従業員エンゲージメントの測定手法と測定理由とは?
皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?
ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。
今日は、従業員エンゲージメントに関する測定手法や、組織において測定することの有用性に関する大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。
注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Ampの「How (and Why) to measure employee engagement」を日本の読者様向けに訳したものです。
たとえるなら、従業員エンゲージメントは風のような存在かもしれません。私たちは、風を感じることができますし、その音を聞くこともあります。明らかに、私たちが風が吹けば、周囲への影響を目の当たりに感じているはずです。しかしながら、私たちは、風を上手につかまえようとしても、そう、うまくはいきません。
従業員エンゲージメントは、人事の流行語として、より一層の注目が集まっているにも関わらず、依然として曖昧な概念として受け止められがちです。従業員エンゲージメントの本当の意味が深く理解されないままに、「エンゲージメントの高い従業員は優秀な従業員だ」と、過度に単純化されているきらいも否めません。従業員エンゲージメント自体が、正確に理解されず、誤解を生みやすい状況と言えるでしょう。
では、従業員エンゲージメントとは、一体何なのでしょうか? そして、おそらく私たちにとっても最も重要なことは、従業員エンゲージメントをどのように測定できるか? ではないでしょうか。
従業員エンゲージメントの正体とは?
Culture Ampでは、従業員エンゲージメントを次のように定義しています:
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従業員エンゲージメントは、従業員の組織に対する熱意や、そのつながりの程度を表します。従業員エンゲージメントは、従業員がどれだけやる気があり、組織のために努力を惜しまないか、さらには、従業員が現状の組織でこれからも活躍したいとどれだけ強く思っているかを示す指標です。
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エンゲージメントの高い従業員は、熱意があり、献身的で、やる気のいずれもが高い状態にあると言われます。このように聞くと、なぜ経営者や組織のリーダーが、従業員エンゲージメントを改善することが喫緊のミッションと言われるかが、まざまざと理解できることでしょう。
しかし、従業員エンゲージメントは具体的に行動に落とし込めるものではありません。従業員エンゲージメントは、組織の行動や従業員の全体的な経験の結果としてたらされるものなのです。
なぜ従業員エンゲージメントを測定するか?
すでに多くの経営者や組織のリーダーたちは、従業員エンゲージメントがもたらすメリットである、生産性の向上、従業員満足度の向上、従業員の職場への定着率の向上、事業の業績の改善などについても熟知していることでしょう。
それでは、従業員エンゲージメントを組織で測定するメリットは何でしょうか? なぜ、わざわざ自分の組織の現状を把握する必要があるのでしょうか?
従業員エンゲージメントの測定結果から、以下のことが可能になります:
従業員、企業文化、組織全体の改善に必要な、戦略的な変更点を特定する
自社が従業員の経験や洞察をいかに重視しているかを提示し、組織内に、信頼の文化を醸成する
測定結果に依拠することで、実施したい施策が、実際に自社の従業員エンゲージメント向上につながるように構築ができる
古い英語の諺にもあるように、「測定できないものは改善できない」のです。組織の従業員エンゲージメントの向上を具体的に目指すのであれば、まず、そして、どのように進捗を管理するのかを理解して行くことから初めていきましょう。
従業員エンゲージメントの測定方法:理解を深める4つのステップ
従業員エンゲージメントを測定するメリットは理解できていても、組織を定量化するには、極端に困難を伴うのも事実です。
組織を定量化するにしても、エンゲージメントには多くの要素が含まれていることは否定できません。リーダーシップ、評価、能力開発の機会、同僚との関係など、従業員が組織で経験することのひとつひとつ、無数の要素が、従業員のエンゲージメントに明確な影響を与えているからです。
このように考えると、従業員のエンゲージメントを測定することは、組織のあらゆる側面を測定することに同義と感じるかもしれません。そのため、多くの企業は、エンゲージメントの測定には踏み切らず、「まあ、みんな幸せそうだ」といった直感や単純な思い込みに頼りがちなのも頷けます。
さて、ここからは、こういった直感を超え、より現実的にーつまり、数値的な調査に基づいて、自社の従業員のエンゲージメント状況を知る方法を見ていきましょう。
1. 従業員のエンゲージメントを測定する様々な方法を知る
実際の従業員エンゲージメントを測定する手法は、数多くあります。以下に主な手法を挙げます:
従業員エンゲージメント調査(アンケート)の実施
1対1の会話や少人数のグループでの会話の実施
退職面談や退職意向者の引き止め面談の実施
従業員ネット・プロモーター・スコア(eNPS)の算出
従業員エンゲージメントに密接に関連する以下のような指標の適用:従業員パフォーマンス、生産性、リテンション
従業員エンゲージメント調査(ベースライン調査とパルス調査の両方)は、エンゲージメントを測定する上で最も一般的かつ信頼性の高い方法です。一方で、上記で紹介したその他の方法を補完することで、組織内で実際に起こっていることをより具体的かつ全体的に把握できるようになります。
2. 適切な質問項目を作成する
このセクションでは、従業員エンゲージメントの測定方法を考える上で、エンゲージメント調査の代表的な手法でもあるアンケートんついて、より具体的な方法について詳しく説明していきます
ベースラインを確立するために、包括的な従業員エンゲージメント調査から始めるのが一般的です。アンケートの質問数は50~60問程度で、回答時間は10分程度にします。
ただし、このエンゲージメント調査(アンケート)を社内で実施するだけでは十分ではありません。従業員エンゲージメントの成果や促進している要因を深く掘り下げるには、適切な質問をする必要があります。
Culture Ampでは、従業員エンゲージメントの成果を測定するために5つのアンケート項目を用いています。私たちはこれを "エンゲージメント指数 "と呼んでいます。従業員は、以下の成果と状態について、どの程度同意できるかを評価します:
誇り:【会社】で働けることを誇りに思う
推薦:【会社】を素晴らしい職場として推薦する
現在のコミットメント:「他社への転職を考えることはほとんどない」
将来のコミットメント:「2年後も[会社]で働いていると思う。」
モチベーション:【会社】は、他の会社で同じような職務に就く以上のモチベーションを与えてくれる
これらの5つの質問は、エンゲージメント調査の出発点であり要諦ですが、詳細なエンゲージメント調査では、これらにとどまらず、従業員エンゲージメントを促進すると言われる主要な4要因:リーダーシップ、イネーブルメント、アライメント、ディベロップメント(4つの要因の頭文字でLEAD)も質問に加えます。
LEADに関する質問では、以下のような状況について、従業員がどれほど同意できるかを尋ねます:
「[会社]のリーダーは、自社で何が起きているか常に従業員に共有している」
「自分の業務/仕事を完遂するために必要な情報等に、アクセスしている」
「仕事で成果を出したときに適切な評価を受けている」
「この会社には、自分にとって良いキャリアの機会があると思う」 等々
これまで直感で策定した施策や強化ポイントではなく、上記のような成果や促進要因など、さまざまな側面をアンケート調査することで、エンゲージメントのあらゆる側面について尋ね、数値的な結果を得ることができます(エンゲージメント調査のテンプレートもご用意していますので、活用ください)。
3. フィードバックをより深く掘り下げる
エンゲージメント・サーベイの結果が手元に届いたら、次はその結果とフィードバックを見直し、結果の意味を理解していきます。Culture Ampの社内に在籍するピープル・サイエンティストは、これらのデータを解釈し、適切なアクションプランを策定するお手伝いもしています。
もしかしたら、調査結果で明らかになったことに驚きや戸惑いを感じることもあるかもしれません。そんな時は、上記で紹介した他の方法、たとえば従業員と直接対話したり、マネジャーとチームで結果について会話したりすることで、糸口を見つけることも有効です。
データは紛れもなく役に立ちます。しかし、組織にいるからこそ、メンバーとの対面での会話といった職場での経験を加えることで、データがもつ意味合いの詳細、背景などの解像度もグッと増すのです。
4. 測定プロセスをやり抜く
初回のエンゲージメント調査結果は、育成機会の提供、リーダーシップ研修の充実、ワークライフバランスの改善など、早急に対策を講じたい重点項目が浮き彫りになるでしょう。
結果をもとに行動を起こすにあたり、打ち出した施策の進捗状況をモニターする準備も同時に行っていきましょう。進捗状況を知るために活用するのが、パルス調査です。パルス調査とは、選択した特定の重点分野の進捗を追跡する短いアンケート調査(通常5~15問)のことです。
では、一体、エンゲージメントを測定・進捗状況をモニタリングするために、いつ、どれくらいの頻度でさまざまなアンケートを実施すればよいのでしょうか? Culture Ampでは、1年間を区切りとして、四半期に一度、以下のようなアンケート調査を推奨しています:
第1四半期:ベースライン調査(アンケート):企業文化やエンゲージメントレベルの大まかな状況を確認し、施策を検討する
第2四半期:パルス調査(アンケート):ベースライン調査の結果から得られた特定の施策の対応に関する進捗確認と、コアとなる5つの従業員エンゲージメントに関する質問で現状を確認する
第3四半期:ディープダイブ調査(アンケート):ベースライン調査では掘り下げることが難しい、または複雑なトピックを特定し、詳細を確認の上、施策を検討する
第4四半期:特定の施策の進捗状況を追跡するパルス調査、中核となる5つのエンゲージメントに関する質問、ディープ・ダイブ調査の結果に基づくフォローアップ質問を行い、全体の対応結果等を俯瞰的に確認する
この構成に忠実に従う必要はありませんが、上記は従業員に「(会社が)同じことを繰り返し聞いている」と感じさせることなく、従業員から組織へのフィードバックを引き出すために構築されたフレームワークとして、広く活用されています。
このように、従業員エンゲージメントは1回の計測で判明するものではないことがご理解いただけたと思います。日々変化する組織同様、人々のエンゲージメントの程度も変化しています。定期的かつ確実に状況を把握することで、組織の今と常に感じ、運営することが可能となります。
測定し、修正し、そして従業員エンゲージメントを習得する
従業員エンゲージメントを定義するのは難しく、測定するのはさらに難しく感じるかもしれません。だからといって、悲観敵になる必要もありません。従業員の会社に対する熱意、仕事へのコミットメントや職務へのモチベーションを把握し、組織にとって意義と効果をもたらす改善を行う現実的で信頼できる方法は確実に存在しています。
よく、従業員エンゲージメント調査に対して「調査疲れ」を指摘する組織も多く存在します。しかし、言い換えれば、次のような状態とも言えるのです。
従業員は、自分の意見を述べることに対して疲弊するのではなく、雇用主がそれに対して行動を起こさないことに疲弊しているのです。
《この記事に関するお問い合わせ》
ラボラティック株式会社 広報担当
https://laboratik.com/
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