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飛び出せ!レイバー緑のニューディール!

 中学の歴史の時間でも習ったとは思いますが「ニューディール」という意味は「新規まき直し」という意味で、世界恐慌でボロボロになったアメリカ経済を立て直しドイツや日本らファシズムになった国と対抗するために行われたものです。歴史上、大きな権限を持つ連邦政府を嫌うお国柄ですが、広大な国土があり自力で経済を再建できるアメリカという国をフルパワーで活かせる事を加味すればこれは合理的な政策でした。教科書でも見た事があるのはテネシー川流域開発公社によるダム開発でしょう。ダムだけではなく、発電施設や学校を建設、森林や土壌が回復され農業の再興にも繋がりました。
 もちろんこうした政策もいいものではなく、当時復活した農業は大地主が有利となり小規模農業主は土地を失い農業従事者が半数ほどに激減したというマイナス点もあります。ただこの政策で農業の安定化、労働者の保護、社会保障の充実など一定のナショナルミニマムが達成されました。これを行ったフランクリン・ローズベルトは野党のアメリカ共和党から「これほど大規模な政府介入なんて、彼は皇帝にでもなったのか!」という批判は常につきまとっていましたが、残した功績は現在のアメリカの原型を作りました。ただ基本的にアメリカという国は政府の過度な介入は嫌います。後の歴史が証明しているようにこれほど大規模な改革は後世ほとんど行われませんでした。
 それから80年後、颯爽と登場したバラク・オバマはこのニューディール政策をもじって、ある野心的で意欲的な政策を打ち出します。それが「グリーン・ニューディール」でした。今後10年1500億ドルの投資、500万人の雇用を生み出すとされたこの時代の背景はリーマン・ショックによって再びアメリカ経済を再建する機会をとらえたものでした。元々オバマ当選はリーマンショックの不況を共和党がもろに受け、当時はまだ政治経験が少ないが、弁が爽やかなオバマが選出された経緯があります。
 ①温室効果ガス排出ゼロ②電力の100%再生可能エネルギー化③気候変動などによる災害への強靭性構築④ゼロ・エミッション車や公共交通への投資・交通システムの抜本的な見直し⑤強力な雇用・環境保護を伴う国境調整、調達基準、貿易ルールの採択及び執行とどの産業にも恩恵を得ることができるこの政策は初めは歓迎されました。 
 しかし結果として成果がなかったというのも事実です。一つは技術革新によってシェールガス革命が起こったこと。シェールガスとは堆積岩の一つである頁岩から採れるガスの事で、そこから採れる石油をシェールオイルと言います。埋蔵量が多いシェールガスはもはや中東に頼らないほど大きな資源ですが、採掘する際、温室効果ガスが爆発的に出るのがデメリット。と言ってもこの採掘量は魅力的でした。
 もう一つは日本で起こった原子力発電の大事故です。原子力発電はクリーンエネルギーの中核の一つであり、このグリーン・ニューディール構想では大きな役割を果たすはずでしたが、あの件以来後退しました。私も別に脱原発派ではなく、エネルギーを別として雇用問題として考えるには急な削減は多くの失業者を産むという連合の意見とほぼ同意見ですが実際電力の現場に携わっている人に聞けば、エネルギーだとか雇用問題以前にそもそも原子力発電の勤務にはなりたくないというのもまたかなりの数を占めています。いずれにせよアメリカも周辺自治体の反対もあれば建設なんかできないので、有効な代替案にならなくなってきています。
 という事で、オバマ政権のグリーン・ニューディール構想はかけ声だおれに終わったのも事実です。実際オバマ後継者と見られ、政権でも重要な地位についていたヒラリー・クリントンが敗れたのはオバマ政権のこうした失策も重なっています。ただ環境政策は急務です。労働組合にとって縁遠いものではないです。職場に環境政策を取り入れたら、それはもう新しい環境への取り組みに他ならないでしょう。一つミクロな視点で見てみましょう。

緑の労働組合

 さてどのような仕事であれ、環境に負担をかけることは確実です。労働組合にとって環境問題は分かっているのに仕事がそうしたものではないという事を教えてくれます。ただ指を咥えて見ているだけでは、未来ある大人として無責任でしょう。労働組合ほど環境保全活動や地域の清掃活動を行っている団体もないです。これは地域社会に労働組合もコミュニティに溶け込むという部分もありますが、環境対策に真摯に取り組んでいるのも確かです。実施インターネットで「環境活動 労働組合」と引いてみれば、もう出るわ出るわの入れ食い状態です。さて日本ではまだまだ途上の労組が多く、もし変わった環境活動をやっている単組があれば是非教えて欲しいのですが、ニューディール発祥の地アメリカでは労働組合と環境活動は「ブルー・グリーン同盟」と言って盛んに行われています。特にそうした運動の先駆けになったのは、化学、石油、原子力で働く人を組織化したOCAWです。最も今は合併して日本の報道でもよく聞くUSWとなっていますが、この産別はゼンセンのように正式名称はUnited Steel, Paper and Forestry, Rubber, Manufacturing, Energy, Allied Industrial and Service Workers International Unionと長いものです。
 ですがここは前身のOCAWを使用します。1967年に「健康と安全に関する決議」を行うと工場内の安全衛生ばかりではなく工場からの排出物についてもその目は向けられました。この決議の中心となったのはトニー・マゾッキという当時労組の市民政策局長を務め、決議だけではなく具体的な行動を起こしました。組合の代表者会で職場の衛生問題を話し合い、時には科学者といった専門家の助言を受けました。自分達だけでなく周辺住民も自分達の工場から出る有毒ガスから被害を受けていると知ったマゾッキ達は会社の労使交渉で職場の安全衛生委員会の設置や労使承認の専門家による定期的な安全衛生のチェックを要求し、会社は受け入れました。が、そんな都合よく進むわけがなく会社は約束を反故にし、73年ストライキに突入します。賃上げや解雇がかかっているケースではない珍しいストライキですが、彼らの主張は地域大衆と共にあったので一般市民からの支援がありました。最終的に組合側は拘束力を弱めた安全衛生条項で妥結し、このストライキは終わったのですが、労働運動が環境問題でストライキを起こしたという稀有な事例ができました。誰だって安全な職場に勤めたいし、それは雇用を守る運動にも繋がります。日本でもチッソ労働組合の「恥宣言」から住民重視の労組に生まれ変わり、労組と市民活動の重要な同盟ができました。

グリーンニューディール第2章

さてオバマ政権の4年後、政権与党に返り咲いたアメリカ民主党はアレクサンドリア・オカシオ・コルテスを中心にかなり野心的である法案を提出します。オバマがイマイチ浸透できなかったグリーン・ニューディール政策です。今後火力発電をやめ、太陽光や風力発電に「100%」切り替える。交通手段をさらに近代化させ、製造業、農業での二酸化炭素削減のために技術革新を行う。住宅建設も環境に配慮されたグリーンビルディング化、土地保全の拡大。これによって失業される労働者に配慮して経済保護政策、社会保障の充実、就労訓練、さらに新しいグリーン職場による雇用創出などあまりにも大きすぎるオバマ政権以上のものを提言しました。だから現代貨幣理論で財政赤字は気にしないというスタンスを取ったのですが、今回はその話は本筋ではないので一旦おいておきます。これらの法案は国際環境NGOのグリーンピースやシエラクラブなどが支援しましたが、大幅に修正はされたもののバイデン政権において、これら法案は可決され20万件を超える雇用の創出、3000億ドルの投資が行われています。これはバイデン政権の功績の一つでしょう。懸念点は後のトランプ政権がどのようなスタンスなのか分からないことですが。
 さてこうした環境政策に配慮した職場づくり、雇用の創出はアメリカだけではなく全世界でも行われつつあります。例えばブラジルであれば、牛肉事業者にはカーボンニュートラルで作られたものには認証マークを発行することを提案しています。オーストラリアでは「グリーン・ゴールドラッシュ」という政策を打ち出し、約3兆円規模の投資を行っています。しかしここで疑問に思うはずです。日本は?

日本グリーンニューディール構想?

 日本では2009年に「緑の経済と社会の変革」という日本版グリーンニューディール構想がありました。覚えている人はいますでしょうか?基本的に今までやっていた環境政策を焼き直しただけの文章と言われていました。しかし、海を超えたオバマ政権が大々的に打ち出しているので、やらなくてはならない。時の環境大臣は麻生政権下の斉藤鉄夫でした。お察しの通り麻生政権はその8ヶ月後に瓦解。そうした話を民主党政権も引き継ぎましたが、あの相次ぐ権力闘争を見ていたら環境に投資するなどの発想は出ないでしょう。原子力発電の大事故も影を落としました。後に菅直人は環境投資に予算を割きましたが、どれほど効果があったのか今はまだ結果は出ないでしょう。案外この後芽が開くかもしれません。しかし、雇用対策になったのか?日本でも120兆円の予算と雇用を280万人創出すると当初はうたわれたものです。
 ただ環境政策は今後どんどんシェアが増えていく事は間違いないです。既存の企業も環境対策に人員を割かねばいけない時代に突入しました。我が親会社でも、なんだか色々やっています。環境対策で雇用を生み出しているかどうかを尋ねられたら私はイエスと言いますね。どんな企業でも環境について考えることで、給与を頂いている人もいます。現状企業では、アップルをはじめ、そのイメージアップを兼ねて全て太陽光など全て自家発電で賄うという企業も出てきています。民間需要だとまだまだ難しい側面がありますね。そのための技術革新でしょう。何はどうあれこのまま何も考えずに火力発電に頼り切るという未来も現状想像ではできません。長い目で見ないといけません。
 案外再生エネルギーに関しては自民党に多くの支持者がおり(新しいビジネスだという思惑もあるかもしれませんが)麻生太郎がその代表格です。(麻生グループは石炭で大きくなった企業ですが、最近再生エネルギーのグループ会社もあるそうです。元総理の親族が行う太陽光発電の会社だと聞けば、なんだか思惑もありそうですが)こうした面は保革問わずに行ってほしいですね。これは日本の未来に繋がる事ですから。

目指せ!緑の生活

 日本のナショナルセンター連合においても「連合エコライフ」活動を行っています。環境を考えて、もういっそ古い家電を処分するために全てエコな製品に変えてしまえ!と思って冬のボーナスを全て注ぎ込んだエコ家電に買い替えて、3年目。古い時代と何が違うかと言われると正直あまり実感がないです。庶民レベルだとまだこんなものでしょうか?これが集団で行っていけば、ある種革命のようなことが起こるかもしれませんが。それはいつのことになることやら。
 さて前にも話したことがありますが、私は緑の党のサポーターをしています。

 労働組合の人間で、ましてや連合傘下の専従や役員をやっていたなんて話はしていませんが、一応労働側の意見として何か討論のような場面があれば意見を言うようにしています。とは言え初期とはすごく変わって、なんだか大衆受けと言うより、自分達の輪に入ってしまっているような事も感じますが。労働組合において、組合員の利益だけ考えて行動する団体の事をビジネスユニオンと批判されましたが、どうも緑の党も似たような状況に陥っていないか?元々事実上のリーダーと経済政策を担っていた大学教授のご夫婦が他党に移籍し、その影響がまだ緑の党にも色濃く残っている。ドイツの緑の党のように、さまざまな人々を包摂できるような政党を目指すべきだと私も日々奮闘中です。選挙になれば組合の運動を優先しますが、このまま単純に小政党のまま終われば明らかにこの国だけではなく世界の環境運動にとって損害です。日本版グレタ・トゥーンベリが必要だと感じていますよ。若い世代が1番煽りをもらうのだから、本来なら大人を叱って当然です。私も随分叱られるでしょうね。緑の党は主体性を持つべき。私達は山本太郎の組織の下請けになったつもりはないです。

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