不揃いな私の歯たち
何気ない日常を笑顔で過ごせること、美味しいご飯を口いっぱいに頬張って、幸福感に包まれること。
なんてことない当たり前の幸せは、あることを怠ってしまうと、ある日突然崩れてしまうのである
それは、「お口の健康維持」だ。
虫歯や歯周病などお口や歯に関する症状はたくさんある。
それを治してくれるのが歯医者さんなのだが、どうしても歯医者さんというと、痛い・怖いのイメージが払拭できず、なかなか足が向かないというのも確か。
かくいう私も、「少し奥歯が痛いな…もしかして虫歯かな…?」と思っても歯医者さんでの虫歯治療(キュイーンな音のドリル)が怖くて「まぁ大丈夫だろう」と歯の違和感に見て見ぬふりをしていたこともある。
本来、歯医者さんとは、虫歯になる前に行く所と聞いたことがある。
つまり歯は定期的なメンテナンスがとても重要なのだ。
クリーニングや歯石取りなどのほか、このメンテナンスでお口の病気の早期発見・治療に繋がったりする、とても大切なケア。
このnoteをこんなに知ったかぶりで書いている私だが、実は定期的な歯のメンテナンスを生まれてから1度も受けたことがないのである。
今回はそんな私が体験した歯の絶望体験をここに書き綴りたいと思います。
これを読んだ皆さんの口腔事情が平穏に包まれることを祈って。
まずは私のお口事情からお話しします。
今まで虫歯もほとんどなかった私ですが、歯並びが壊滅的に悪いです。
どの歯医者さんへ行っても、初回の診察で必ず矯正をオススメされます。
特に強烈なのは下の歯で、中央の辺りに歯がひしめき合っています。
ひどい所では歯が2本重なり合っているので、そこに必ず食べ物が詰まります。
また、親知らずにもよく食べ物が引っ掛かるので舌の先でホジボジして何とか取ろうと頑張ります。
加えて上の歯には八重歯があります。八重歯は可愛いとか、チャームポイントだ、などとよく言われますが、八重歯の下の歯を磨くのに大変苦労します。
……と、こんな感じで、私のお口事情は生まれ育った状態が最悪なものです。
このような複雑な歯並びでは日常的に「人一倍丁寧な歯磨き」が求められます。
ブラシの角度を変えながら、専用ブラシやデンタルフロスなどを使ってお口の中を綺麗に保たなければならないのです。
だが、
私はとてもズボラで雑で面倒くさがりな性格。
お風呂上がりに髪は乾かさないし、ストッキングも裏返して脱いでしまう。
自分で言うのもなんだが、そんな私が1日3回の歯磨きを丁寧にできるとは到底思えないし、実際していない。
こうして約30年の間、歯磨きを雑にし、歯医者さんを嫌って生きてきた。そんな自分の歯を劣悪な環境においていた私。
ある日突然、奥歯の痛みに襲われたのである。
それは今年の初夏のこと。
右の奥歯が非常に痛む。ここにはよく食べ物のカスが挟まる(特に鶏肉やもやし)ので、それを取るために歯ブラシや指で強く刺激を与えていた自覚があった。それで歯茎が傷付いて、腫れてしまったのだろう。そんな風に思っていた。
実際、同じ所が腫れることは過去にもよくあったが、数日で腫れも痛みも引くので気にも留めていなかった。
でも、今回は違った。
日に日に痛みは強くなり、最後には発熱して体調を崩してしまった。奥歯は痛いし、熱のせいで体も怠い。これはおかしいと思って歯医者さんに診察の予約を取ろうと仕事のお昼休みに電話をかけた。
仕事の帰りに寄れればいいなと口コミの評価が良い歯医者さんに電話をかけた。
その時には奥歯が痛すぎて、喋るのも大変だった。
なんとか電話口の受付のお姉さんに現状を伝えた。これで予約取れたから大丈夫…!と思っていたのだが、お姉さんから返ってきた言葉は意外すぎるものだった。
「それでは、予約は1ヶ月先の…⚪︎⚪︎日頃になりますね」
っい…!!???!?!?
1ヶ月後…!!!???!?
いやいやいや今!今痛いの!!
1ヶ月後なんてもう治っちゃってるよ!!!と心の中で叫んだ。
すごく痛くて恐らくその腫れのせいで熱が出ていて、緊急に診察して欲しいとお願いしたつもりだったのだが、それでも予約は1ヶ月先と言うお姉さん。正直「何言ってんの?」と思った。
思わず「は?」と言いそうになったのを抑えて、今一度、痛くて辛いので緊急で申し訳ないが診察をして欲しいとお願いした。そこで返ってきた言葉は私の心をへし折る一言だった。
「緊急も何も、本日は予約を入れる余地自体ありませんので」
と、丁重にお断りをされてしまった。
予約枠がないので、緊急だろうがなんだろうが予約は取らせてもらえないらしい。
「そ、そうですか…」と力ない一言が出た。
こんなに痛い、辛いと言っても近日中の予約を取ることもできないんだ…と、少し途方に暮れた。でも、このままでは何も解決しない。間髪入れずに2件目の歯医者さんへ電話をかける。
だが残念なことに、私はこの後電話をかけた3件全ての歯医者さんから近日中の診察を断られた。
歯医者さんの予約ってこんなに取れないんだ…と急に絶望感と発熱による倦怠感が混ざり合って襲ってきて、心が挫けそうになった。その頃にはもう座って仕事をするのも辛くて、早く横になりたくて、奥歯も変わらず痛くて、死にそうになりながら仕事をしていた。
すると、私を心配した母が連絡をくれて、どこの歯医者さんでも予約が取れなかったことを話した。すると母の行きつけの歯医者さんに連絡を取ってくれるとのことだったので、お願いした。しばらくすると「予約の患者の合間に診察するので、待ち時間が長くなってもいいなら」との条件でOKがもらえたと連絡があった。
すぐに上司に相談して仕事を抜けさせてもらい、歯医者さんに急いだ。到着してから1時間くらい待って、私の名前が呼ばれた。案内された診察室に入ると、そこには初老の男性の先生。診察台に寝転んで、口を開ける。
「あー、親知らずが腫れてるねぇ」
先生は私の口を覗くなりそう言った。
続けて、
「歯並びすごいねー」
正直この言葉は好きじゃない。
昔から歯並びが悪いのは自分が1番わかってる。
笑う時も歯を出したくないので、口元を手で隠したり、歯を見せないように(すごく良く言えば)大和撫子風に笑っていた。
それに、好きでこの歯並びになった訳じゃない。
私だって綺麗な歯並びで、何も気にせず笑ったり、人前で大きな口を開けてお喋りしたり、当たり前にできそうなことが当たり前にしたいんだよ。と、心の中でコンプレックスを爆発させた。そんな私を尻目に、先生は続ける。
「親知らず、相当クセ強く生えてるね」
親知らずの存在なんて意識したことも、認識したこともなかった。
先生曰く、親知らず周辺の歯茎が腫れて、そのせいで発熱したり、時には喉が痛くなったりするらしい。この日は歯茎に抗生剤を打ってもらい、飲み薬を処方してもらって診察は終わった。
終わったのだが、この診察で私の口腔問題が浮き彫りになった。
問題点は2つ。
1つは今回腫れた親知らずを含めた歯並び。
レントゲンを撮ってみると、下の左右の親知らずは通常の歯にT字になるように真横になって生えていた。しかも歯茎に埋まっているので、普通の歯医者さんでは抜歯しようと思ってもできない。でもこの親知らずを抜かないと今回のような腫れを繰り返してしまうとのことだった。
もう1つは虫歯。
現状だけでも3カ所に初期虫歯や虫歯があるとのこと。
これは地味にショックだった。今まで虫歯にほとんどなったことがなかったので、一気に3本も虫歯があった事実が信じられなかった。
まぁ、この虫歯も元を辿れば歯並びが悪くて綺麗に磨けていないことが原因だとは思う。
親知らずは早く抜いた方が良いと先生から強くオススメされた。
少しでも若いうちに抜いておいた方が傷の治りも早いので、との事だった。
だが、先ほど書いたように真横に生えている上に歯茎に埋まっているため、普通の歯医者さんでは抜歯できないそう。そこで、大きな大学病院へ紹介状を書いてもらえることになった。
その後、家族にこの事を話すと、どうやら知人で親知らずを全身麻酔で抜いた方がいると言う話を聞いた。全身麻酔でって…もう普通の手術やん…絶対めちゃくちゃ痛いだろうな…と憂鬱な気分になった。
その憂鬱と不安を払拭するべく、私はネット上にあるたくさんの「親知らず抜歯体験レポ」を読み漁った。
やはり感じる痛みや治癒期間は人によって様々で、その中でも多くの体験談に共通して書かれていたのは、「術後の痛み」だった。そりゃあ歯茎を切って歯を抜くので傷口は痛いだろう、とは想像できるが、「歯磨きできるのか?」とか「ご飯食べられるのか?」などの不安と「口の中を切る」と言う行為への恐怖が体験レポートを読めば読むほど膨らんでいってしまった。
次に歯医者さんに行った時、私は先生に「親知らずって…やっぱり抜かなきゃダメですか…?」と正直に聞いてみた。
「この前も言ったけど、これはやっぱり抜いた方がいいね。このままにしておくと、腫れたり、真横に埋まって生えていて磨きにくいから虫歯や歯周病になったり、良い事ないよ」
良い事ない…そこに生えているだけで、「悪」そんな感じ?
私も30歳のいい大人。こんなところで「痛いし、怖いから嫌」と逃げていても仕方がない。頭ではわかっているけど、やっぱりまだ怖かった。
「まぁ、抜歯したらしばらく治療自体できなくなっちゃうから、先に虫歯の治療しようか!」
先生の治療プランにより、抜歯手術は少し先延ばしになった。
虫歯も全部で3本あるので、1本ずつ治療していくらしい。正直、手術が先延ばしになったことで少し安心した自分がいた。先延ばしにしたところで何の解決にもならないのだが、とりあえず今は心の準備ができることに感謝する。
今回の私のように、定期的に歯医者さんへ行っていれば守れたであろう歯の健康。
定期検診やメンテナンスをしていれば、虫歯にもならなかったかもしれないし、親知らずだってもっと若いうちに抜けたかもしれない。
後回しにすればする程、大変な思いをするのは他でもない、自分自身なのだ。
この後、私は2ヶ月をかけて3本の虫歯治療を終えた。
そして、恐怖と不安を抱えたまま、親知らず抜歯手術に挑むことになる。
今は無事に抜歯手術を終え、このnoteを書いている。
正直に言うと、自分が思っていたよりかなり大変な思いをしたのだが、その体験談はまた別の機会に。
最後に、これを読んだ皆さんの口腔事情が平穏に包まれることを祈って。
定期的に歯医者さんに行きましょう!