S(top) & S(tart)
「それ」は
もののすべての時を止めるような
それでいて
宇宙の果てまで優しく貫くような
そんな音だった
慌てて
周りを見渡す
あれっ、
聞こえたのは、、、俺だけ・・・?
そこには
これまでと変わらぬ
人々の日常
カフェで
珈琲を片手に談笑にふける男女
横断歩道で
スマホ片手に器用にすれ違いながら歩く学生たち
ふと
感じる視線
その先にいるのは
猫
黒と白
微動だにせず
じっとこっちを見ている
その瞳は
美しいエメラルド
すべてを見透かすかのよう
そんな翠の女王
思わず
息を呑む
その時
優しい風が
頬を凪いでいく
ふと
「豪」
また
あの音が鳴った
心の渦が
湧き出してくる
頭の絡みが
解けていく
「合」
また
あの音が鳴った
解けて
紡がれ
繋がっていく
「Go」
あなたの中を駆け抜けていく何かが
吠える
涙が
溢れた
・・・懐かしい
その声は
ずいぶんと前から
そこにあった
そうだよな
朗らかな笑い声が
耳を撫でて
ずいぶんと
走っていなかった
脚を伸ばして
ずいぶんと
直していなかった
灰色の靴の紐を解く
目を閉じて
自分の足の裏に広がる地面を
土地を、地球を感じてみる
ゆっくりと味わう
その感触を
ゆっくりと結び直す
白色になった靴紐を
トントン
軽く跳んで
脚の、身体の調子を確かめてみる
ふぅっ
息を吐いてみた
身体に
チカラを満たしてみる
そして
また
あの音が鳴った
それらを見届けた猫は
満足気に
大きく大きく伸びをした
まるで
そこだけ時間が止まったかのよう
そんな優雅さと静けさを残して
「ごう」
また
廻り始める
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