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助産師が伝える「究極の自然分娩」

ご興味を持ってくださり
ありがとうございます。
お母さんを笑顔にするお仕事の人、
子育て専門助産師なとりです。

今回は
私が助産師として
病院での臨床経験から考える
自然分娩について
お伝えしたいと思います。


〈分娩とは?〉

出産のことを
「分娩(ぶんべん)」といいます。

助産師は「お産」という
言葉を使うことが多いです。

「分娩」も「出産」も「お産」も
女性が命を生み出すという
神秘的な出来事を表しています。

母子手帳にも
「出産の状態」というページがあり、
分娩経過や分娩方法、分娩所要時間などが
記入されるようになっています。

分娩は医学用語
出産は一般的な用語で
お産は産婆のビジネス用語
といったところでしょうか。
(私の個人的な見解です。)

〈分娩の種類〉

分娩は大きく2つに分けられます。

まず1つは
経膣(けいちつ)分娩です。

皆さんが思い浮かべている
いわゆる普通の
下からのお産です。

赤ちゃんが子宮から膣・外陰部へと
「産道(さんどう)」を通って
生まれてくるということです。

もう1つは帝王切開です。
こちらは手術ですので
立派な医療介入になります。

経膣分娩には
帝王切開以外のお産が
すべて含まれます。

つまり
吸引分娩や無痛分娩
陣痛促進剤を使っての計画分娩など
医療介入によるお産と、

ラマーズ法やリーブ法
ソフロロジー式分娩法など
医療介入のないお産です。

後者が「自然分娩」という
位置づけになります。

〈会陰切開は医療行為です〉

医療介入のないお産を
自然分娩と呼ぶのに

「会陰切開などは行うことがあります」と
病院のホームページの自然分娩の項目に
書かれていたりします。

「自然分娩」の見解が
それぞれの病院によって異なるのです。

また産科医や助産師、あるいは
妊婦さん、産婦さんによっても
捉え方はさまざまです。

おそらく自然分娩の「自然」は
陣痛が「自然」に始まって
お産までの経過を「自然」に任せ、
産道を通って赤ちゃんが生まれてくる
ということなのでしょう。

私は助産師なので
医療行為は行なえません。

そのため自然分娩とは
医療行為によらない
「正常分娩」というよりも

医療どころか
不要な介入を一つもしない
「究極の自然分娩」を
イメージします。

〈究極の自然分娩とは〉

早い話が助産院でのお産です。
もっと言えば
自宅に助産師を呼んでのお産です。

想像がつくでしょうか?
その前に。

助産院あるいは助産師の訪問によって
自宅で出産ができることを
ご存知でしたか?

そういった経験をした人が
あなたの周りにいますか?

医療の介入がなくても
お産ができるということを
知っていましたか?

病院を産む場所として選択するのが
当たり前と思われがちですが、
生活の場である自宅のほうが
より自然だと思いませんか?

病院を選択しないだけで
医学的な処置を介入させない
という選択につながります。

最近ではその必要性が問われ
必要最低限にとどめる傾向にあるようですが、

お産の際に行われる
医療行為や処置には
これだけのものがあります。

・会陰切開(えいんせっかい)
・剃毛(ていもう)
・浣腸(かんちょう)
・導尿(どうにょう)
・点滴(てんてき)
・分娩監視装置(ぶんべんかんしそうち)
・内診(ないしん)
※今回はこれらの用語の説明は割愛します。

ご家族の立ち合いも自由です。
ご主人も、お子さんもお母さんも。
あるいはお姉さんや妹さん、お友達
あなたが立ち会ってもらいたい人
みんなに集まってもらえます。

いつもの空間で過ごしながら
日常の中でお産を迎えるので
リラックスして臨めます。

陣痛をどうやり過ごすか
自分が感じるままに
歩いてみたり座ってみたり。

人為的なことなしで
身も心も成行きのまま。
これが私の思う
「究極の自然分娩」です。

言うなれば
太古から行われてきた
女性の「産む力」と
赤ちゃんの「生まれる力」
それのみによるお産です。

〈助産師ができる自然分娩とは〉

本来、お産は自然の営みです。

自然分娩とはお産だけを指すのではなく、
妊娠中から意のままに様々な選択を重ね
お産やその先の育児につなげていくもの
なのかもしれません。

実際に自宅でお産をする人は
病院でお産をする人99%に対し
たった0.1%しかいません。
助産院でのお産は1%です。

これほど少ないのは
妊婦さんにも赤ちゃんにも
健康状態に問題がない場合しか
助産師が扱えないことも
影響しているのでしょう。

医療の介入が慣例的に行なわれるお産と
人の手を加えない本来のお産と

助産師やお産の現場に携わる医療者は
どちらも知っておく必要が
あると思います。

病院で産むことが
当たり前の世においては
お産は医療化されています。

それだけリスクを伴う
妊娠や出産が増えている
ということでもあります。

お産に医療が介入しなければよい
という単純なものではありません。

その処置の効果や必要性を
十分に理解したうえで

お産の進行状況を正しく把握し
産婦さんの背景も考えながら

医学的な処置が必要なのか
不要なのかを判断する能力が
助産師には求められます。

医学的な処置が必要と
判断した場合には
すみやかに医師へ報告し
連携をとると同時に

産婦さんへわかりやすく説明し
同意を得ることも
適切なタイミングで実施することも
助産師の役割です。

これが医療で管理されたお産に
本来の自然の営みであるお産を融合させる
「自然分娩」であると思います。

現代における、医療がそばにある
安心の「究極の自然分娩」と言える
と私は思います。

〈院内助産が増えている〉

遠い昔から、人類はお産によって
脈々と命をつないできました。
しかし、その中では
失われた命が多くあったことも事実です。

産科医師の不足という問題もある中
院内助産が増えてきています。
院内助産とは、簡単に言うと
病院の中の助産院です。

助産師が中心のため
そこでお産をするには、やはり
妊娠経過が「正常である」という
条件が必要になります。

たとえ経過が正常でも
お産は常に危険と隣り合わせです。

なんの前触れもなく
急に医療の介入が必要になることも
実際に経験しました。
産婦さんは命がけなのです。

医学的なお産は
お母さんと赤ちゃんと
二つの命を守るため、

安全と引き換えに
医療介入を慣習的にしてきました。

それゆえ
救われた命が多くあることも
また事実なのです。

院内助産はまさに
医療がそばにある安心の
究極の自然分娩ができる施設です。

〈あとがき〉

「究極の自然分娩」を語ると
ある意味、宗教のような
助産師の信仰が感じられて
よく思わない方もいるのではないかと思います。

かくいう私も
自然分娩イコール何も手を加えない
といったような誤った考えを
過去には持っていました。

しかし経験や年齢を重ねると
だんだん見え方が変わってくるのですね。

そんな私が考える
妊娠や出産、育児のこと
どなたかのお役に立てばと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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