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プレゼンスライドで使う言葉の選択と使い方にはくれぐれも慎重に

プレゼンスライドを作るとき、使う言葉の選択と使い方にはくれぐれも慎重に。スライドに書く文章は短く、箇条書きやワンフレーズが多いため、長文と比べて一つの言葉の重みが違います。略語や業界用語を避け、同じものに対しては同じ言葉を使います。用語の統一もデザインの統一感につながります。

プレゼンスライドを作るとき、そこで使う言葉の選択にはくれぐれも慎重になる必要があります。そして、その言葉を大切に使わなければなりません。スライドに書く文章は常に短くて、箇条書きやワンフレーズの場合がほとんどです。つまり、長文の場合と比べると、ひとつひとつの言葉の重みが違ってきます。わかりにくい略語や業界用語をできるだけ避けて、それを使う必要があるときは、くれぐれも注意して使わなければなりません。そして、同じものを指しているなら常に同じ言葉を使い続けます。それによって、余計な誤解を防ぐと同時に、わかりやすいスライドにすることができます。

図1 言葉の選択と使い方に対して慎重に

専門性の高い内容のプレゼンスライドを作成する場合を考えてみましょう。専門的な内容を説明するスライドでは、略語や業界用語を使うことがとくに多いと思います。略語を使えばテキストを短くできて、限られたスペースを有効に使わないといけないプレゼンスライドでは大変便利です。業界用語を使いたい場面も多くあります。業界用語ならではのニュアンスもあるので、正しく使うことができればとても効果的です。しかし、それらの言葉に親しみがない人も多いことを意識しておく必要があります。客観的に見て、その略語や業界用語が適切かどうかを判断したり、適切な注釈をスライド内に含めたりすることも想定しなければなりません。

略語はわりと意識的に使うことができますが、ついついやってしまいがちなのが、業界用語や専門用語の一部を不用意に省略してしまうことです。専門的な実例で恐縮ですが、分子生物学の分野でよく使われる「非特異」という言葉があります。生物の遺伝情報をもつDNAを複製して増幅させる方法のことをPCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)と言って、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、2020年からこの単語をメディアで目にする機会も多くなりました。例えば、PCRにおいて、狙った配列ではない部分を誤って増幅してしまうことを「非特異的増幅」と言うのですが、プレゼンスライドでPCRの説明をしているときに、専門家たちは話の流れでついつい「非特異が発生する」といったような書き方、言い方をしてしまいます。これはPCRに詳しい関係者同士の間では何の問題もありませんが、専門家以外の人が見ると「非特異な何?」という疑問が湧き上がってきて、話が頭に入ってきません。

他にも、専門的な内容を説明するとき、例え専門用語でなくても、特別な意味があって共通語のように使われる業界用語があって、その使い方にも注意を払う必要があります。ここでもまた具体的な実例を紹介すると、生物実験でよく使われる言葉として「コントロール」という言葉があります。「コントロール実験」の意味で使われる言葉ですが、科学研究において、結果を検証するための比較対象を設定した実験のことで、日本語では「対照実験」と訳されます。実験結果を評価するときの基準となる結果を得るための実験です。生物学系のプレゼンでは当然のように省略して「コントロール」という言葉を使いますが、正確には「コントロール実験」と言うべきです。

さらにこの場合やっかいなのが、「コントロール」という言葉は日本語でも市民権を得ている言葉で、「制御」や「規制」といった意味で理解する人が大勢いるということです。説明している本人にとっては親しみがある言葉でも、相手にとってはそうではない、別の意味に理解してしまうかもしれないことを意識して、言葉を選択して使わなければなりません。

次に、プレゼンスライドで使う言葉を統一することの重要性について説明しておきましょう。これは別の記事でもお話しした「プレゼンスライドに一貫性を持たせることで統一感を出す」ことにもつながります。

プレゼンスライドを作るとき、そこで使われる用語を統一することは、デザインの面から見て非常に重要なことです。それが同じものを指し示しているなら、常に同じ言葉を使うように心掛けます。同じ意味だからと言って、なんとなく別の言葉で言い換えることは極力避けなければなりません。同じものや同じことに対して同一の言葉を使い続けることで、スライド全体を通じて統一感を生み出すことができます。

不用意な言い換えを避けることで、余計な誤解を防ぐという効果もあります。専門性の高い内容を説明する場合、同じ意味であっても言葉が違えば、それを知らない人には別のものだと誤解されるリスクがあります。同一のことなのに色々な別の言葉で表現されると、少なくとも理解の妨げになることは間違いありません。動詞や形容詞は複数の言い回しがあるのが普通なのでそれほどではありませんが、名詞に関してはとくに慎重にならなければなりません。プレゼンスライドを作りながら、用語一覧表を作っておくのもよいでしょう。

例えば、新たに開発した装置のことをスライド内で「遺伝子検査装置」と呼称したとしましょう。それを次のページで「遺伝子”解析”装置」と呼んだり、「”DNA”検査装置」「遺伝子検査”デバイス”」と呼んだりすると、それが同じものを指しているのか別のものなのか、あいまいになってしまって、見ている人を混乱させることになります。言葉選びには慎重にならないといけないと同時に、一度決めたら極力、その言葉を使い続けたいところです。

言葉を大切にするというのは、文章を書くときの基本中の基本ですが、プレゼンスライドではさらにそのことに注意深くなる必要があります。なぜなら、プレゼンスライドに文字を書く場合、基本的に長文を書くことを避け、ワンフレーズで言い切る、キーワードのみ記述する、といった表現方法をとることが多いため、長文に比べて、一つの言葉の重みがより増してくるからです。その言葉に込められた意味が正しく伝わらなければ、スライド全体の理解に大きな悪影響を及ぼすことになります。プレゼンスライドを作るとき、何の考えもなしに言葉を選んで使ってはいけません。



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