ヤクルト1000のエビデンスを検証② 睡眠の質を高める効果
前の記事では、ヤクルト1000のストレス緩和効果について書きました。
結論を言うと、尿中コルチゾールが一時的に減少することが見られたが、8週間飲み続けなければならない、ヤクルト1000である必然性が分からない、ということが論文から読み取れました。
ではもう一つの機能性訴求である「睡眠の質を高める効果」に関してはどうなのか、を見ていこうと思います。
元論文
ヤクルト1000の睡眠の質に関する論文は、
タイトル:健康成人の学業ストレスによる睡眠障害に対する乳酸菌シロタ株の有益な効果:二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験
という論文です。今回紹介する内容はこちらの論文を基にしています。
実験条件
この論文内では、ヒトに対する介入試験が行われています。
結果
【結果1】不安レベルは同じ
STAI法(不安レベル計測法)によって両被験者のストレスレベルを計測したところ、試験食・プラセボ乳両群で、被験者のストレスレベルに差は見られなかった。ということで、試験の条件がそろっているデータが取れていますが、ヤクルト1000には特に不安を和らげたりする効果は無さそうです。
【結果2】睡眠の質をトータルで評価すると変化はない。
国家試験に向けて学生たちの睡眠の質が下がっていることは、下の図を見ると分かります。これはOSAというアンケート方法で求められた睡眠の質のトータルスコアです。この図を見る限り、試験食とプラセボ乳の間に差はありませんし、論文でもそう結論づけています。すなわち、ヤクルト1000の喫食で全体的な睡眠の質は変化しません。(これ重要!!)
【結果3】一部の項目だけ差がみられる。
OSAは起床時の眠気、睡眠の開始と維持、夢見、疲労回復、睡眠の長さという5つの項目で評価されます。その中で、起床時の眠気と睡眠時間の長さにのみ差が見られました。
ただ、起床時の眠気に関しては、試験後のみに有意差がみられるので、ストレスのかかった段階では効果がありません。これでは意味がない。
ということで、起床時の眠気、睡眠の開始と維持、夢見、疲労回復に関しては効果がなさそうです。睡眠時間のみ伸びます。
【結果4】脳波モニター試験で差がある。
脳波モニターの試験の結果は、プラセボ乳と試験食での差を支持していました。睡眠潜時(入眠までにかかる時間のこと)、総睡眠時間、睡眠効率、入眠後覚醒率(WASO)、第3段階のノンレム睡眠(N3)率、第1睡眠周期のデルタパワーのうち、
睡眠潜時、入眠後覚醒率(WASO)、第3段階のノンレム睡眠(N3)率、第1睡眠周期のデルタパワーに関しては、統計的有意に改善が見られた。
しかしながら、試験直前までに有意差が見られた因子はなかった。各項目ともBonferroni adjusted t-testで有意差を見ているが、試験2週間前、試験直前において有意差が見られたタイミングはない。("#"がついてないところは差がないことを示しています。)
筆者考察
以下は筆者の個人的意見となる。ヤクルト1000のHPには以下の訴求がされている。
しかしながらこの訴求に関して、この論文の結果に基づくと、一時的な精神ストレスがかかる国家試験のタイミングまでに、睡眠の質が向上したことを示す根拠は乏しい。
確かに試験直後に睡眠の質が向上していることや、全体的に向上の傾向がみられることをANOVAで示しているが、「一時的な精神的ストレスがかかる状況での睡眠の質」が高まっていない。
そして、OSAテストのトータルスコアで示されたように、被験者は睡眠の質の向上を実感できていない。
このことから、ヤクルト1000が謳っている効果、そして顧客が殺到するほどの効果は、ヤクルト1000を飲むことで得ることはできなさそうである。
論文をしっかりと検証すると、都合のいいデータを拡大解釈して訴求をしているように見受けられてしまった。
残念ながら、しっかりとデータをみれば見るほど、ヤクルト1000を買おうという気にはならない。普通のヤクルト/ピルクルで十分です。
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