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ご興味を持ってくださり
ありがとうございます。
お母さんを笑顔にするお仕事の人、
子育て専門助産師なとりです。

シリーズ帝王切開3回目
今回は「帝王切開のあれこれ」と題し
おもに「予定帝王切開」について
ほかではあまり読むことのできない
帝王切開についての「知りたい」を
書き記してみます。

これから帝王切開をされる方だけでなく
妊娠中の方や
周囲に妊婦さんがいるという方にも、
そして帝王切開に関心のある方に
お読みいただければと思います。

なお、今回の投稿には
私が臨床で経験したことを記しています。

文中にも注意書きをしましたが
あなたの経験や
これから帝王切開をするために受けた説明と
異なる場合もあると思います。

医療施設や医師によっても異なり
また妊娠経過や状況によっても
異なってきますので
一般的なものとしてお読みいただき
参考になさってください。


〈帝王切開になる理由〉

経腟分娩ができないと判断された場合や
胎児または母体に危機的な状況があって
一刻を争う場合に帝王切開が選択されます。

帝王切開には
妊娠中に手術の日を決める「予定帝王切開」と
お産の経過中に決める「緊急帝王切開」という
状況に応じた2つの方法があります。

「帝王切開」は
以下のような場合に適応となります。

近頃は検索すれば
解説を見ることができるため
ここではその適応を
あえて解説なしの医学用語で記します。

「予定帝王切開」
・既往(前回)帝王切開
・既往子宮手術
・児頭骨盤不均衡
・前置胎盤
・母体合併症
・骨盤位等の胎位異常
・多胎妊娠
・希望帝王切開
・予定日超過 など。

「緊急帝王切開」
・分娩遷延
・分娩停止
・重症妊娠高血圧症候群
・常位胎盤早期剥離
・胎児機能不全
・臍帯下垂
・臍帯脱出 など。

このほかにも
巨大児、前期破水や感染症
あるいは
帝王切開の予定日を待たずに
陣痛が始まった場合なども
帝王切開の適応となります。

〈選択権はあなたにもある〉

「緊急帝王切開」は
お産の経過中に赤ちゃんまたはお母さん
あるいは両方に起きた
突発的なトラブルから生命を守るための
安全なお産として選択されます。

この場合
選択の余地はありません。

「予定帝王切開」は
陣痛や破水など、自然のお産が始まる前に
計画的に行なうため

また、
生まれた赤ちゃんへの影響を考慮し
妊娠38週過ぎを目安に
手術の日程が組まれることが多いようです。

さきほどの
「予定帝王切開」の適応がある場合でも
条件によっては
経腟分娩を選択できることもあるのです。

たとえば
前回のお産が帝王切開だった場合
その理由だけで
今回も帝王切開にしなければいけない
ということはありません。

前回帝王切開になった理由や
その具体的な方法(子宮の切開は縦か横か)
陣痛が起こる前だったか
前々回のお産も帝王切開だったか
といった情報と

今回の妊娠の経過を
総合的に評価して
帝王切開にするかを決めるからです。

骨盤位(逆子)の場合も
イコール予定帝王切開ではなく
赤ちゃんの胎勢や大きさ
妊娠週数や胎盤の位置など
さまざまな情報から
経腟分娩の可否が判断されます。

ただし
前回帝王切開で今回経腟分娩を試みる
『TOLAC』や逆子の経腟分娩は
医療施設側に万全の設備と体制が
整っていてることが大前提です。

また産む側も
リスクを十分に理解していること
配偶者や家族も同意していること
緊急帝王切開も受け入れられることなど
安易な選択ではない強い意志を示すとともに
それを認識する必要があります。

〈予定帝王切開のメリット〉

施設によって多少の差はありますが
おおよそ妊娠28週以降の妊娠後期、
手術の1か月半から2か月くらい前に
日程を決めることが多いようです。

~医療施設側のメリット~

妊婦さん側へ
帝王切開の説明を行ないます。

施設によって
手術の曜日が決まっていますので
その手術日に予定が組まれます。

ちなみに
私がこれまで勤めた
いくつかの病院では
手術日こそ違いましたが
共通して帝王切開は朝一番の手術でした。

これは
帝王切開の手術時間が1〜2時間と
おおよそ予測できているためです。

手術時間の予測が難しい
婦人科の手術を先にするよりも
効率よくその日の手術を
進められるからです。

これは一例ですが
・9時に手術室に入ります
・麻酔は部分麻酔です
このような手術の流れや麻酔の方法、
合併症とその予防についてなどの説明を行ない
同意書に署名をもらいます。

手術に際して必要な
胸部レントゲン撮影や心電図検査
血液検査を実施しておきます。

出血が多くなると予測される場合には
事前に自分の血液を採取し保存しておく
『自己血貯血』をする場合もあります。

これらのことが妊婦健診と同時に
時間にゆとりをもって実施できることが
「予定帝王切開」における
医療施設側のメリットです。

~妊婦さん側のメリット~

「予定帝王切開」における
妊婦さん側の最大のメリットは
帝王切開を受ける心の準備を
整えられることです。

そして次に
日程が事前に決められるので
予定が立つことです。

自然分娩ではわからない
「いつ(何時)」がわかっているので
赤ちゃんを迎える準備も
お仕事の引き継ぎも
家族の立ち会いも
計画的に進められます。

〈入院の日~手術前日〉

順調に経過し
帝王切開の予定日前日を迎えると
いよいよ入院です。

入院の時間は
施設によって異なりますが
ほとんどの場合
帝王切開の前日に入院します。

病棟の案内や事務的な手続きを済ませ
腕にネームバンドが装着されると
明日の出産に実感が湧いてきます。

この日の過ごし方としては
担当医師の診察を受け
助産師または看護師から
入院生活のスケジュールや
術後の経過についての説明があります。

妊婦健診と同じように
胎児心拍モニターを装着し
体温や脈拍、血圧を測定します。

帝王切開当日に着用する手術着と
深部静脈血栓症予防のための
弾性ストッキングが渡されます。

入院中に必要なお産用のパッドや
産褥ショーツ、清浄綿などが入っている
お産セットも受け取ります。

電気クリッパーと呼ばれるバリカンで
おへそから下の毛を除毛しますが
手術当日に行なう施設もあります。

術後は基本的に翌々日にならないと
シャワーに入れませんので
しっかり済ませておきます。

麻酔科の医師や手術室の看護師の
訪問がある場合もあります。

病棟内の移動が自由でしたら一周して
スタッフステーションや
新生児室、授乳室などの位置を
確認しておきます。

この日は
夜9時以降絶食となります。

眠れないときは
睡眠薬をもらえますから
遠慮せず助産師に相談して
ゆっくり休みましょう。

やることが多いように思えますが
時間を持て余してしまう方もいますので
リラックスして過ごし
お腹に赤ちゃんがいる最後のひとときを
かみしめてくださいね。

〈帝王切開当日〉

さあ、いよいよ出産当日
緊張すると思いますが
やっと赤ちゃんに会えますね。

お水は手術の3~4時間くらい前まで
飲むことができます。

もう一度
胎児心拍モニターを装着します。

手術着に着替え
弾性ストッキングを履き
準備ができたら点滴をします。

手術室に行く前に
次のような確認があります。
 時計、指輪、入れ歯
 コンタクトレンズ
 ネイル(マニキュア、ジェル等)

手術室への入室時間が
「9時」のように決まっていれば
その時間に入室します。

前の手術が終わり次第
ということもありますので
家族とゆっくり過ごしましょう。

*施設によって入院や手術の時間は
 さまざまですので
 ほんの一例とお考えください。

〈いよいよお産のとき〉

手術室へは助産師が付き添って
歩いて入室します。

状況によっては車いすやストレッチャーで
入室することもあり
手術室の手前までは家族が見送ってくれます。

手術室に入ると手術台に上がり
局所麻酔を行ないます。
腰椎麻酔と硬膜外麻酔を併せて行なうか
腰椎麻酔だけかどちらかになります。

麻酔が効いていることが確認できたら
心電図と血圧計が装着され
赤ちゃんの心拍を確認し
尿の管を入れ手術が始まります。

お腹の皮膚を切開してから
子宮を切開すると
赤ちゃんを包んでいる膜が見えてきます。

この膜を破ると
赤ちゃんの誕生です。

局所麻酔は痛みはありませんが
意識はあります。

お腹を引っ張られるような感覚で
赤ちゃんが産まれる瞬間を感じ
産声を聞くことができます。

へその緒を切って
助産師が赤ちゃんの観察や処置をした後
お顔のそばに赤ちゃんをお連れして
初めての面会をします。

おめでとうございます!

手術が始まってから
赤ちゃんの誕生までは10分くらいです。

施設によっては記念撮影をしたり
夫が手術に立ち会うことができますので
ご自身で施設に確認してくださいね。

ここから
全身麻酔に切り替える場合もあります。

胎盤がはがれたら取り出し
子宮頸管を1〜2㎝開いて
子宮とお腹の皮膚を縫い合わせて
手術は終了です。

〈出産当日を過ごす〉

この日は出産当日として
「0日」と数えます。

手術室からお部屋に戻り
基本的には一日横になったままで
過ごします。

ベッドの背を起こして
座るような姿勢になることもできますので
助産師にお願いをします。

お部屋に戻ってから2時間は
助産師や看護師が
身体の観察を定期的に行ないます。

深部静脈血栓症を予防するため
足にはポンプが装着され
間欠的に圧迫が繰り返されます。

背中に硬膜外麻酔の
細いチューブが入っていて
少しずつ痛み止めが注入されています。

食事は明日の術後1日目から
というところがほとんどですが
当日の夕食から食べられる施設もあります。

基本的にはお部屋に戻ってから
4〜6時間後を目安に
まずは水分摂取から始まります。

赤ちゃんとの面会もできますが
無理せず短時間にとどめ
明日の離床にそなえます。

〈術後1日目から退院まで〉

昨晩は眠れたでしょうか。
お腹のキズの痛みで
何度も目が覚めてしまったり
思うように寝返りができず
眠れなかったかもしれません。

食事は施設によって
重湯やお粥から始まるところもあれば
普通の食事を出してくれるところもあります。

午前中のうちに助産師が手伝いながら
温かいタオルで身体を拭いて着替え
点滴や尿の管を抜き
午後からは赤ちゃんのお世話を始めます。

最初のトイレ歩行は
助産師を呼んで付き添ってもらいます。

痛みが強い時は
遠慮せずに痛み止めをもらって
できるだけ動くようにします。

もしくは定期的に飲むように
痛み止めを渡されるかもしれません。

術後2日目か3日目に
シャワーに入れるようになります。

お腹のキズは
テープで見えないですが
退院前日くらいに医療用ホチキスの
金具を外しますので
一度は見ておいてください。
勲章です。

入院期間も施設によってさまざまで
早いところでは術後5日目
長いところで術後10~12日目で
平均は術後7~8日目くらいです。

入院中は経腟分娩より
日程が遅く組まれていますが
授乳や同室、沐浴もしますし
お腹のキズの診察だけでなく
内診もあります。

帝王切開でも
お産の方法が帝王切開だったたいうだけで
産後の経過は経腟分娩と同じです。

〈あとがき〉

今回、この投稿をまとめるにあたり
インターネットで帝王切開に関する
さまざまな記事をたくさん読みました。

実際に帝王切開をされた方の手記もあれば
医師監修の教科書的な説明のもの
そしてやはり気になったのは
「痛み」と「費用」にフォーカスされた記事。

情報があまりに多かったので
AIチャットボットを使って
帝王切開のメリットについて聞いたところ
次のような回答がありました。

  • 出産時間の予測が可能

  • 陣痛の苦しみがない

  • 会陰切開や傷がない場合がある

デメリットは

  • 手術による傷跡が残る

  • 出産時の選択肢が少ない

  • 出産にかかる費用が高額になる

  • 出産後の回復に時間がかかる

「ちょっと待ってください」というのが
私の感想です。

これをあとがきに書こうと思いましたが
それだけで1つの投稿になりそうなので
また別の機会にまとめようと思います。

「痛み」や「費用」は
フォーカスされる事柄ではないと私は思います。

それに帝王切開のメリットは
もっと別なところにありますし
まったくデメリットには当てはまらないと
私は思うのです。

最後までお読みいただき
ありがとうございました。

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