美味しすぎない「アジもつセット定食」
珍しく県の南の方で仕事があったタイミングで、例の拗ねた食事の欲がむくむくと湧いてくる。現場を早々に立ち、平日の国道6号をズルズルと相馬の方へ向かって走る。
目の前に現れた「ドライブイン サザエ」は、その寂れた外観とは裏腹に砂利駐車場が程々に埋まっている。後ろに付けていたハイエースもココが目当てだったようだ。作業員らしい年季の入った先輩方はもちろん、スーツに身を固めた若きホワイトカラーもいる。ちなみに今日の私はベージュ色のスタンドカラーの下に黒色のタートルネックを仕込んでいる。まるで売れない画家のような風体は、この景色には明らかにノイズだ。
無駄にグリーンが多い店内。無駄に広く、田舎の友人の実家のような広い小上がり。無駄に懐かしいテクスチャのテーブル。すべての要素が「美味すぎない」に相応しい。
メニューを開けば、Aセット、Bセット、Cセット定食の並びに続く「アジもつセット定食」。アジフライともつ煮のセットなんて、高架下のうらぶれた大衆酒場の組み合わせじゃないか。写真にあるイカ焼きの上に貼られた「さんま」の文字に後ろ髪引かれながらも、「アジもつをひとつ」と常連客のように注文する。
運ばれてきたのはアジフライが2尾と、いかにも濃厚そうなもつ煮。味噌汁に温泉卵、おひたし、漬物、謎の麺となかなかのボリュームだ。
こんな店と言ったら失礼かもしれないが、こんな店のアジフライは醤油だったりソースだったりをビダビダとかけて食べるのが正しい食べ方だろう。味噌味のもつ煮は見た目どおりに味が濃い。頼んですらいないのだが、焼酎のお湯割りあたりがそろそろ出てくるんじゃないだろうか、と期待してしまう。車で来ているのでお断りせざるを得ないのが悲しい。
味の濃いもつをご飯にかけ、さらに温泉卵を落とし入れる。美味すぎる!なんてことは当然ないのだが、午後の仕事へのテンションは間違いなく高まった。