AI x BI x ヒューマノイド 30年後のリアル 第13話 居酒屋にて
ぼくは居酒屋のざわめきの中にいる。タカシとヒロ、三人で久しぶりに集まって、ビールを片手に語り合っていた。学生の頃は頻繁に会っていたが、今は社会人として、それぞれ違う世界で働いている。だからこそ、こうして顔を合わせて話すのは貴重な時間だ。
「最近さ、車の売り上げが全然伸びないんだよな」タカシがぼやく。彼は自動車販売の営業をしている。いつも冗談ばかり言う陽気な彼が珍しく真剣な表情で話すのを、ぼくとヒロは静かに聞いていた。「店頭で営業してても、みんなネットで買うかシェアするかって話が増えてきた。未来が無い感じなんだよね」
ぼくもヒロもきょとんとしながら「車ってそんなに売れなくなってきてるのか、大変だなあ」となだめると、タカシは口元を少し引き締めて「そうなんだよ。だからオレは決めた!今年中に辞めてネギ農家に弟子入りする」
「え、え、ネギ農家?」ぼくとヒロは思わず顔を見合わせる。
「そう。農業は就業人口が減り続けていて高齢者の比率が多い業界だから、世代交代も早い。今こそ参入するのが良いと思ってさ。ゆくゆくは農業法人として規模を拡大していきたいと思ってるんだ。」
ネギ農家の話は突飛に感じたけど、タカシなりにかなり考えている口ぶりだ。
ヒロがぼそりと呟いた。「タカシなりに将来性を考えているんだね。介護の仕事は人手不足で毎日が大変だよ。お年寄りが増えてるのに、給料はあまり上がらないしね。あ、でも10年後には利用者も減り始めるって聞いてる。」
ぼくも「電気設備の工事現場もベテランが定年を迎えて職人不足で、新人が一人で現場に行かされることもあるんだ。まだまだロボットにできるような仕事は少ないように感じるけどなあ。」と苦笑する。
「ただ、今は人手不足かもしれないけど、10年もすれば、たぶん僕らの仕事の多くはAIやロボットに代わっていくと思うよ」と、タカシは静かに言い放った。「お前らもどうなるか考えて動いたほうがいい。激変する社会は俺たち若手にとってのチャンスでもあるんだからな」と、どこか頼もしく言った彼の言葉が、ぼくの心に響いた。
ぼくはそこで目が覚めた。
目の前には無機質な天井が広がっている。ここはあれから30年が経過した世界だ。そして、あれは忘れていたぼくの記憶だ。少しずつ思い出してきている。30年前の仲間たちのことが胸に突き刺さるように蘇ってきた。ぼくは何もしないまま30年経ってしまったが、タカシもヒロも、どうしているだろう。頑張って生きているのだろうか。
(続く)
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