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「お掃除屋さんは見た!家の裏側はミステリー」第8話〜H様宅〜
本日のお客様はH様。
H様は会社を数社、経営されていらっしゃいます。
H様の会社のフロアクリーニングを行った際、
「別荘のお掃除にも来てくれる?」
ハウスクリーニングのご相談を受けました。
ご住所を伺うと、ちょっと遠いけれど高速を使えば可能な距離。
「喜んでお伺いします!」
「では、詳細は秘書に聞いてください」
作業終了後、秘書の方とお打ち合わせをして、別荘の鍵をお預かりしました。
「お掃除ついでに温泉に宿泊してから帰ろうか〜」
そんなことをパートさんと話しながら帰宅。
そして、子どもの学校が休みの週末。
プチ旅行を兼ねて、H様の別荘クリーニングへ。
仕事が終わる間、子どもは宿泊するホテルの保育室にお願いして、アクティビティを体験しながら待っていてもらいました。
H様の別荘は、前面は海で裏側は山という自然に囲まれたロケーションの良い場所に建っています。
「さすが社長さんね!」
はしゃぐパートさんを落ち着かせ、駐車場から玄関周りの掃き掃除をし、室内へ。
別荘は年に数回しか使わないとお聞きしていましたが、お部屋はパッと見キレイな状態です。
窓を開けて換気をしながら、ご報告のためお掃除前の室内写真を撮りました。
今回は、お部屋のホコリ取りや拭き掃除など簡易クリーニング。
でも、水アカがついた水道蛇口をピカピカに磨いたり、玄関のエントランスに生えた苔を高圧洗浄機で洗い流したり、目についたところもサービスでお掃除。
いろいろやって、パートさんと2人で3時間ほどで別荘全体のクリーニングを終了しました。
作業終了後のお部屋の写真もパチリ。
忙しくて立ち会えなかったH様に、ビフォーアフター写真をメールでお送りする約束なのです。
窓やドアの戸締りを確認し、お掃除道具を車に積んでホテルに戻ろうと思ったその時。
黒くて大きい外車がサーっと走ってきて、駐車場に止まりました。
(H様かな?)
ご挨拶しようと待っていると、車から出てきたのは見知らぬ女性。
大きなサングラスをかけ青いボディコンを着た、モデルのような方です。
私たちを一瞥して別荘の方へ歩いて行き、玄関の鍵をガチャガチャしています。
「こんにちは。お掃除の者ですが、こちらの別荘に御用でしょうか?」
「私はHの妻よ!鍵を変えたの?あの人がいないか見にきたの!」
「ただいま室内クリーニングを終えたところですが、他にはどなたもいらっしゃいませんよ?」
「鍵をよこしなさい!」
「申し訳ありませんが、お客様よりお預りした鍵ですので確認させていただきます」
H様の携帯電話へかけてもお出にならず、緊急時の連絡先にと伺っていたご自宅の電話番号へおかけしました。
「はい、Hでございます」
女性の方が電話口に出ました。
状況をお伝えすると……
「Hの妻は私ですが」
電話に出た女性が静かな声で言われます。
(では、こちらにいらっしゃる方は一体……?)
「きっと夫の愛人でしょう。放っておいてどうぞお帰りください」
(愛人?ドラマみたい!)
内心ドキドキでしたが、
「確認が取れないため、私達は失礼いたします」
青い服の女性にそれだけ伝え、パートさんの腕を取り車に乗ってサーっと別荘を後にしました。
バックミラーで見えたのは、玄関ドアをヒール靴で蹴っている女性の姿。
それを見て怖くなったり……切なくなったり。
(H社長、罪作りだなぁ)
なんて思いながらホテルへ到着。
子どもと合流し、チェックイン後ホテル内のプールや周辺の施設を楽しみ、パートさんも一緒に1泊して帰りました。
翌日、事務所に戻った私は、H様への報告書を作成中、あることに気がつきます。
お掃除中の別荘には、私とパートさんの二人しかいなかったはずですが……
デジカメで撮った写真の一枚に、何か人のようなものが写っています。
(レンズに指でもかぶっていたのかな?)
デジカメのデータをパソコンに移し、写真を拡大してみると……
室内から続く廊下に、あの青い服を着た女性がうっすら写っていたのです。
(え?何で?怖い!)
玄関に入った後、内鍵をかけたので人が入ってこれるはずはありません。
窓がある部屋もパートさんがずっといてお掃除していたので、誰か入ってきたら気がつくはず。
背筋がゾーっとした私は、一旦パソコンを閉じました。
暖かいお茶を飲んで気持ちを休め、再び報告書の作成へ。
H様へは他の写真を添付して、お掃除のビフォーアフターをご報告。
仕上がりを喜んでいただきましたが…内心、複雑。
それからH様の別荘のお掃除は遠方を理由にお断りして、オフィスクリーニングだけお受けしたのでした。
後日談。
霊能力者の知人に、青い服の女性が写っている写真を見てもらったところ、生き霊とのこと。
女性が心穏やかに生きられることを祈りつつ、その写真データは消去しました。
今でも青い服を見ると思い出してゾワっとすることがあります。
H様のことを想いすぎた女性と、冷静すぎる奥様のことを。
最後までお読みいただき、ありがとうございます🍀
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