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寄稿詩人の紹介④ ~有門萌子~

週に二度、詩誌ラ・ヴァーグに詩を寄稿している詩人を、一人ずつ、一問一答形式(10の質問)で紹介しています。

今回は、有門萌子さんです。

それでは、有門さんへの10の質問をどうぞ。


             * * *  



1)あなたはどうして「詩」を書いているのですか?

この質問に一番悩みました。たぶんそれがわかったときに詩を書かなくてもよくなるのかもしれません。


3)詩を普段読まない人に、詩集をお勧めするとしたら?

詩を普段読まないその人が、詩集に手を伸ばしてみようと思ったときの感覚が気になります。なにか変化があったのか、求めたいものがあるのか、なんとなくなのか、その内容によってすすめる詩集を変えると思います。
といいつつ、とくにおすすめはしないかもしれません。その人の抱えている理由に添うものが自ずと目に留まることと思います。


4)詩集以外でのあなたの愛読書は? 好きな理由も教えてください。

小説、絵本、画集、写真集、雑誌 など

5)最も好きなことば・座右の銘は?

「人間的・宇宙的にひらかれたもの」


6)子どもの頃、何になりたかったですか?

ひたすらセーラームーンになりたい園児でした。
そのあとは助産師さん。


7)最近のマイブームは?

子育て:マイブームと呼ぶにふさわしいものでもありませんが、マイブームにせざるを得ない現状もあり、寝ても覚めてもそのことばかりという点ではマイブームを通り越してマイそのもの。親であることに終わりはないかもしれないけれど、お風呂に入れたり一緒に砂場で遊んだりすることはいつかは過ぎ去るときがくる期限付きの生活だと思うと、うまくいかないことも多々ありますがそうした全部をひっくるめて。


8)ご自身の代表作・自信作の詩を1つ読ませてください!(リンクも可)

「産痛」

Moeko Arikado|有門萌子 on Instagram: "第33回伊東静雄賞奨励賞を受賞しました。 ⁡ -——————— ⁡ あまりの痛みに息を忘れていると 「あかちゃんに酸素を送るように」 といわれ、むりやり口をあけて 吸い込んでは吐く おどろくほど丸くふくらんだ腹から あなたが出てこようとしている せまい産道に頭蓋をねじ込み あなたが世界をひらこうとしている ⁡ この自然の意志が痛い あなたが外に出ようとする力が わたしが送り出そうとする力が 痛みと時間が外にひらかれていく わたしの意志ではどうにもならなくて ただひたすら呼吸するしかない わたしが痛いとき きっとあなたも痛い あなたが痛いとき きっとわたしも痛い それはたぶん今だけじゃなくて これから先も ⁡ この痛みに名前をつけないでほしい 罪も罰も付け加えないでほしい ほかの誰も入ってはこれない この痛みは ただの痛み いのちの痛み それだけでいい ひとつのいのちが ひとつのいのちと 触れあうために伸ばされたやわらかな灯 つながっていくあたらしい道 この痛みの先にひらかれたところで わたしはわたしに出会い あなたはあなたに出会う ⁡ 痛みは痛みのままとして 息を吐いてそして吸って 出会えたわたしたちは まぶしい世界に喉をふるわせ 声をあげて泣く ⁡ ⁡ 「産痛」 -——————— ⁡ ⁡ このたび第三十三回伊東静雄賞奨励賞に選んでいただきました。 ⁡ はじめての応募で佳作50篇に選んでいただけただけでも嬉しかったので、伊東静雄賞のご担当者さまからお電話をいただいた時はとても驚きました。 ⁡ 選考では例年、公平を期すため 作者名、年齢、性別が伏せられているそうです。 ただそこに書かれているものを読む、 自分で詩を読むときにも 可能な限りそうでありたいです。 ⁡ 奨励賞と副賞の重みを受け止めて これからも書いていこうと思います。 ⁡ 年末にまたこの産痛を迎える予定なので とても大きな励みになりました。 ⁡ 本当にありがとうございます。 ⁡ ⁡ (詩作品全文掲載のご承諾をいただいております) ⁡ #詩 #詩書き #詩が好きな人と繋がりたい #ポエム #詩人 #詩書きさんと繋がりたい #poetrylovers #japanesepoetry #poestagram #子育て #2児ママ #兄妹ママ #3人目妊娠中 #妊娠9ヶ月 #妊娠出産 #陣痛 #伊東静雄 #伊東静雄賞" 73 Likes, 8 Comments - Moeko Arikado|有門萌子 (@moe_minomikoto) o www.instagram.com

9)本誌でどんな詩を書きたいですか?また、これから本詩誌をどんな詩誌にしていきたいですか?
10)そのほか、ご自由にどうぞ!

これまでひとりで書いては消し、書いては消し、また書いてはインターネットにUPしたり商業誌等へ投稿してみたりという孤独な2年間を過ごしてきましたが、3年目にして「詩誌」への参加という機会をいただき個人的に新しい幕開けをじわじわ感じています。「詩誌」なる存在を知らなかったわけではなく、たびたび入手してはたのしく眺めていましたがいざ自分が参加するとなると「ししとは…」と動物園にいってライオンでも眺めてみたくなるのでした。

詩を書きはじめてから、生活のなかに詩の時間があることがうれしくて、慌ただしい毎日のなかに(ときどき影が薄くなりながらも)詩と向かいあって居られればそれでよく、そのことは詩誌に参加したとしてこれからも変わらないのだろうけれどそれでもどうして一匹狼ならぬ一匹の(ライオンを眺める)ヒトが詩誌『ラ・ヴァーグ』に参加したいと思ったのかというと、それはまさしくこの詩誌のテーマの沼に陥ったからなのでした。

"女であること"
"男であること"

"どうしてヒトの胎児は子宮のなかで
肉体的にふたつの性別どちらかに分かれるのか"

"女性性と男性性"

肉体的・精神的・社会的に分化しているもの。わたしは肉体的には女性の身体を持ち、結婚・妊娠・出産を経たけれど「女とは」「女性性とは」「男とは」「男性性とは」という問いに目の醒めるような答えを今のところ持ちあわせておりません。けれどおそらくできることがあるとするなら「自分とは」を問いつづけることで、個に基づくその狭い道の先にひとりのヒトとしての詩に触れることができるかもしれないという期待と祈りと動物的な勘も含めた気持ちからLa Vagueといううねりに乗じました。

詩を書く人があつまって、そこにあつまる言葉があって、そこにあつまる詩があって、そうしてどんな景色が見えるのか。視線をやった先ではいつも水平線が太陽と月を見送っては受け入れていて、そんな星にいまひとつの生き物として命をもって存在しているということを胸に留めて書いていきたいです。

              * * *

以上、いかがでしたでしょうか。この先も、詩誌に寄稿する詩人をお一人ずつ紹介していきます。
次回の更新もお楽しみに。

 

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