第93回アカデミー賞徹底予想
今年もこの季節がやってきました。そう、アカデミー賞の季節です。
今年はコロナ禍の影響で、例年より約2ヶ月遅れの開催になりましたが、延期による応募資格拡大を経ても、作品不足の影響をモロに受けて、めちゃくちゃ小粒なラインナップになってしまっていて、早速やる気を3割ぐらい削がれてますが、昨年と同じ様に、今回も作品賞ノミネート作品は映画祭やら試写会やら海外の配信サービスやらで全作観た上で、基本は予想メソッドに沿いつつ、たまに私情に流されるぐらいのバランスで全部門予想をして行きたいと思いますよ。
そして今年からは、各部門からそれぞれ本命と対抗を挙げていこうと思います。これは、「最終的な予想は外しちゃったけど、僕は対抗には予想していたよ!」って保険をかける為なんかじゃないんだからね...!
最終的な予想は筆者のTwitterで上げるはずなんで、そっちで見て頂ければ幸いです。
じゃあ、まずは技術部門から行きます。
用語集
・ゴールデングローブ賞 - GG
・英国アカデミー賞 - BAFTA
・クリティックス・チョイス・アワード (放送映画批評家協会賞) - CC
・全米製作者組合賞 - PGA
・全米俳優組合賞 - SAG
・オーストラリア・アカデミー賞 - AACTA
・インディペンデント・スピリット賞 - IS
衣装デザイン賞
ノミネート
・アレクサンドラ・バーン -『EMMA エマ』
・アン・ロス -『マ・レイニーのブラックボトム』: BAFTA、CC、CDG
・トリッシュ・サマーヴィル -『Mank/マンク』
・ビナ・ダイヘレル -『ムーラン』: CDG
・マッシモ・カンティーニ・パリーニ -『Pinocchio』
※全米衣装デザイナー組合賞 - CDG
まずは比較的予想しやすい部門から行くとしよう。最有力は、89歳の巨匠アン・ロスが、1920年代の音楽業界に生きる者たちの空気感を再現し、前哨戦を快走している『マ・レイニーのブラックボトム』であろう。技術賞において重要になる3賞(BAFTA、CC、各組合賞)を制覇しており、ヴィオラ・デイヴィスとマ・レイニーの体格の違いを感じさせず、体つきからヴィオラにマ・レイニーが憑依している様に見せてしまう衣装の妙は、見た誰しもが感心してしまう所だろう。
だが、その『マ・レイニー』にも弱点がある。『マ・レイニー』は、所謂会話が中心になる密室劇であり、基本的な登場人物は、マ・レイニー、バンド、マネージャー、マ・レイニーの恋人・親族の9人に絞られており、大量のエキストラが登場する場面も、序盤にある2つのコンサート場面と、密室劇の間に挟まるスタジオ外での場面ぐらいしか無く、当然、密室劇が中心になるフェーズ80分は、主要登場人物の衣装が変わることは無い。その点で、衣装のバリエーションという面で弱く感じられる可能性もある。
そこで、浮上してくるのが『EMMA エマ』だと予想する。デザインは、『エリザベス』シリーズ、『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』などで、これまでも幾度となくオスカーに受賞・ノミネートされている英国歴史劇モノの名手アレクサンドラ・バーンが担当しており、恐らく今回も、衣装の手数が多い作品になっているだろう。手数・バリエーションの面で言うと、数百、数千もの業界人が転々と動き回る1930~40年代のハリウッドを描き出した『Mank/マンク』にも票が集まるとも予測できるが、いかんせん白黒映画なので、『マ・レイニー』や『EMMA エマ』に見られるような、豪華絢爛な色彩の衣装が見られない点で弱いだろう。
ただ、その欠点を補う程、『マ・レイニー』が前哨戦を勝ち進めているので、ここの受賞は盤石と言えるだろう。
本命:アン・ロス -『マ・レイニーのブラックボトム』
対抗:アレクサンドラ・バーン -『EMMA エマ』
メイクアップ&ヘアスタイリング賞
ノミネート
・マリース・ランガン、ローラ・アレン、クラウディア・ストルツ -『EMMA エマ』
・エリン・クルーガー・メカシュ、パトリシア・ディーハニー、マシュー・W・マングル -『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』
・セルジオ・ロペス=リヴェラ、ミア・ニール、ジャミカ・ウィルソン -『マ・レイニーのブラックボトム』: BAFTA、CC、MUAH(2)
・ジジ・ウィリアムズ、キンバリー・スピテリ、コリーン・ラバフ -『Mank/マンク』
・ダリア・コッリ、マーク・クーリエ、フランチェスコ・ペゴレッティ -『Pinocchio』: MUAH
※全米メイクアップアーティスト&ヘアスタイリスト組合賞 - MUAH
今年は、『ウィンストン・チャーチル』、『バイス』、『スキャンダル』の様な、特殊メイクで実在の人物に変身させる系の作品がノミネートされていないため、インパクトに欠けるというのが正直な所だ。予想については、前述の衣装デザイン賞と同じ様に、『マ・レイニーのブラックボトム』の受賞が盤石であると見て良いだろう。主に、マ・レイニーを演じたヴィオラ・デイヴィスのメイクアップが評価されている、というかそこしか無いと思うが、恐らく実際の本人より誇張されたメイクアップなのだが、あのふてぶてしさすら漂わす厚化粧が、マ・レイニーが白人優勢社会の中でどう尊厳を守って来たかが表されていると言える様な、作品のメッセージの根幹にあるメイクアップなので、これも評価せざるを得ないのだろう。前哨戦の戦歴も、技術賞主要3賞を制覇しており、受賞に向かってまっしぐらとしか言いようが無い。
強いて対抗を挙げるなら、エイミー・アダムスとグレン・クローズという2大オスカー獲れない女優を、アメリカの「ホワイトトラッシュ」に変身させて見せた『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』になると思うが、そもそも本編の評価が大爆散してしまっている作品だし、MUAHの特殊メイク部門で『Pinocchio』に負けやがったし、その『Pinocchio』も獲りそうに無いので、『マ・レイニー』に実質的な一本化をしても差し支えないだろう。
本命:セルジオ・ロペス=リヴェラ、ミア・ニール、ジャミカ・ウィルソン -『マ・レイニーのブラックボトム』
対抗:エリン・クルーガー・メカシュ、パトリシア・ディーハニー、マシュー・W・マングル -『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』
視覚効果賞
ノミネート
・マット・スローン、ジュヌヴィエーヴ・カマイユリ、マット・エヴリット、ブライアン・コックス -『ラブ&モンスターズ』
・マシュー・キャスミール、クリストファー・ローレン、マックス・ソロモン、デヴィッド・ワトキンス -『ミッドナイト・スカイ』: VES(2)
・ショーン・アンドリュー・ファーデン、アンダース・ラングランズ、セス・モーリー、スティーブン・イングラム -『ムーラン』: VES
・ニック・デイヴィス、グレッグ・フィッシャー、ベン・ジョーンズ、サンティアゴ・コロモ・マルティネス -『ゴリラのアイヴァン』: VES
・アンドリュー・ジャクソン、デヴィッド・リー、アンドリュー・ロックリー、スコット・R・フィッシャー -『TENET テネット』: BAFTA、CC
※全米視覚効果協会賞 - VES
まず大前提として、アカデミー賞会員はグリーンバックをドカドカ使う様なド派手な視覚効果より、作品の中であくまで補助的に使われている視覚効果を好む傾向にある。今回『TENET テネット』がノミネートされているクリストファー・ノーランは過去『インセプション』、『インターステラー』で2度視覚効果賞を受賞しているが、それは、VFXを多用しつつも、出来る限り実物を使用したり、錯覚を利用した演出で派手に見せたりと、CGI技術と本物志向の両立を成功させているからこそ評価されている。だからこそ、暴力的なまでの予算をつぎ込んだVFX映像で成立している『インフィニティ・ウォー』や『レディ・プレイヤー1』に、宇宙船の窓から見える景色をスクリーン投影で演出している『ファースト・マン』が勝てたのだ。
その観点から言うと、今年はCGIと本物の両立真打ノーランの『TENET テネット』が最有力と言わざるを得ないだろう。巡行と逆行が混在するどらっぎーな世界を完全に具現化したうえで、さらに飛行機まで建物に追突させちゃってるんだからそら獲るだろ。そして、コロナ禍で世界中の劇場が未曽有の大打撃を受けたなか、スクリーンでの公開に舵を切った映画館の救世主としても評価が集まるのは当然と言えるだろう。
しかし、完全に受賞確定とも言い切れない。主要3賞の一角を担うVESでは『ミッドナイト・スカイ』が『TENET テネット』の枠を奪い受賞したのだ。とはいえ、VESはド派手VFXを評価する側の賞で、アカデミー賞の地味志向とは別種類の賞だと考えて差し支えないし、『ミッドナイト・スカイ』はどちらかというとド派手VFX側の作品だと思うので、そこまで影響は無いのかも知れない。
ちなみに、毎年決まった様に入ってくる『動物モーションキャプチャー枠』として今年も『ゴリラのアイヴァン』が入っており、動物枠もそこそこ強い枠ではあるので大穴として受賞する可能性があるが、恐らく誰も観てねえだろこの映画。
本命:アンドリュー・ジャクソン、デヴィッド・リー、アンドリュー・ロックリー、スコット・R・フィッシャー -『TENET テネット』
対抗:マシュー・キャスミール、クリストファー・ローレン、マックス・ソロモン、デヴィッド・ワトキンス -『ミッドナイト・スカイ』
音響賞
ノミネート
・ウォーレン・ショー、マイケル・ミンクラー、ボー・ボーダーズ、デヴィッド・ワイマン -『グレイハウンド』: MPSE
・レン・クライス、ジェレミー・モロド、デヴィッド・パーカー、ネイサン・ナンス、ドリュー・クニン -『Mank/マンク』
・オリヴァー・ターニー、マイク・プレストウッド・スミス、ウィリアム・ミラー、ジョン・プリチェット -『この茫漠たる荒野で』
・レン・クライス、コヤ・エリオット、デヴィッド・パーカー -『ソウルフル・ワールド』: CAS、MPSE
・ニコラス・ベッカー、ジェイミー・バクシュト、ミシェル・クートレンク、カルロス・コルテス、フィリップ・ブラド -『サウンド・オブ・メタル』: BAFTA、CAS
※映画音響協会賞 - CAS
※映画音響編集者賞 - MPSE
例年までは、毎年録音賞と音響編集賞の予想に悩み、毎回「どっちでもいいだろんなもん」と悪態をつく体たらくであったが、統合されて予想が楽になり、非常に晴れやかな気持ちでこの文章を書いている。
今年は『サウンド・オブ・メタル』でしょう。突発性難聴により全ての音が後退する感覚や人工内耳の暴力的な機械音の不快感など、音が変わるということの恐怖を観客に体験させる音響で、実質的に音が1つの作品のメインになっているし、さらに、イヤホンで聞くと映画への没入性と主人公への感情移入が増す音響という点で、配信で聴くことに意味がある音響として、配信映画の歴史の文脈でも評価されるのではないだろうか。
対抗としては『ソウルフル・ワールド』が挙げられる。この作品も音楽が主題の1つであって、ある意味、音がメインの作品とも言えるだろう。アニメーション映画は映像の柔軟性がある分、音響の技術力が際立つ上、微妙に性質の違う映画音響の賞であるCASとMPSEを制覇したため、こっちが受賞する可能性も十分あり得る。
とはいえ、やっぱり素人目でも凄いと思うのは『サウンド・オブ・メタル』の方ではないだろうか。映画音響関係者の協会賞であるCASと、そうではない賞であるBAFTAの2冠は、誰しもにインパクトを与えうる射程を持った音響であるという証拠なのではないだろうか。
本命:ニコラス・ベッカー、ジェイミー・バクシュト、ミシェル・クートレンク、カルロス・コルテス、フィリップ・ブラド -『サウンド・オブ・メタル』
対抗:レン・クライス、コヤ・エリオット、デヴィッド・パーカー -『ソウルフル・ワールド』
美術賞
ノミネート
・ピーター・フランシス、キャシー・フェザーストーン -『ファーザー』
・マーク・リッカー、 カレン・オハラ、ダイアナ・スロートン -『マ・レイニーのブラックボトム』
・ドナルド・グラハム・バート、ジャン・パスカル -『Mank/マンク』: BAFTA、CC、ADG
・デヴィッド・クランク、エリザベス・キーナン -『この茫漠たる荒野で』
・ネイサン・クロウリー、キャシー・ルーカス -『TENET テネット』: ADG
※全米美術監督組合賞 - ADG
最有力は、1930~40年代黄金期のハリウッドの情景を再現した『Mank/マンク』になるだろう。前哨戦でもほぼ独走状態に入っており、今年のコロナ禍によるこじんまりとしたノミネートの中でも、狂騒的に入り組んだ映画スタジオから、静けさのある保養地まで、バリエーションに飛んだ非常にリッチな美術になっており、明度の暗いモノクロ撮影でも映えるデザインも評価を集めるだろう。
対抗は『ファーザー』であると予想したい。ネタバレ防止の為に伏字を使用していくが、分かっちゃったらすまん。○○○の状況下での理解の歪みを、美術の○○で再現するアイデアに脱帽したし、それを大仰でなく、でも決定的に観客にその○○を理解させることが出来る絶妙なバランスの美術設計に驚いた。美術の持つ演出力という点では、他の4作を突き放す衝撃を持っていたため、その衝撃に押されて票を入れる会員も少なくないと考える。
しかし、昨年『パラサイト 半地下の家族』が『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に敗れたように、アカデミー賞会員の傾向として、表層的なクオリティが高いものに票が集まると推測できるため、『Mank/マンク』がそのまま受賞という線が妥当であろう。
本命:ドナルド・グラハム・バート、ジャン・パスカル -『Mank/マンク』
対抗:ピーター・フランシス、キャシー・フェザーストーン -『ファーザー』
編集賞
ノミネート
・ヨルゴス・ランプリノス -『ファーザー』
・クロエ・ジャオ -『ノマドランド』: IS
・フレデリック・トラヴァル -『プロミシング・ヤング・ウーマン』
・ミッケル・E・G・ニールセン -『サウンド・オブ・メタル』: BAFTA、CC(タイ)
・アラン・バウムガーテン -『シカゴ7裁判』: CC(タイ)、ACE
※全米編集者組合賞 - ACE
今年の技術部門の中で、最も難しいのがこの編集賞だと感じている。基本線は『サウンド・オブ・メタル』対『シカゴ7裁判』の構図である。『サウンド・オブ・メタル』は、序盤と終盤のテンポの違いの緩急の見事さや、音響との組み合わせ方が有力である理由だろう。対して『シカゴ7裁判』は、監督・脚本のアーロン・ソーキン十八番である、情報量でぶん殴るスタイルの一番オーソドックスな編集技法として、安定の評価で有力されているというのが実情であると考えている。
そして、双方ともに欠点がある。『サウンド・オブ・メタル』はBAFTA、CCと重要3賞のうち、2賞を獲得しているが、編集者組合のACEを獲れていないというのが厳しいポイントになるだろう。対して、『シカゴ7裁判』はACEを獲れているものの、結局『ソーシャル・ネットワーク』などの、ソーキン脚本のスピード感に合わせた編集で、目新しさに欠けるということ、『シカゴ7裁判』という作品自体のパワーが弱まってきてしまっていること、そして、編集賞のみの単独受賞は起きにくいことが挙げられるだろう。
そうなった時に、この争いに『ノマドランド』が介入してくる恐れがあると考えている。これは決して、ISを獲ったからという安直な理論では無くて、あの起伏に欠ける物語を、テンポ良く、観客に飽きさせずに楽しませるのは編集の技量の高さであると思うし、作品賞の欄でも後述するが、今年の最多受賞作品が『ノマドランド』になった上で、作品賞が『ノマドランド』以外の作品に渡るとしたら、監督賞、撮影賞、そして編集賞の3部門になる可能性があると考えているからである。
もうぶっちゃけ、この部門に関しては、BAFTAを取るか、ACEを取るか、はたまた作品賞のサプライズに期待してこの2作以外に置くか、個人の判断になる所がある。
僕はサプライズに期待します。
本命:クロエ・ジャオ -『ノマドランド』
対抗:アラン・バウムガーテン -『シカゴ7裁判』
撮影賞
ノミネート
・ショーン・ボビット -『Judas and the Black Messiah』
・エリック・メッサーシュミット -『Mank/マンク』: ASC
・ダリウス・ウォルスキー -『この茫漠たる荒野で』
・ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ -『ノマドランド』: BAFTA、CC、IS
・アラン・バウムガーテン -『シカゴ7裁判』
※全米撮影監督組合賞 - ASC
前哨戦からほとんど『ノマドランド』のジョシュア・ジェームズ・リチャーズが独走の体制に。ぶっちゃけ撮影が良いというより、ロケーションが良いだけだろとか言いたくなっちゃうけど、我慢。BAFTA、CCも獲って、このままASCも獲って受賞の流れかと思いきや、ASCは『Mank/マンク』のエリック・メッサーシュミットに渡るという波乱に。
しかし、ASCがあまりにも前哨戦レースの後半に位置していた為、そこまでのインパクトが無い上、『ノマドランド』の監督賞・撮影賞は堅いという流れが完全に出来上がってしまっていたので、ASCの受賞じゃ崩せないと考えるのが堅実。
本命:ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ -『ノマドランド』
対抗:エリック・メッサーシュミット -『Mank/マンク』
歌曲賞
ノミネート
・「Fight for You」-『Judas and the Black Messiah』
・「Hear My Voice」-『シカゴ7裁判』
・「Husavik」-『ユーロビジョン歌合戦 〜ファイア・サーガ物語〜』
・「Io sì (Seen)」-『これからの人生』: GG
・「Speak Now」 -『あの夜、マイアミで』: CC
『サウンド・オブ・メタル』の「Green」が入ってねぇ時点でやる気失くしてるんですけども、まぁなんともパッとしないっすね。特別秀でている曲が無いので、ここに関してはほぼ消去法だが、前哨戦で受賞歴のある「Io sì」と「Speak Now」の一騎打ちだと思って差し支えないだろう。他の3曲は別に大したことないし。
曲調としては、「Io sì」の方がオスカーの歌曲賞っぽくはあるが、歌詞がイタリア語というハンデが大きい。「Speak Now」の方はオスカー歌曲賞感が無い代わりに、「よほどの名曲でない限りは、複数部門にノミネートされている作品の方が受賞しやすい」という傾向に乗っている上、歌っているレスリー・オドム・Jrが助演男優賞部門の方でノミネートされていることも含めて、かなり有利になっていると感じる。
本命:「Speak Now」-『あの夜、マイアミで』
対抗:「Io sì」-『これからの人生』
作曲賞
ノミネート
・テレンス・ブランチャード -『ザ・ファイブ・ブラッズ』
・トレント・レズナー、アッティカス・ロス -『Mank/マンク』
・エミール・モセリ -『ミナリ』
・ジェームズ・ニュートン・ハワード -『この茫漠たる荒野で』
・トレント・レズナー、アッティカス・ロス、ジョン・バティステ -『ソウルフル・ワールド』: BAFTA、GG、CC
言うこと無し。『ソウルフル・ワールド』が獲ります。
本命:トレント・レズナー、アッティカス・ロス、ジョン・バティステ -『ソウルフル・ワールド』
対抗:エミール・モセリ -『ミナリ』
短編ドキュメンタリー映画賞
ノミネート
・『Colette』
・『A Concerto Is a Conversation』
・『不割席』
・『Hunger Ward』
・『ラターシャに捧ぐ 〜記憶で綴る15年の生涯〜』
下馬評は『A Concerto Is a Conversation』が最有力という形になっているのだが、作品としてのパンチ不足を感じてしまう。そうなると、香港民主化デモを捉えた『不割席』が有力になると見ている。デモを捉えた作品として、昨年BLMが席巻したアメリカと共通する所を見出だせるだろうし、この作品のノミネートにより、中国政府が中国メディアに授賞式の放映を禁じたことへの抗議として投票を集める可能性もあるため、2017年に、大統領令13769号への抗議の意味を込め、『セールスマン』で外国語映画賞にノミネートされていたアスガル・ファルハーディーが授賞式に出席しなかったが、作品が外国語映画賞を受賞した例に近いことが起きるのではないかと予想している。
本命:『不割席』
対抗:『A Concerto Is a Conversation』
短編アニメーション映画賞
ノミネート
・『夢追いウサギ』
・『Genius Loci』
・『愛してるって言っておくね』
・『Opera』
・『Yes-People』
一強。日本でも一時期話題になったし、『愛してるって言っておくね』が獲ります。
本命:『愛してるって言っておくね』
対抗:『夢追いウサギ』
短編実写映画賞
ノミネート
・『Feeling Through』
・『The Letter Room』
・『The Present』- BAFTA
・『隔たる世界の2人』
・『White Eye』
下手したら、今年最も予想が難しいかも知れない賞。下馬評はオスカー・アイザック主演の『The Letter Room』と世界で話題が沸騰している『隔たる世界の2人』ということになっているが、『The Letter Room』に関しては、スターが主演ということで評価が上振れてしまっているきらいがあるし、実際の作品評価はそこまで高くないことから、受賞は厳しいと考える。『隔たる世界の2人』もそこまでズバ抜けて評価が高い訳では無いが、Netflixという大企業の宣伝戦略が功を奏し話題になっているので、BLMの潮流を受け継いだ作品として、そのまま受賞する可能性もある。
しかし、盲ろう者と黒人の青年の交流を描いた『Feeling Through』も勢いをつけている。作品評価が上記の2作に比べて高い上、上記の2作が30分超えの作品なのに対して、本作は18分と時間も短く、YouTubeで一般公開もされているので受賞には申し分ない条件を満たしている。
ここ10年、30分超えの作品が短編実写映画賞を受賞したことが1度も無いのを踏まえると、『Feeling Through』が優勢に思える。BAFTAを獲った『The Present』も無くは無いのだが、あまり注目を集められていないように感じる。
本命:『Feeling Through』
対抗:『隔たる世界の2人』
長編ドキュメンタリー映画賞
ノミネート
・『Collective』
・『ハンディキャップ・キャンプ: 障がい者運動の夜明け』
・『83歳のやさしいスパイ』
・『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』: BAFTA、PGA
・『タイム』
作品賞よりレベルが高いとして知られる長編ドキュメンタリー映画賞。
単純な評価だけで言うと、『Collective』がズバ抜けた評価を得ている。しかし、長編ドキュメンタリー映画賞と国際長編映画賞のWノミネートは、「ルーマニア映画として評価する」か、「ドキュメンタリー映画として評価する」かで分かれる可能性が高い。そうなった場合に、前哨戦で快勝している『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』がそのまま受賞する可能性がある。
しかし、『オクトパスの神秘』の難点で言うと、所謂、社会問題を描いた作品では無いという所だ。現実がフィクションを超える時代、その現実を直で写せるドキュメンタリーで、かわいいタコさんに賞をあげている場合かという意見がどうしても出るだろう。そうなった時に有力候補として挙がってくるのが、『タイム』だ。夫が武装強盗で懲役60年という、明らかに不当な判決を受けた女性が、夫の釈放の為に戦う姿を追った作品で、当然、BLMの文脈でも賞賛されている作品で、時勢を反映する賞という観点で投票を集める可能性が高いだろう。しかし、『タイム』はそもそものドキュメンタリーとしての完成度に疑問を呈されている節があり、完成度という観点で軍配がタコに上がる可能性が高い。
本命:『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』
対抗:『タイム』
長編アニメーション映画賞
ノミネート
・『2分の1の魔法』
・『フェイフェイと月の冒険』
・『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』
・『ソウルフル・ワールド』: BAFTA、GG、CC、PGA、アニー賞
・『ウルフウォーカー』: アニー賞
ひつじのショーン、おさるのジョージと一緒にNHKで見てたわ。懐かしい。
本命:『ソウルフル・ワールド』
対抗:『ウルフウォーカー』
国際長編映画賞
ノミネート
・『アナザーラウンド』(デンマーク): BAFTA
・『少年の君』(香港)
・『Collective』(ルーマニア)
・『皮膚を売った男』(チュニジア)
・『アイダよ、何処へ?』(ボスニア・ヘルツェゴビナ): IS
多くの映画賞が、正真正銘のアメリカ映画『ミナリ』を国際映画部門にぶち込んだ挙句、受賞させやがるので、データがあんま取れてません(半ギレ)。さっきのドキュメンタリー映画賞と重複しちゃうんでサラッと触れますが、作品の単純評価は『Collective』が頭1つ抜けています。でも、最有力は、監督賞にもノミネートされた『アナザーラウンド』でしょう。
しかし、『アナザーラウンド』にも弱点があって、それは、先ほどのオクトパスの神秘: 海の賢者は語る』の様に、社会問題を扱った作品では無いという点です。いや、アル中は社会問題かもしれんけど。
国際長編映画賞というのは、各国の風土や政治が色濃く反映された作品が並ぶから存在意義があるのであって、中年オジさん4人のアル中真っ逆さまコメディはどこの国でも成立する点で(イギリス版を見てみたくもある)、少し弱いという意見も出てくるだろう。
という点で、対抗に上がってくるのが『アイダよ、何処へ?』である。ヴェネツィアのコンペで上映されてから、じわじわと受賞歴を伸ばしてきた伏兵で、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争下で起きた実際の虐殺事件を映画化した作品で、Metacriticで97点という異常な高評価を叩き出している。しかし、作品としてインパクトに欠けるというのも事実で、あのマッツのダンスシーンに太刀打ちできるような迫力に欠けているのが否定できないのだろう。
本命:『アナザーラウンド』(デンマーク)
対抗:『アイダよ、何処へ』(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
脚色賞
ノミネート
・サシャ・バロン・コーエン他 -『続・ボラット』: WGA
・クリストファー・ハンプトン、フロリアン・ゼレール -『ファーザー』: BAFTA
・クロエ・ジャオ -『ノマドランド』: CC
・ケンプ・パワーズ -『あの夜、マイアミで』
・ラミン・バーラニ -『ザ・ホワイトタイガー』
※全米脚本家組合賞 - WGA
恐らく、今年のアカデミー賞で最も混戦状態になっている部門の一つ。
予想するにあたって、便宜上、前哨戦での受賞戦歴に欠ける『あの夜、マイアミで』と『ザ・ホワイトタイガー』は除外します。
まず、残った3作の中で、最も受賞する確率が低いのは『続・ボラット』であろう。主要前哨戦のうち、最も重要であるWGAを獲っているものの、ボラットというシリーズの性質上、展開に即興性が多く、その他の2作と同列に語ることは難しい上、脚本としての評価も難しいだろうから、忌避される可能性が高いだろう。
残るは『ファーザー』と『ノマドランド』なのだが、ここは正直、作品賞をどれに予想したいかによるというのが結論である。
『監督賞+脚本賞or脚色賞=作品賞』という法則をご存じだろうか?見たままの通り、監督賞と脚本関連賞を同時に受賞した作品は、もれなく作品賞も受賞するという法則だ。これは特に2010年代に入ってから確立されたメソッドで、例がいくつか存在する。
例
第83回:『英国王のスピーチ』作品賞、監督賞、脚本賞受賞
第85回:『アルゴ』作品賞、監督賞、脚色賞受賞
第87回:『バードマン』作品賞、監督賞、脚本賞受賞
第92回:『パラサイト』作品賞、監督賞、脚本賞受賞
特に、『英国王のスピーチ』と『バードマン』、『パラサイト』は、本命の対抗に位置していた作品ながら、監督賞と脚本賞のW受賞で一転して作品賞を受賞したというケースの為、この法則の強固さが伝わるだろう。
そして同時に、「作品賞は、監督・脚本・脚色のいずれかを受賞した作品に渡る」というメソッドもある。これは2010年代すべての作品賞に当てはまっているので、例を挙げる必要も無いです。
後述もするが、今年は監督賞が『ノマドランド』のクロエ・ジャオでほぼ確定であり、その状況での作品賞予想に、この法則・メソッドを使用すると、以下のような予想を組み立てられる。
│─監督賞:『ノマドランド』
作品賞:『ノマドランド』 ー│ー脚本賞:『???』
│─脚色賞:『ノマドランド』
│─監督賞:『ノマドランド』
作品賞:『???』ーーーーーー│ー脚本賞:『???』
│─脚色賞:『ファーザー』
つまり、作品賞を『ノマドランド』に推したい場合は、脚色を『ノマドランド』にすれば成立。作品賞を他の作品に推したい場合は、脚色を『ファーザー』に設定したうえで、任意の脚本賞ノミネート作品を選べば成立。
僕は作品賞を『ノマドランド』以外の作品を推す。
本命:クリストファー・ハンプトン、フロリアン・ゼレール -『ファーザー』
対抗:クロエ・ジャオ -『ノマドランド』
脚本賞
ノミネート
・ ウィル・バーソン、シャカ・キング、ケニー・ルーカス、キース・ルーカス -『Judas and the Black Messiah』
・リー・アイザック・チョン -『ミナリ』
・エメラルド・フェンネル -『プロミシング・ヤング・ウーマン』: BAFTA、CC、WGA、IS
・ダリウス・マーダー、エイブラハム・マーダー、デレク・シアンフランス -『サウンド・オブ・メタル』
・アーロン・ソーキン -『シカゴ7裁判』: GG、AACTA
※全米脚本家組合賞 - WGA
まず、超絶完成度の『Mank/マンク』を外して、焦点ブレブレの『Judas and the Black Messiah』に投票した会員は全員ブチブチにするとして。
上のノミネート作品欄を観て分かるように、『プロミシング・ヤング・ウーマン』対『シカゴ7裁判』の構図。両作ともセリフの面白さが突き抜けている脚本で、両方とも受賞はあり得るのだが、正直、アーロン・ソーキンの最高傑作では無いし、アカデミー賞受賞経験もある大ベテランに、今更受賞させる意味に乏しい。それなら、今最も気鋭の女性クリエイターに箔をつけようという意識が働いて、票が集まるのではないだろうか。
ゴールデングローブ賞発表ぐらいの時点では、『プロミシング・ヤング・ウーマン』と『シカゴ7裁判』が互角ぐらいだったのですが、なんだかんだ『シカゴ7裁判』が失速したり、『プロミシング・ヤング・ウーマン』がWGAとBAFTA連取したりで、完全に流れがエメラルド・フェンネルに来てしまった印象。
本命:エメラルド・フェンネル -『プロミシング・ヤング・ウーマン』
対抗:アーロン・ソーキン -『シカゴ7裁判』
先程の、脚色賞予想をよくご覧になったあなたならもうお分かりですよね。
僕の作品賞予想は。
助演男優賞
ノミネート
・サシャ・バロン・コーエン -『シカゴ7裁判』: AACTA
・ダニエル・カルーヤ -『Judas and the Black Messiah』: BAFTA、GG、CC、SAG
・レスリー・オドム・Jr -『あの夜、マイアミで』
・ポール・レイシー -『サウンド・オブ・メタル』: IS
・レイキース・スタンフィールド -『Judas and the Black Messiah』
まず、W主演であるはずの『Judas and the Black Messiah』から、何で2人も助演が出てるんですかねぇ!こういう汚い推し方でノミネート勝ち取って嬉しいんですかねぇ!
てか、ちゃんと助演してたのポール・レイシーしかいないやん。もうええわ。ダニエル・カルーヤだわ。
本命:ダニエル・カルーヤ -『Judas and the Black Messiah』
対抗:ポール・レイシー -『サウンド・オブ・メタル』
助演女優賞
ノミネート
・マリア・バカローヴァ -『続・ボラット』: CC
・グレン・クローズ -『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』
・オリヴィア・コールマン -『ファーザー』: AACTA
・アマンダ・サイフレッド -『Mank/マンク』
・ユン・ヨジョン -『ミナリ』: BAFTA、SAG、IS
かなりレベルが高いですね。主要前哨戦に入る前の前哨戦では、バカローヴァ対ヨジョンの、ヨジョン少し優勢ぐらいの構図だったが、SAGの結果が決め手だったのか、現在はヨジョンが大きく突き放し受賞圏内に。恐らく、マヂカルラブリー漫才論争よろしく、バカローヴァのパフォーマンスは演技なのか論争が各賞の投票者の中であって、最終的に演技では無いと判断されたのか、演技の面でヨジョンに負けてると判断されたのかは分からないが、そこの揺らぎは確実にあっただろう。
ヨジョンの対抗を強いて挙げるなら、バカローヴァではなく、『ファーザー』オリヴィア・コールマンなのではないかと思っている。当然アンソニー・ホプキンスのリードあってこそだが、父親の○○○に対する切実な困惑と憐憫の感情が鋭く伝わってくる、見事な演技が印象に残ってる。
本命:ユン・ヨジョン -『ミナリ』
対抗:オリヴィア・コールマン -『ファーザー』
主演男優賞
ノミネート
・リズ・アーメッド -『サウンド・オブ・メタル』: IS
・チャドウィック・ボーズマン -『マ・レイニーのブラックボトム』: GG、CC、SAG、AACTA
・アンソニー・ホプキンス -『ファーザー』: BAFTA
・ゲイリー・オールドマン -『Mank/マンク』
・スティーヴン・ユァン -『ミナリ』
これまで、俳優部門で死後受賞をしたのは、『ネットワーク』のピーター・フィンチと、『ダークナイト』のヒース・レジャーの2人のみ。双方とも、キャリアのターニングポイント級の伝説の演技を遺して死去した。
そして、恐らく今回3人目の伝説が作られるだろう。
ぶっちゃけ僕はチャドウィック・ボーズマンの芝居が苦手で、如何にも芝居がかったセリフ回しが苦手だった。だけど、遺作になった『マ・レイニーのブラックボトム』では、芝居をする、猫を被るというのを、演じる役柄が意識的に行っているという難役に挑戦していて、僕がボーズマンの演技で苦手だった部分が、意味を持ち出し、戦慄を覚えさせるというとんでもない化学反応を起こしていて、彼の感情の潜伏と爆発の演技に圧倒されてしまった。
遺作であろう無かろうが、絶対に受賞すべき大名演で、実際その通りに、前哨戦受賞の輪が広がって最有力候補に挙がっている状況を本当にうれしく思う。
しかし、ボーズマンも受賞安泰ではない。先日の英国アカデミー賞で主演男優賞に輝いてからというもの、『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスが勢い付いているような気がする。『ファーザー』のホプキンスの演技の凄まじさについて語ると、絶対ネタバレを言うんで、作品内容に触れないように言語化すると、60年に渡る俳優人生の中で積み重ねてきた喜怒哀楽、それぞれの感情の表現を1作に詰め込みながら、自身が演じる役名が"アンソニー"であるように、自身のこれからをある意味投影したような、まさに名演で、これは受賞してもおかしくないと感じてしまった。
しかし、ホプキンスはSNSを駆使して、さらに活性化しているし、役者としてまだまだとんでもない演技を送り出しそうな予感がするが、ボーズマンはラストアクトであるという点を踏まえて、会員はボーズマンに入れるんじゃないかな。いっそタイ受賞して欲しいぐらいだわ。
本命:チャドウィック・ボーズマン -『マ・レイニーのブラックボトム』
対抗:アンソニー・ホプキンス -『ファーザー』
主演女優賞
ノミネート
・アンドラ・デイ -『The United States vs Billie Holiday』: GG
・ヴィオラ・デイヴィス -『マ・レイニーのブラックボトム』: SAG
・ヴァネッサ・カービー -『私というパズル』: ヴェネツィア
・フランシス・マクドーマンド -『ノマドランド』: BAFTA
・キャリー・マリガン -『プロミシング・ヤング・ウーマン』: CC、AACTA、IS
何でこうなるんすか。
俳優賞の前哨戦は基本的に4つあって、GG、CC、SAG、BAFTAとあるんですが、こんなにきれいに分かれるかね。
こればっかりは、消去法で行かせてください。まず、ヴァネッサ・カービーは主要賞で主演女優賞を獲れなかったので除外。続いて、アンドラ・デイもこの4賞の中では一番優先度の低いGGの受賞者なので厳しい。
デイヴィス、マクドーマンド、マリガンの3人が残ったので、1人づつ考えて行く。
ヴィオラ・デイヴィス
残った3人の内だと、1番優先度の高いSAGを受賞しているのは大きい。しかし、『マ・レイニーのブラックボトム』の上映時間94分のうち、約25分ほどの出演で、完璧な主演かと言われれば難しいところ。演技自体も、チャドウィック・ボーズマンに食われてしまっている部分もあり、印象がさほど強くない可能性あり。さらに、『マ・レイニー』は、衣装デザイン・メイク&ヘア・主演男優のフロントランナーで、デイヴィスが受賞すれば、恐らく最多4部門の受賞になるのだが、5部門ノミネートの作品が4部門受賞はかなり難易度が高い上に、作品賞にノミネートされてない作品が主演男優賞・主演女優賞のW受賞をするとも考えづらい。助演女優賞受賞経験者のハンデもあり。
フランシス・マクドーマンド
恐らく、この『ノマドランド』の演技がこれまでの彼女のベストアクトだと思うが、既に主演女優賞を2度受賞しており、さらに、『スリー・ビルボード』での受賞から約3年での再受賞は早すぎると感じる会員も多いだろう。さらに『ノマドランド』は、4部門の最有力候補を持っており、バランスを考えて入れない会員も少なくないだろう。
キャリー・マリガン
上の2人とは違い、アカデミー賞未受賞。しかし、前哨戦の戦歴がCC、AACTA、IS、ドリアンと若干弱い。イギリスの女優だが、『プロミシング・ヤング・ウーマン』の作中では完璧なアメリカ訛りの英語を話しており、アカデミー賞会員の好かれるタイプの演技。
本命:キャリー・マリガン -『プロミシング・ヤング・ウーマン』
対抗:フランシス・マクドーマンド -『ノマドランド』
監督賞
ノミネート
・トマス・ヴィンターベア -『アナザーラウンド』
・デヴィッド・フィンチャー -『Mank/マンク』
・リー・アイザック・チョン -『ミナリ』
・クロエ・ジャオ -『ノマドランド』: BAFTA、GG、CC、DGA、AACTA、IS
・エメラルド・フェンネル -『プロミシング・ヤング・ウーマン』
クロエ・ジャオが獲ります。
本命:クロエ・ジャオ -『ノマドランド』
対抗:エメラルド・フェンネル -『プロミシング・ヤング・ウーマン』
作品賞
ノミネート
・『ファーザー』(ライオンズゲート)
・『Judas and the Black Messiah』(ワーナー・ブラザース)
・『Mank/マンク』(Netflix)
・『ミナリ』(A24)
・『ノマドランド』(サーチライト・ピクチャーズ): BAFTA、GG、CC、PGA、IS
・『プロミシング・ヤング・ウーマン』(フォーカス・フィーチャーズ): AACTA
・『サウンド・オブ・メタル』(Amazon)
・『シカゴ7裁判』(Netflix): SAG
先程、脚色賞の項で見せた図をもう一度ご覧いただきます。
│─監督賞:『ノマドランド』
作品賞:『ノマドランド』 ー│ー脚本賞:『???』
│─脚色賞:『ノマドランド』
│─監督賞:『ノマドランド』
作品賞:『???』ーーーーーー│ー脚本賞:『???』
│─脚色賞:『ファーザー』
恐らく見ている皆さん『???』に何が入るか分かりますよね。
│─監督賞:『ノマドランド』
作品賞:『ノマドランド』 ー│ー脚本賞:『PYW』
│─脚色賞:『ノマドランド』
│─監督賞:『ノマドランド』
作品賞:『PYW』ー│ー脚本賞:『PYW』
│─脚色賞:『ファーザー』
ということで、僕の作品賞予想は
本命:『プロミシング・ヤング・ウーマン』
対抗:『ノマドランド』
僕は、作品賞を『プロミシング・ヤング・ウーマン』に賭けました。
近年は、最有力候補の対抗の作品が受賞しているというロジックの予想でもありますし、勿論、『ノマドランド』が好きじゃないから予想を避けたというのもありますが、近年、どんどん作品賞受賞作がベテラン監督の作品ばっかしになっていく中で、こういう尖っていて、才気走った若い作り手の作品に栄冠を与えて欲しいって思いがあるんです。
コロナ禍というイレギュラーな状況だからこそ、例年とは少し変わった選出をしてみても良いと思うんです。だから、今回僕は私情を込めて、数部門ハズレる覚悟で予想を組み立ててみました。フェンネルとマリガンがそれぞれ登壇するのも見たいけど、揃って登壇するのも見てみたいなぁ。
恐らく、『ノマドランド』になりますが、もし、本当に『プロミシング・ヤング・ウーマン』が作品賞になった時に、自分が『ノマドランド』に賭けているのは嫌だなっていうのが大きいかな?w
最後に、こんな駄文を最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。読んでいただいた皆様も、自分なりの予想をしてみて下さい。何にも得るものは無いけど凄い楽しいですよ?w
あと去年も言った気がするけど、めちゃめちゃ予想ハズレててもなんも言うなよ?今年は勝負に出たんだからな?な?
最後にもう一度、読んでいただいた皆様、誠にありがとうございました!
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