「『文豪とアルケミスト』に見る吉井勇と文豪たち」備忘録
あくまで個人のメモ書きからの書き起こしです。口調や言い回しなどは大意であり、抜け漏れなども多々あることを前提でお読み下さい。
また※や()で補足を入れています。
吉井勇記念館の学芸員さんが開会の挨拶。その後登壇者紹介。
イシイジロウさん、谷口P、細川先生、市長の順で紹介。(以下敬称など省略し、イや谷などと表記)
細川先生は吉井勇の旅行鞄の著者で高知で教鞭をとっていた経歴があり、寺田寅彦の研究もされている。また特務司書でもあるとのこと。
紹介後は市長が司会に。いわく聞いたほうが楽とのこと。特務司書ではない。半分県外から来て驚いた。市長ありがとうの声も。交通費の元は取っていってほしい。
市:図書館にこだわられた
イ:素敵な図書館。木の匂いがすごい。
文アルは文豪がテーマ。それで刀剣乱舞だと本丸のようなところをどこにしようか、となったときにTSUTAYAにいた経歴から図書館にした。
そういえば市長と和尚って響きが似てるよね。
谷:図書館でやるのは初めてのイベントでは。
おかげさまで7周年を迎えられた。文豪をゲームにしたいと思っていたがアイディアがなくイシイさんに相談し、今の文アルの形をイメージできた。
イ:国会図書館のバックグラウンドを見学したことがある。裏では司書の方が本を直している。本を直すことが文学を守ることになる。補修というのはそこからきている。世界中の図書館をググってビジュアルを固めた。
※細川先生はゲーマーとの振り
細:特務司書なのでファン代表としてここにいる気持ち。最近の学生でマイナーな作家を知っているのは特務司書。文学の入口としてとてもよい。勇をえこひいきしている。
※ここからスクリーンのパワポでキャラ紹介。その後、芥川のキービジュアル解説ページに。
谷:「わかりやすく」「親しみやすく」「作品を視覚化」芥川は愛煙家なので煙草は手放せないが煙は出てないようにしている。
※その他スライドにあったものとして
・煙はマントの裏地で表現
・ブローチは作品の歯車から
・ベルトと紐は蜘蛛の糸モチーフ
イ:アニメは煙草NGなのでずっと吸いたいと言ってることになった
谷:実装時にTwitterで紹介イラストを載せるようになったのは吉井勇が最初。有名な文豪からちょっとマイナーな文豪になっていっている。吉井が最初に実装しようと決めていた文豪のラスト。なので軽く紹介しようと作成した。
※スライドが関係図に変わる。幸田露伴はフルネームのみ
谷:前に日本近代文学会秋季大会で出した資料。青線が文アルオリジナルの関係。手紙という機能は存在する手紙をモチーフにしたものが多い。
※独歩→花袋と武者→志賀のゲーム内手紙が出される
イ:すごい、直接怒ればいいのに
谷:今ならLINEで怒る
イ:怒りに行く
細:この頃は当日に手紙が届くため
※交流として文学館タイアップの2024年計画しているところが出される。
・北海道
・北関東
・東京×2
・中京圏
・関西×2
イ:文学館さんへガチだなというのが伝わってきた
谷:コロナが直撃をした。2024年は力を入れていきたい。10周年目指してやっていきたい。
市:キャラクターがガチで作られている
谷:リリース直後は文豪について知らない人が多かった。7年で調べて良くも悪くも自分たちよりも詳しくなった。だから手を抜けない。
ここに来た人たちは吉井勇については自分たちよりも知っているのでは。
イ:足りてないのでは、というところを聞きたい
市:吉井勇は「命短し恋せよ乙女」というので有名だがキャラとしてはどうですか。
細:これだけ出してくれて嬉しい。さくちゃんと可愛がっている。
※さくちゃんは本当に言ってました
細:脇の本は祇園歌集の袖珍本
※と先生が実際の本を取り出し、実際にイシイさんが袖に入れられて撮影タイムに
イ:初版本が値上がりしたらしい。
細:全集を買ってる人がいるのがすごい。読んでいるのが細かい。全集の後ろの方の書簡のところを読んでいる。(会場に全集を持ってる人を聞いて坂口安吾の全集を持ってる方が)あの高い全集を……!
イ:初版本を見るようになった。印が押されているのに感動。印税の印だ!と。
細:祇園歌集には祇園の判子が押されていたり祇園札が貼られている本が多い(と捲って実物を見せてくれる)皆持って祇園へ行っていた。表紙が竹下夢二。同じ頃にゴンドラの唄。文アルもその頃の印象。
イ:太宰を学生あがりのイメージにしている。関係性で年齢を決めている。
谷:師弟の関係とかを含めている。
イ:夏目・森だけは上にしている。そうでないと皆赤ん坊になる。
細:夏目・森だと吉井勇は森(スバル)系統。全キャラで唯一爵位がある。祖父が坂本龍馬と交流があり、助けたりしていた。その縁で高知へ来たのではないか。
「酒好きで女好きでロマンチストな怠け歌人」は谷口さんとイシイさんとで作ったとのこと。
細:間違ってないかなw
家庭を顧みない為に家庭不和になり、不良華族事件が起こった。それで高知へ。ここはどん底から復帰した土地。
文アルは酒ほがひや祇園歌集からきているのではないか。
※ここで資料で配布された勇の歌を鑑賞
細:「君にちかふ」は愛や恋といった単語はないけれどストレートな愛の歌。この辺が吉井勇の歌らしい。お酒以外にも珈琲が好き。
40から50の頃は流離の歌や猪野々の歌。孤独感が強い。流離の歌から再起しての歌になっていく。
市:コロナがあってゲームも色々と影響を受けたと思う。
谷:舞台やアニメで影響が出た。特にアニメは延期が大きかった。それでもイベントをやると人が来る。それで今いろいろ出来た。高知にも初めて来た。遠方から来てくれてありがとうございます。
イ:コロナ前が一番の頑張りどころだった。文劇1と2が評判がよかった、アニメもこれから、というところでコロナ。劇もアニメも苦労をした。アニメは1〜3話を再放送することに。
アニメは4話が勝負だった。アニオリは普通やらないが文学がなくなることを共有したかった。不要不急のタイミングが文アニも文劇もテーマが重なってスタッフが頑張れた。ユーザーとも共有できた。
谷:声優さんも一人一人で。
イ:芥川と太宰が同じブースで喋ってほしい……!
谷:けど声優さんは外で待機して。
イ:ゲームは個別だったからようやく……!と思ったのに。
市:文アルがあってよかったことは。
谷:リリースから7年経った。研究者に聞くと文アルがきっかけで入った学生が多いという。文学に興味を持ってほしいというのが叶った。文学研究に携わる、という当初の思いは達成できたのでは。
市:どういう?
谷:元々純文学が好きだが大衆文学のほうが売れている。純文学が廃れるのでは、という危惧があった。
市:それは二人で?
イ:二人で。文ストがあったので、といいかな、というのはあった。文ストは好きで読んでいるが史実とのギャップがある。尊敬とか。
※文ストは芥川が太宰を尊敬している。
イ:文アルは史実に合わせればそこは棲み分けが出来ると思う。文アルをやめても文学が好きになれば勝ち。
目標は朝ドラ・大河ドラマ。文豪でやってほしい。文アルと文ストでブームを作ってやってほしい。人生の目標は大河ドラマ。
市:ファンの入り方がすごいな、と。書簡などの仕掛けまで考えていたのか。
谷:文学に興味を持ってほしいというのは今も変わらない。書簡は実際に見てもらいたい。一人に絞って研究している人に勝とうとは思っていない。
イ:元々神風動画の社長と知り合いで、文アル好きな社員がいてアニメとかなにかないかと言われてあのOPに繋がった。OPは書簡から調べて取っている。全て許可をもらった。出ていない書簡もある。許可が出てないものもあり、悔しがっていた。ガチの人が入ってきたから更にすごくなった。
(ちょっとオフレコ話)
谷:できあがったOPでスタッフから悲鳴が出た
細:書簡研究は文アルでの醍醐味。探しに行き自分で報告、あぶり出すように文豪のことが浮かびあがる。例えば白秋の林檎から桐の花事件にたどり着く。そうやって司書を動かせる。今回も県外から来られた方が多い。そういう力が文アルにはある。文学にそういう力があるのが嬉しい。例えば文学と温泉、文学と食のように組み合わさった時にさらに魅力が出てくる。
イ:志賀のお孫さんにアニメ化を伝えた時に「文ストはOPがいいですよね」と言われたので「違う意味でこっちもとんでもないですよ」と。関係者・家族と話せるとは思っていなかった。今回も研究者の方と話せている。タイアップでやりたいと思っている。
谷:ネットなどに載っていないことを聞けるのがすごい。今回もそう。それを司書へ伝えるのも我々の役目。
市:これからの展開について。
谷:コロナが収まったので色々新しいことをしたい。タイアップ、新しい試みなど。10周年を目指して、その先もだがまずは10周年を。
イ:文劇もスタッフが気に入っている。役者が出たいコンテンツになった。まだの役者は「出してください」出たことがあると「次の登場はいつか」と。特にしがむしゃが毎回出せ!と。文劇10を目指す。長期計画がコロナで崩れてしまい、部分的になってしまっている現状。
ストーリーもやっていないジャンルをやりたいし、メディアミックスも漫画とかやりたい。小説も、ゲーム内小説読みました?すごかったですよね。これから更に文アルを大きくしていく気持ちがある。
市:熱にびっくりした。行政としても負けずにやっていきたい。文アルのことは知らなかった。吉井勇記念館が20周年を迎えた。それで何かやりたいとなり切手を作りたいと伝えたら持ってこられたのが文アルだった。記念切手も作ります。
質問回答コーナー
メールでの質問→会場からの挙手での質問の順です。
Q.転生する文豪や台詞などの取捨選択やバランスなどを教えてほしい。
谷:関係性重視。興味を持ってもらえるように。ビジュアルは作品をモチーフにしてる。こちらも興味を持ってもらえるようにしてる。
イ:本というか初版本を持ってる。劇で本が武器になる、アンサンブルが持っていったりするのがいい。
市?:詩人が銃であるのは?
谷?:武器は色々と考えた。純文学が刃なのは決まった。銃は一発で心を撃ち抜く。鞭は多くに届く大衆文学。
イ:先程の朗読で実感できた。
Q.研究者として文アルの吉井勇はどうか。
細:ロマンチックな頃の無頼なイメージ。無頼なのに伯爵。先程のように歌を声に出すと良さがわかる。手に取っていただければ嬉しい。愛してる。
Q.文アルなど空前の文豪ブームです。リアルな文化作品などと今後の予定は。
谷:記念館タイアップ(全部網羅したい)先程もあった温泉や食事のコラボ。あとパックツアーとか。
細:お酒のラベルが欲しい。
市:市内に2つの銘酒があります。
イ:文学に恩返しをしたい。だいぶそのフェースになっている。文学館や地元の方と直接イベント出来るようになりたいと思ってた。目標達成している。
市:うちもついていきたい。
Q.吉井勇が転成するときに最初の回想が伊藤左千夫だったのは何故か。
※文豪実装メンテ後にログインすると潜書回想が一つ自動で流れる仕様でした
谷:担当したライターにメールしたけど返ってきていないので正確なところはわからない。白秋や啄木は既に実装されて回想などあったので、新しめの文豪の伊藤左千夫を出したいからではないか。
細:観朝楼歌会に出ている。アララギとして左千夫と茂吉、明星として鉄幹と勇と啄木。その流れではないか。
Q.左千夫と茂吉に対しての繋がりは。
細:茂吉とは縁が深い。奥さん同士が学習院の先輩後輩であった。その後、離婚や別居をした。(※不良華族事件)そういう繋がり。戦後は歌会始を一緒にやっている。長崎に行った時に会いに行っている。その時のやりとりが30通くらい新たに見つかっている。
Q.それぞれが最初に触れた吉井勇先生の作品は何ですか。
谷:文アルの企画のときに初めて吉井勇に触れた。その時のイメージがキャラに反映されているかと。若い頃の作品。
イ:ゴンドラの唄。吉井勇の作品とは知らず、「生きる」という映画で。リメイクでなくなったのは残念。調べたらロマンチックとのギャップ感があった。
細:「生きる」ではゴンドラの唄が2回出てくる。歌いかけがいい。
(質問者の)「吉井勇先生」のフレーズがいい……。
祇園歌集から入ったし恋をした。酒ほがひの夏の思い出がいい。連作の作品で歌で出来た小説。鴎外が絶賛した。
高知に来たときに落差に驚いた。後生が知られていないので調査をした。
イ:昨日聞いた話ですが「生きる」を吉井勇は見られていたのか。見て文章に残している。ゴンドラの唄の当時を思い出して書いている。
※「生きる」は1952年の作品で吉井勇は1960年没。
市:猪野々(※勇が住んでた辺り)が母の出身。吉井勇にあったことあるおじいさんなどが多い。ここに住んでいたんだな、何か出来ないかな、と思った。
細:これが大事。本だけではない。それが文学の醍醐味。
メールでの質問はここまで。以下会場での挙手制だが最初は学芸員さんから。
Q.聞きたいことがありすぎて困る。ゲームをはじめたきっかけはしげはるの「未練は老醜のはじまりだね」という台詞。台詞は誰がチョイスしているのか。
谷:ライターが一人いて、初期(吉井勇)までは自分(和尚)かライターで、重治はライターが担当。ほとんど二人で考えている。
市:この人、中野重治の全集買ってる
Q.書店コラボで勇と高知の関わりを知った。本を読んでキャラとのギャップに驚いた。ここは覚醒で出るのか。
谷:覚醒を楽しみにしていてほしい
細:高知で強くなるのでは。大正は売れる為に詠んでおり自分の歌ではないと言っていた。昭和に入ってからの作品は生活イコール作品となった。著書にそのあたりのことを書いた。
Q.文アルで本を読むようになった。吉井勇さんの作品ももっと読んでいきたい。色んな人と関係があるけど推し?てる関係は。
谷:運営としては平等にいたい。ただ先生から色々と聞いたので反映をお楽しみに。
細:白秋は兄貴分。早稲田の先輩になる。五足の靴も一緒だった。
勇と啄木は悪友。酒と女遊び。啄木は勇をライバルだと日記に書いていたが最終的に見限った。「酒ほがひ評」がある。
他は茂吉。鉄幹、鴎外、荷風が師。
質問者:ありがとうございます。寅彦も実装を!
谷:先生からも推されている。
Q.文アルがきっかけで文学部に進学し、卒論は高村光太郎。スタンディングの選出は?啄木ではないのは何故?
学芸員:いくつか理由があり、パンの会繋がり、酒ほがひの装丁を担当したこと、それと啄木鳥探偵處で啄木を沢山出した為。
細:高村光太郎のどくうつぎの連作は吉井勇の本から影響を受けてである。
Q.東京から朝5時で来た。細川先生が声に出して読んでほしいというのがあった。朗読CDを是非出してほしい。
谷:どんどん出していきたい。
(オフレコ話あり)
Q.吉井勇までの初期実装を選んだ理由は?
谷:関係性が一番。関係性があればマイナーな文豪も出した。逆に有名でも関係性が薄いから除いたりした。
Q.吉井勇はどこから?
谷:パンの会とか交友が広いから早い段階で決まっていた。同門以外の付き合いがある。
イ:雑誌「人間」も。ただ初期は薄い。
細:谷崎との関係性を出してほしい。同級生で谷崎の歌の先生でもある。全集にも早い段階で名前が出てくる。青春物語とか。
Q.文アニから入った。Twitter上で文豪の食事の再現をしていたり金沢のオンライン茶会でおもしろレシピなど出ていた。それらをまとめて出版していただけたら。
谷:おもしろそう。勇の面白い食べ物とか。ごはん帖以外にも。
Q.市長へ。他県の某自治体の者である。ワンオペなのにあれをしろこれをしろ、入場者を増やせなど言われる。即イメージアップにならないが、文学館を拠り所として一層活躍させてほしい。
市:文学は非常に大事。同士としてやってほしい。図書館なども含めて予算や人員の優遇は難しい。猪野々に関して記念館だけでなく全体、人や生活を守ることが必要。吉井勇を感じるものを残していく。
Q.声優さんは中の人の関係を大事にしているという。吉井勇の佐藤拓也さんに決まった決め手は?
谷:声優さんに関して全員が関係あるわけではなく、単独でキャラに合いそうだったから。しがむしゃの関係、立花さんの出身地や古川さんの出身地などは偶然、たまたま。半分くらいは意図したが残りは偶然で「そんなことあるの?!」と驚いている。
Q.吉井勇の作品を読むなら。
細:中公文庫の全歌集。監修をしている。
ここで「ゴンドラの唄」を会場みんなで歌うことに。吉井勇関連だと歌って締めることが定番とのこと。
細:お渡しした歌詞は初出の歌詞なので他のとはちょっと違う。
市:今日の感想を順番に
谷:楽しかったです。こういう何十人かと対面で話すのはやってみたかった。今までは機会が難しかった。高知も初だし感謝。大変貴重な体験だった。
イ:今日はありがとうございました。お客様あっての文アル。一年に一度くらいやりたい。文学に関しては作り手・受け手ではなく仲間だと思っている。
記念館などでの細川先生の解説など
初出を見つけたのは牧水のことを調査するために買った雑誌を読んでいて。目次に載ってない。牧水も早稲田の先輩。
元は勇が埋めた飛梅のところに歌碑があったが、移築するときに一緒に移した。
川沿いのところが勇の散歩道(今は危険だから歩けないっぽい)ここを降りたところに建屋があった。
【追記】記念館のInstagramに川の方へ下ったレポが投稿されました。
もし行かれる方は注意事項をよく読み向かってください。
記念館へ移動する際のバスに谷口さんイシイさんが同乗し(?!)谷口さんに金沢県立図書館を勧められたイシイさんがググって「素敵な図書館、文アルの図書館っぽい」という一幕あり。