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「あるといいながあるところ」に心理士が仲間に入れてもらって気づいたこと

臨床心理士の仕事は、相談援助だけでなく研究活動も行います。相談援助の効果や、エビデンスのある支援を行う、こういった検証は研究者だからやるわけではなく、臨床実践しながら継続することが求められています。これを「科学者-実践家モデル」と言い、心理職の養成課程のベースになっています。
心理職としての経験と、自分なりに課題を見つけて研究も続けることを大事にしているのが、レタスの特徴です。私たちは、対人援助の仕事をしながら研究したいけど1人では不安だと感じている方が、前向きに取り組めるようなお手伝いをしています。

医療が地域に溶け込むコミュニティスペースとの出会い

今回レタスが伴走させていただいたのは、東京の町田市にあるヨリドコ小野路宿の研究チームです。ヨリドコは、医療機関が運営するコミュニティスペースで、グループや個人で活動されている方など、様々な人たちが利用しています。竹山クラブ、蚕づくり、いろんな活動が日々行われています。

私が見学したとき、「○○してください」から始まるのではなく、「何がやりたい?」という問いから仕事や役割がうまれていることを聞きました。スタッフの方や利用者さんが温かく迎えいれてくれて「ここで何かやってみたいな、関わりたいな」と私も感じ、腑に落ちました。

・人と『つながる場』
・力を『生かす仕組み』
・学びを『育む環境』

ヨリドコの3つの標
ヨリドコ小野路宿について – ヨリドコ小野路宿|あるといいながあるところ。 (yoridoko.com)

この標をもとに、これまでヨリドコが積み上げてきたものがどういうところに繋がるのか、ふりかえって発信したいと研究に取り組み始めたお話を聞き、私もお手伝いしたいと仲間に入れていただきました。
2024年6月開催のプライマリ・ケア学会でのポスター発表を終えてからフィードバックを頂き、心理士による研究伴走の意義や今後の課題を考えました。

今回の関わりで、良かったこと・意味があったこと・役に立ったことなど教えてください。

・研究というそもそも経験値がほとんど無いような領域で、研究の進め方、SCATなどの扱い方などを教えていただけた点。 また、少し煮詰まったときなどに客観的に視点や示唆などを示していただけたことなどはとても良かったと思いました。
・私には無い視点でのコメントは勿論なのですが、三宅さんの柔らかい雰囲気やオープンマインドな姿勢に学ぶことが多かったです。
・データ収集や解析の方法、メリット・デメリットなどについて複数の選択肢を示していただけたのはとても助かりました。そもそもどんな方法があるのかがわからなかったので、伴奏していただかなかったら見当違いな方法での研究になってしまう危険もあったと思います。そして実施にヨリドコに足を運んでくれ、こまめに会議にも参加していいただけたことで想いや温度感も共有していただき、私達がなにを知りたいと思っているかの言語化にも付き添っていただけた気がします。
・第三者が入ることで、客観的な意見をもらうことができた。行き詰まった時に壁打ちができた。

アンケート結果より

ヨリドコの温度感や文脈を日頃から感じていたわけではなかったため、調査協力してくださる方が受ける印象や影響を想像しきれていなかったところがありました。なので、オンラインミーティングで皆さんとやりとりできたのは、とても重要な時間でした。
ヨリドコの皆さんは、ちょっと離れた立場からの意見も受けとめて、考えておられました。私としては、その姿勢にとても助けられました。

もっとこうしてほしかった、この部分を一緒に考えてほしかった、など改善点を教えてください。

・それほど改善点などはありませんが、強いて言うと、結論を導いていく上での全体の構成やポイントのようなものをもう少しヨリドコ的なものとして導き出していくようなワーディングなどを一緒に検討していただけるとよかったと思います(でも、これは知らないと難しい部分でもあるので)
・研究開始から発表までのタイムスケジュールや抑えるべきタイミング(ここまでにはこれは終えておきたい)など全体の流れのマネジメントにも今回は苦労した印象がありました。全体の流れのファシリテーションも一緒に関わっていただくという方法もあったのかなと思いました。

アンケート結果より

全体の流れのマネジメント」とは、まさにプロジェクトマネジメントですよね。心理士は、相手のペースを尊重して聞くことを重視することが多いこともあり、不十分なところがあったと思います。とはいえ、研究をするうえでは、自分で締め切りを作らないと進められません。それに、臨床でも全体を俯瞰することでケースの動きを捉えなおすことができるので、やはり全体の流れを意識することは重要だと改めて思いました。

心理職が提供するサービスとして、こんなものがあったら使いたいと思うものはありますか?

・メンタルヘルス研修
・コンサルテーション(職場やコミュニティのアセスメントを含む)
・患者さんや利用者さんの心理的な状態やニーズなどを見える化するようなこと。意外と医療専門職が決めつけてしまったりすることもありがちなので。

アンケート結果より

どうしても、支援者-相談者、医療者-患者というパワーバランスが発生しやすい環境にいるため、「患者さんや利用者さんの心理的な状態やニーズの見える化」は、医療者(支援者)のバイアスに気付くきっかけになると思います。また、「○○してほしい」という発言すべてがニーズとは限りません。発言や行動の背景を考えて、目に見えないニーズをキャッチすることも重要です。ここは、心理士が担える部分が多くあると思いました。

心理士が「いるといいな」と思ってもらうために続けたいこと

心理士による研究伴走の強みとして考えたのは、相手が意思決定できるように状況を整理すること・発言や行動の背景として考えられることを伝えること(言葉、可視化など)です。今後の活動で大事にしたいことを再確認できて良かったです。
これからも、対人援助の仕事をしている人たちが前向きになるお手伝いをすることで、現場でお会いする患者さんや相談者さんの支援につなげていくことを目指したいと思います。
ヨリドコの皆さん、仲間に入れていただきありがとうございました!


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