茜屋翠璃

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ポートフォリオ| 茜屋翠璃

はじめまして。 劇作家・シナリオライターの茜屋翠璃です。 このたびは当ポートフォリオをご覧いただき、誠にありがとうございます。 良いご縁となりますよう、誠心誠意対応させていただきますので、ご興味を持たれた方はぜひ一度ご連絡くださいませ。 得意ジャンル 得意ジャンルは脚本、ゲームシナリオ、記事、小説などです。指定されたレギュレーション(字数, 尺, 規模感, 要素, 文体など)に沿った作品づくりを得手としています。 ■脚本 別名義(元谷瑞香)にてミュージカルの脚本を執筆

    • 短編小説『風邪っぴきシレーヌ』前編

      ※もだもだ青春幼馴染※うちよそ小説です  七月某日、試験明け。突き抜けるような青空の校庭に蝉の合唱が降り注ぐ。夏休みを控えた校舎から、吹奏楽部のトランペットが漏れ聞こえてくる傍ら、金曜日の放課後にあるまじき憂鬱を背負った俺は、特大のデッキブラシを手にプールサイドの掃除に励んでいた。 「っし、こんなもんか……?」  力任せに擦った甲斐あってか、ビニルの床はなかなかにツルツルとよく滑る。この輝きには後光を浴びた坊さんのハゲとて敵うまい。会心の出来に満足した俺はひと息ついて腰に手

      • 夢日記『綺麗な鼻』2020/9/27

        私は高校生だった。なんでもない普通の制服に身を包み、女の子ばかりの空間で立ち尽くしていた。振り返ると後輩が笑った。 可愛い子であった。形の良い鼻が右斜め上からざっくりと削がれて、辛うじて空いた二つの穴に今もまだ血が滲んでいた。 「居た」 私は微笑んだ。 「行こうか」 彼女も微笑んだ。穏やかな顔を縁取る髪が、ゆっくりと頷いた拍子に彼女の肩を滑って、さらりと揺れた。 二人で連れ立って歩いた。手は繋がなかった。 私たちの横を沢山の同じ服を着た女の子が過ぎていった。 脇を歩く彼女

        • 夢日記『蜘蛛男の妹』2024/3/10

          奇妙なホールにいる夢を見た。高天井で、四方の全ての壁に階段型の舞台がある。ワイヤーアクション可、舞台背面にそそり立つ2階分ほどもあろうガラス張りの壁の後ろには作り込まれたディスプレイがある。そのためか、舞台壁面の装飾はそれなりに簡素である。 客席はなくあたりは立ち見の客ばかり。蜘蛛男が天井近くまでするると持ち上げられていくのを見ながら、あちこちで感嘆の声が上がるのを聞く。 私も客だったはずなのに、ふとこの後のシーンに出なくてはならないことに気づき、舞台裏に入った。開きっぱ

          夢日記『暗がりの男』2023/3/5

          廊下の端に男がいる。暗がりに沈むまだらのタイルの床の果てに、その黒い影法師が伸びている。 男は影が溶けて根を生やしたような風体で、そこに立っている。温度のない足音。等間隔で天井の梁にこだまする。 男が近づいてくる。一歩、また一歩。異質なまでに揺らめく首。木偶のように動かぬ脚をお前は呪う。湿った呼気がお前の唇に触れる。ぬるい酩酊。 視界が覆われ、そしてようやく、お前は黒々とした山高帽の下を知る。 そこには何も無かった。物質と呼べるようなものは、何も。だが、虚はお前を眼差すと、

          夢日記『暗がりの男』2023/3/5

          怖い話『揺れている』

           暗闇にのっぽの男が揺れている。 そう気づいたのはある日の夢の中だった。 俺の部屋には、むかし姉貴が使ってた古い姿見がある。その中に、黒いコートを着たのっぽの男が揺れているのだ。冗談だと思うだろ? だが生憎、冗談なんかじゃあない。冗談みたいに気の抜けたコート、目深に被った山高帽の萎びた男が揺れている。それは気持ちが悪いくらい自明のことだったから、夢を見ているその時は全く奇妙だと思いはしなかった。 「でもやっぱ異様なんだよな、こうして思い返してみると」 俺はずずっとストロー

          怖い話『揺れている』