13年ぶりに水道を開けてみる。
ひょんなことから、築58年の空き家を借りた。
海岸まで徒歩2分。しかし部屋から海が見えるわけではない。
広い庭。しかし庭木は管理を嫌った元オーナーがあらかた切り倒し、橙と柿の木だけが寄り添ってそびえ立つばかり。
車が数台も入りそうなガレージ。しかしその屋根はトタンであったがゆえに潮風と雨にあえなく腐食し、ところどころに空がのぞく。
ともにもかくにも、ここで、暮らしの実験を始めてみるしかない。
はっきり言って金はない。仕事も期限付きで2年半後にはもれなく無職。
何ができるかわからない。というより、他にできそうなことがない。偶然性に身を投げ出すよりほかは。ただひたすらに、「してみる」を積み重ねてみる。
市の担当課に連絡を入れ、水道を開栓したい旨を伝えた。
駆けつけてくれた職員いわく、この場所で水道が使われるのは13年ぶりだと言う。
などと脅されてビクビクしていたが、問題はその前にあった。
バルブが経年劣化で壊れて(というよりは崩れかけて)いて、どうやっても元栓を捻ることができない。
しかし、やはり、餅は餅屋。市の水道課職員はプロである。水道メーターも一時取り外し、様々工夫をこらしてなんとか、水道を開けることができた。
そして、水道管は破裂しなかった。
ところが、この一見なにか良くわからない黄色い機械。どうも風呂用の湯沸かしのようなのだが、ここにどんどんと水が送り込まれている音がする。とぷん。とぷん。
一体この機械が今も使えるのかどうかも分からないし、水が溜まっていくのが正常なのかどうかも分からない。とにかく慌てて近所の設備屋に電話をするが、あいにく数日は家を開けていて対応できないとのこと。
水漏れなど万一に備え、苦労して開いた元栓を元通りに締め、問題は先送り。今日が終わった。
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