1人、生暖かく燻る線で
どこへ散ってゆくのか、その行方を追う視線の行き場がない。何度も季節が移ろいゆく時間の中でどこにへも行けず、灰色の壁にもたれかかりたたずむ。うまく言葉も出せないまま、寂寞の砂漠で砂を手に取っても、指の隙間から溢れて落ちてしまって。
焦点の定まらない視点、
私を私なるものにさせるもの、
水彩絵の具で黄色く集めた花束、
探しても探しても虚空の中で風がただ揺れるだけだ。
途切れていく記憶の断片が、かろうじて私の中で溶けていく。落ちた涙が貴方に落ちて滲んでいく。貴方に染み込んでいった私の雫が貴方と一体になれる気がした。
生暖かい風が寂しさを埋めていく。灯るオレンジを見つめ、指の感触をまた取り戻す。
生暖かい風が頬を撫でる。吐いた煙は線状になって灰色へ溶けてゆく。手元で揺れる白が寂しさに寄り添っている。
喪い。それだけが私の中に残る。どこまでも巡って巡って、まだ知らない場所へと辿り着く。
さよならの方がまだよかったと、燻る白い風を感じて苦味を体いっぱいに吸い込む。明日も。