「お掃除屋さんは見た!家の裏側はミステリー」第6話〜F様〜
本日のお客様はF様。
F様はあるお店の経営者です。F様のご自宅のエアコンクリーニングの仕上がりにご満足いただき、店舗のエアコンクリーニングも担当することになりました。
F様のお店にお見積りに伺うと、カウンターと座敷のある和風バーっぽい雰囲気。
店内には、天井に埋め込まれた四方向の業務用エアコンが2台、裏の事務所には家庭用のエアコンが1台設置されていました。
店舗クリーニングは夜中に行うことが多いのですが、F様のお店は夜営業のため朝7時〜午後2時の間でクリーニングを終えてほしいとのご希望。
(2人でもいけそうだけど、余裕を持って3人工で計算しよう)
エアコンクリーニングのお見積りを出し、後日お掃除仲間と3人で伺いました。
F様立ち合いの元、エアコンの動作確認を行い、ブレーカーの位置を教えていただき作業開始!
F様のお店は天井が高いので、2mの脚立を用意してきました。でも、安全のため脚立の一番上の天板に乗って作業してはいけないことになっています。
身長の低い私は2mの脚立を使っても天井まで届きそうにないので、お掃除仲間が分解し、私は外した部品を洗浄しようと役割分担。
事務所のシャワールームをお借りして、エアコンの部品を洗っていると……
私と同年代のお掃除仲間が外した部品を持ってきて、小声で言いました。
「このお店……ハプニングバーだぞ」
そんな名前のバーを聞いたのは初めて。
「会員制のバーだと聞いていますよ?」
「やっぱり!ハプニングバーだ!!」
「それは置いといて、今は作業を進めましょう」
クリーニングに関係のないことは「見ない・言わない・聞かない」
それがプロのお掃除屋さんとしてのマナーだと思っています。
しかし、エアコンの部品を洗い終え、店内に戻った私は見てはいけないものを見てしまいます。
天埋エアコンを洗う時、飛び散る水しぶきで濡れることがないよう、座敷や備品をブルーシートやビニールなどで養生していたのですが、それを片付けようと思ったら……
座敷の壁にセクシーな衣装がいくつもかけられているではありませんか。
(バーだよね?接客するお店じゃないよね?)
ちょっと疑問に思いましたが、作業に集中しようと立ち上がった時、座敷の仕切りの向こうにはお布団セットが置かれているのが目に入ります。
(酔っぱらった人用?スタッフの休憩用?)
元来、好奇心旺盛なものでいろいろと疑問は湧きましたが、作業を優先。
業務用エアコンクリーニングに慣れている仲間のおかげで、予定より1時間早く全工程を終えることができました。
F様に終了のご連絡をし、お店に到着するまで店舗入り口で待機。
「俺も会員登録する!」
お掃除仲間のひとりが壁面に貼られていた【入会案内】を見て言いました。
その人は飲み歩くのが大好きな独身貴族。
どうぞご自由に〜と思いましたが、
「会員の紹介が必要って書いてあるから、登録できるかF様に聞いてみては?」
そんなやり取りをしている内にF様が到着。
エアコンの動作確認をしていただくと、
「とても涼しくて爽やかないい風!君に頼んで良かったよ。ありがとう!」
大満足していただき、ニコニコ笑顔でお会計。
その時、すかさずお掃除仲間がF様に入会について聞いてきました。
「今、男性会員は満員で……
でも女性を1人誘ってきたらOKですよ!」
(なんか嫌な予感……)
「じゃあ、ラヴィさんも一緒に入会しよう!」
(やっぱりきた〜!!)
案の定、私を誘ってきたお掃除仲間。
その時の私は独身とは言え、子どもがいるシンママです。
(あやしげなお店には、仕事以外で出入りしませんからっ!)
「私は夜9時には寝ちゃうので〜」
さらっと笑顔で断りました。
その半年後。
別の仕事でF様のお店の前を通りましたが、お店の看板は消えていました。
ハプニングバーは、風営法的にギリギリなお店のようなので、またどこか違う場所で名前を変えて営業しているかもしれません。
座敷のあるバーはアヤシイ。
社会の裏の仕組みを、またひとつ学んだお掃除現場でした。
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