的な話になるんですけど、仮に環境トップのデッキパワーを100として、それを使う人が100%完璧なプレイングをできるなら%を普通の数字で表して
100×1=100
で表します。100%の力を出せなくても90〜75あたりの数字で表せるでしょう。
では、逆張りの場合はどうでしょうか。
元々のデッキパワーが80とか70とかしかないので100%のプレイングが出来たとしても80とか70にしかなりません。
もちろんカードゲームなのでここに運や相性が絡んで数字が増減しますが、それは環境トップも逆張りも一緒な上に振れ幅が不明瞭なので省略します(基本的には逆張りの方が振れ幅が大きいです)
要は「100%のプレイングが出来る人」が「デッキパワーが1番高いデッキ」を使った方が勝ちやすいと言う事です。
強い人はそれをわかってるから環境トップを使っていますし、練習・調整しています。
そういう人たちが最大母数占めているのが大会なのでそりゃ勝ちにくいのは当然というわけです。
最後に
こんな記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
様々な意見があるかと思いますが逆張りを握るかどうかは個人の自由です。ただ、それなりの覚悟や考えを持たないといけないという事を理解してもらえたらなと思います。
あと逆張りを使う上で最も忘れてはならないことは調整してくれる人への感謝です。
逆張り側は環境トップとひたすら調整したいと思ってますが、環境トップ側は逆張りと調整し続けるよりもミラーや環境2番手3番手と調整したいはずですから。
この感謝の気持ちは絶対忘れないようにしましょう。
いかんせん遅筆なもので想定以上の期間をかけて書いた割にはこの文字数…
本日はここまで