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美味しすぎない「ロースかつ丼」

カレンダー通りに休みづらい職業なもので、今週末の三連休は久しぶりだ。このロングバケーションを有益に過ごすためにも今日は肉を食おう。そう言えばこの通り沿いに「とんかつ」の文字を見た記憶がある。追い抜いてしまわないようにとクルマのアクセルを緩める。

訪れたのは信ちゃんという店だ。信(しん)ちゃんと読むのだろうか、それとも信(のぶ)ちゃんと読むのだろうか。女性の店員さんが多いから、この中の誰かが信(のぶ)ちゃんなのだろう。帳場に潜む隠れミッキーにも「信ちゃん」の名前が踊る。ひと際働くあのおばちゃんが、きっと信(のぶ)ちゃんに違いない。

メニューの品数は意外と慎ましい。品なく食べたい気分なのでロースかつ丼(770円)を注文する。と、向かいの小上がりに僧侶を見かける。とんかつ屋に法衣を着てランチとは、なかなかの生臭坊主じゃないか。

すると息子であろう小坊主まで現れた。年の頃は八つほどだろう。アニメではこいつに大人たちがキリキリと舞い、そして顎の割れた男は媚びへつらう訳だ。目の前にするととんでもない世界観じゃないか。小さな法衣を着こなし、笑顔で飯をかき込み、周囲にチヤホヤされる小僧。時を超えて思う。かの将軍様の無念や如何ほどだっただろうかと。

配膳されたかつ丼は、玉子の具合も身の厚さも上上だ。やや色褪せた七味唐辛子をかけて下品に頬張る。脂身の調子も好みだ。ひと切れ食べ、半分火が通った玉子をめくるとカツが大胆に間引かれていた。うん、なるほどと苦笑いする。

例の座敷に徳の高そうな住職が登場した。三世代の坊主がそろい踏みだ。オーダーは玉子丼。そう、彼らは決して生臭ではなかったのだ。南無と適当に唱え片方だけ目を閉じ、汁が滲みた米を食べる。サービスのコーヒーでひと息つく。

御大の玉子丼が配膳された。持ってきたのは満面の笑みの信(しん)ちゃんだった。


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lada
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