美味しすぎない「天ぷらそば」
会議を終え、次の打ち合わせまでに時間がない。ふと目に止まった「ドライブイン」の名前に惹かれて車を停める。「うまい・やすい・はやい」のオールドスタイルを掲げるドライブイン川原だ。
トラックでの輸送が国道型から高速道路型へ移行。また主要道路が多車線化され、バイパス化によって生まれた中央分離帯が店への流入を阻む。そんなこんなで旧来のドライブインが激減する中、ここは昼時の車の流れが収まらない。まるでタイムスリップしたかのような賑わいだ。
オーダーは天ぷらそば(410円)とチキンミニカレー(190円)。合わせても600円という昭和価格。そして圧倒的ですらある、どん兵衛リスペクトスタイル。出汁がカエシが、香りが喉ごしがと語るのはまったくもって無粋。こんなもん、食って感じるのみである。さらにスパイス強めの粉とろみ系カレーもミニサイズが美味さのピーク。一杯は食いたくない程度に美味すぎない。隣りのサラリーマンは大盛りのカレーを頼んでいる(それは悪手だと思う)。
驚くべきが客層だ。長距離を運転してきたであろう粗野なおっちゃんはもちろん、寡黙そうなサラリーマンに明らかに常連な近所のおばさん、あなたは男子高校生?どうやって辿り着いたのか二人組のOLまでいる。みんなが美味すぎないそばを啜り、ご満悦な表情だ。店内に「今日のそば粉は幌加内産のキタワセを使用しています」なんて書いていないのに。
姿を消しつつある古き良きドライブインに見えた、色めき立つ人間模様。昭和、平成、令和と時間は無情に流れても、日本人の本質は変わらないのだ。
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