こぐま
こんな天気のせいだろうか。
それとも、除湿で冷やした静かな部屋が気怠いのだろうか。
敢えて少し音が大きめのラジオの流れるこの空間が静かすぎるせいなのだろうか。
先日、子の健診へ赴いた。
元が出不精なせいもあるが、子が生まれてからめっきり電車にも車にも乗らず、もっぱらこの足で行ける範囲でしか移動はしてこなかった。たった一駅電車に乗るだけでも少し緊張した。
会場には車で来ている人が結構多かった。場所が選べるものの両極端な場所だったので、立地条件が悪い人も多いのだろう。もうしばらく運転をしていないが、私は果たして運転できるだろうか。車に乗っている人を見かけるとそんなコンプレックスが生まれていることに最近気づいた。
にぎわう街に住んでいる友人が言っていたことを思い出す。「健診会場って出たところにいろんな勧誘がいるから全部振り切ってこい、どれが安全かわからないからな」と。あいにくこの片田舎にはそういった類は一切いなかった。ありがたいことである。空を見上げれば少年が野球ボールで弧を描く。
お母さんがたの観察もしたかったのだが、案外自分にその余裕がなかった。まあいろんな女性がいるなと、そして男性の姿もあった。綺麗な人が多いように思えてしまったりした。子供同士は初めて視線の高さがあう人間同士、うっかり見つめあっていたりして面白かった。そんな様子を挟んで会釈したりとかのコンタクトをとる場面があるかと思ったのだがそういったこともなかった。私も特に人に声をかけることはなかったし、ここで変にコミュニケーションを取らせようとするのが市の催しの面倒なところだと思っていたからいいっちゃあいい。が、子を介したときに「あ、すみません」くらいは普通にあってもよいのではと思ったりする。歳なのかな。綺麗なお母さんたちについては、特にイメージを払拭することは良くも悪くもかなわずだった。
似たような月齢の子たちが集まっている。
という状況は初めてだった。我が子は、周囲と比べて一段と色が白かった。赤ちゃんでも色黒とか色白とか既にあるのかもしれないが、私がベビーカーを持っていないので日に焼ける機会が少ないのもあるだろう。そして他の子たちは「子犬」「子リス」「子ウサギ」といった小さく可愛い感じにみえる。おそらくハイハイをしたりくるくる動き回るさまが小動物っぽく感じられるのだ。
なぜだろうか、我が子だけなんとなく「小熊」感がある。
(近距離にいるからそう思うだけかもしれない)
成長曲線の色がついている範囲内のしかも下の方で、身長なんてギリギリで推移しているはずだ。我が子はまだハイハイはできないので静かにごろごろしている。ハイハイはできる子もできない子もいるくらいの月齢ではあるが、体が重いのかも、と周囲を見ながらふとよぎった。いやいやそれデブと同じ発想だろと同居人は言っていたが、その認識で間違ってなさそうである。
我が子の最大のいいところ、眠っている時間が長いことはいいことなのだろうが、周りと比較してしまうと「のそのそ」している感じは否めない。のそのそ自体はいいのだが。
「授乳時間がしっかりあいているから水分補給をしてみましょう」と教えてもらったり、離乳食の硬さだったり、ステップアップ事項を色々聞くことができた。帰ってきたその日は色々気づけなかったことを教えてもらえてよかったとホッとしたが、一日たった今、冷静になったのかそれとも霧がかかったのか、心がひりひりと、冷たいものも温かいものも痛い。
起きている時間が短いのは私があまりかまっていないせいなのか。
月齢にあわせて進めなければいけないことが進んでいないのではないか。
もっとこう「今これをする」という明確な指示はないのか、私の匙加減じゃ何か間違えたり遅れたりしそうで。
SNSで同じ月齢の子の成長記録を見ていても当てはまらないところばかりに目が奪われて心がささくれる。
そういうテンプレートのような悩み方は自分はしないと勝手に思っていた。周りと比べるものではないし、きっちりすることもない、ゆるくマイペースでやるんだと思っていた。のだが、元が不真面目なせいで真面目にやらなければいけないことをどこまでまじめにやったらいいかわからない。今更自分の短所の回収を思わぬ形で行っている気がする。頭が悪いくせに感覚的な部分も磨かれていたわけではない自分の生きざまが悪いのである。
気を付けてきていたのは寝れるときはなるべくたくさん寝かせてあげようとは思っていた。大人でも子供でも寝不足は色々な不調を招くし、眠いのは辛いという主観的な感覚だ。それくらいである。が、何事もメリットデメリットはある。まあメリットは感じられているからいいといえばいいのかもしれないけれど。
「慣れたら食べるようになったよ」
前述の友人に「ヨーグルトを食べない」とぼやいた時に話してくれた。はじめは果物で甘くしていたが今は無糖で何事もないかのように食べるらしい。そうやって味覚も少しずつ発達していったのだろう。
今日の離乳食はそれを聞いて、しょっぱいものも食べなかったので「慣れれば」と思いベビーフードを使って豆乳味噌汁に色々入れた。味見したら「あ、これは食べなくても仕方ないな、あー失敗」という出来だったので「おいしくないけどごめん」と正直に伝えて口に運ぶと、意外と全部食べた。私には美味しいとは感じない(むしろまずい)のに初めてしょっぱいものをちゃんと食べられた。
私がやれること、やったこと、やっていないことを一つずつ解消していくのは、子にいつか、私にもいつか、負担になってしまうかもしれないと思ったりした。子の成長しようとする力を信頼して、そこに私が挑戦をしかけていければいいな、怯えながらでも、うまくいかなくてもいいけどうまくいきますようにと、願う。
まずは昼寝の時間に負担がないように図書館へ行けたらいいな、と思っている。