「AI x BI x ヒューマノイド 30年後のリアル」 第4話
ゴーグルのディスプレイに現れたのは、少し不機嫌そうな30代くらいの女性。彼女がこの施設の管理者らしい。
「あの…」と声をかけると、彼女はぼくの言葉を遮るように話し始めた。
「管理者の岸本です。意識レベルが正常に戻ったそうで、おめでとうございます。ご要件はなんでしょうか」
ぶっきらぼうな口調に一瞬言葉を飲み込む。だが、何とか理由を伝えた。
「目が覚めたらAIやロボットばかりで、誰かと直接話したくて…」
彼女はちらりと視線を下に落とし、表情を崩さずに言った。
「それはごもっともです。ただ、私は忙しいので、あとはAIアシスタントにお任せください。30年も経って困惑されているでしょうが、すぐ慣れるはずです。問題を起こさない限り心配いりません。それでは」
言い終えるやいなや、画面はさっと切れた。
なんてそっけないんだろう。話を通じさせる隙もなかったが、どうやらこちらの状況は把握しているらしい。
「アーティ、さっきの人、チラッと下を見てたけど…何かカンペでも見てたのかな?あんなにそっけない対応しなくてもいいのに」
するとアーティが説明を始めた。
「管理者は施設の責任者ですが、運営はAIとロボットに任されており、彼女も多くのことは知らされていません。おそらく、最適な回答をAIが用意してカンペを読んだだけです。趣味の時間を妨害されたので、不機嫌だったのかと」
ぼくは苦笑し、「せっかく美人なのに台無しだな」とこぼす。
「なお、あの姿は管理者のアバターであり、本人とは全く似ていません」とアーティが冷静に応じた。
「じゃあ、本当はどんな人なの?」
「それはプライバシーに関わるのでお答えできません」
まるで、管理者と会話したつもりが、最初からAIと話していたかのようだ。少しがっかりしたその時、お腹が鳴った。
アーティがそれに気づいて、「ちょうど昼食の時間です。食堂にご案内します」と言い、部屋のドアが静かに開いた。
(続く)