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カシミヤと私

かつて、私はヤフオクで細々とカシミアを入手していた。
前世紀のことだった。

一生ものという言葉に憧れて将来のために蓄えていたのだった。

貧乏な私が将来を見据えて買い集めた高級コート。
宝をゲットすると私はいそいそと実家に保管した。
これらの宝は数年後、カビと虫食いだらけになって発見されることになる。
母には適度に換気をして防虫剤を交換しておくよう頼んでいたが、たぶん何もしなかったのだろう。
私の怒りは母と縁を切る寸前まで行った。気持ち的にはあの時に絶縁している。

事態を把握して、諦めて、実際に処分するまで数年かかった。
10枚以上の高級コート。どれもほとんど着ていない。買って保管して捨てただけ。バカみたいであった。
時代的に、肩パットが入ったオーバーサイズの古いタイプばかりだったのは不幸中の幸いだった。

こうして格安で手に入れたカシミアを全て失った私。
以後はサイズの合うオーソドックスなアンゴラを狙ってきた。

5年ほど前のある日、行きつけのリサイクルショップで肌触りのいいハーフコートを発見。
200円だという。
少し光沢があるのでもしかして、とタグを見てみたらカシミア。

私はコートを常に手触りで選んでおり、柔らかくて質のいいものの中からサイズが合って手頃なものを購入してきた。そこにカシミアが入って来た。

あの時、私のリサイクルライフは新たなステージに入った。

ユニクロなどで手頃なカシミアが流通し始めて十年以上になる。
ようやくリセール市場に流れてきた感がある。

カシミア至上主義で見ると今まで持っていたアウターは重く、手放す動機になる。
持ち物のレベルが上がり、量も減る。
いいことばかり。


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