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名刺代わりの小説10選

私の好きな小説10選とそれらを選んだ理由を紹介します。私の人格形成に大きく寄与した、思い入れのある小説です。

小説10選:選んだ基準と背景

以前 X(Twitter)で #名刺がわりの小説10選 というタグで、10作を紹介しました。

選んだ基準は、単に「面白かった」だけでなく、「読んでよかった」「この本を読んだから今の自分がある」「強く印象に残っている」という点を重視しました。そのためか、30代前半までの感受性が強い人格形成期に読んだ小説が中心です。また、私が好む小説の傾向として、「知的好奇心が刺激される」「社会性が強く、勉強になる」「実話ベース」であり、その方面の小説が多いです。

小説10選の紹介

10選は以下のとおりです。私自身の読書経験をベースに、選んだ理由を付記しています。なお、順序に深い意味はありません。

ワイルド・スワン(ユン・チアン)

中国の文化大革命の時期を中心にした、祖母・母・作者の3世代の自伝的小説です。読んでいて、衝撃を受ける回数・度合いが最も大きかった小説の一つです。実話ベースで、描写がしつこいくらい具体的だったことが印象に残っていて、「事実は小説よりも奇なり」がぴったり当てはまります。私は実話ベースの小説が好きですが、その起点となりました。

坂の上の雲(司馬遼太郎)

日露戦争の戦況の変遷や、当時の日本を描いた歴史小説です。司馬遼太郎の小説は、史実に忠実なのかという点では議論がありますが、そこを割り引いても「考えるきっかけ」「勉強するきっかけ」を最も多く与えてくれた小説です。特に「日本」という国、日本人としてのアイデンティティについて意識させられました。

三国志(吉川英治)

私はどんな人物に惹かれるのだろう?と自問することがありましたが、本書を読んで「諸葛孔明」がその答えに近いと認識しました。頭が良い人の戦略・知恵が事態を大きく動かす話が好きなのです。また話の概要は幼少期から知ってたのに、読んだのは社会人になってからで、「もっと早く読んでおけば良かった」と最も強く思った小説です。

落日燃ゆ(城山三郎)

平和志向の文官でありながら東京裁判でA級戦犯として処刑された広田弘毅(元首相・外相)の伝記的な小説です。私は大学生のある時期までほとんど読書習慣がありませんでした。本書を読んで、読書の面白さ、読書を通じて学ぶことの必要性を認識し、私を読書好き人間に転換させてくれた小説です。

白い巨塔(山崎豊子)

大学病院を舞台にした権力闘争や医療過誤裁判を描いた小説です。私は純文学よりも社会派小説を好んで読む傾向があり、山崎豊子の社会派小説はいくつか読んできましたが、本書はその代表格の一つです。社会派小説を通じて、教科書的なノンフィクションからは読み取れない現実社会の理不尽さや人間模様を学べることを認識しました。

砂のクロニクル(船戸与一)

イランを舞台にしたクルド人独立蜂起をテーマにした冒険小説です。冒険小説という分野を最初に知ったのが本書で、これをきっかけに、海外の僻地に関心を持つようになり、旅行でも僻地を好んで訪れるようになりました。まだ本書の舞台にイランは未踏の地なのでいつか行きたいです。

白夜行(東野圭吾)

謎をかかえた2人の少年・少女を軸にしたミステリーです。私は数え切れないほどミステリーを読んできましたが、最も寝食を忘れて没頭できた本です。私が好きなミステリーの特徴として、複雑で巧妙なトリックよりも、文学性や社会性とのミックスで、小説の世界が持つ独特の「怪しさ」が巧妙に描かれている作品が好みですが、その方向づけとなった小説です。

蒲生邸事件(宮部みゆき)

受験生が2.26事件の時代にタイムスリップする話です。SF・歴史・ミステリー・恋愛など、多様な要素を含む贅沢な小説ですが、決して無理をしている印象はなく、各要素が上手く融合されています。主人公の少年がタイムスリップをする要素などが、幼少期によく読んだ「ドラえもん」の世界観に似ていて、私の知的好奇心のベースの部分がくすぐられました。

深夜特急(沢木耕太郎)

東アジアから欧州までの貧乏旅行記で、日本を代表する紀行小説です。本書に刺激されてバックパッカーになった人が多いようですが、私は逆でした。多くの国に旅行に行った後で、本書を読みました。私のような旅好きが読んでも、改めて「旅の面白さ」について深く考えさせてくれる小説で、「自分は旅好きで良かった」と救われる思いがしました。

フェルマーの最終定理(サイモン・シン)

数学界最大の難問の一つとされたフェルマーの最終定理が証明されるまでの過程を描いたノンフィクション小説です。ストーリーがしっかりしていて、背景の人物描写も面白いため、数学の予備知識がなくても十分楽しめます。私も研究開発職として、教科書や専門書とは異なる「気楽な科学系の読書」の有用性、面白さを再認識しました。

・・・以上です。個人的な思い入れが強く反映されていますが、特に、「三国志」「坂の上の雲」「ワイルド・スワン」「落日燃ゆ」「深夜特急」あたりは、多くの人にとって、「一生に一度は読むべき本」と言えると思います。

気になる小説があれば読んでみてください。

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