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はぐれた手紙
ぼくは、好きということが分からなくなりました。
人を、愛するということが分からなくなりました。
ぼくは、あなたが気になっています。どうしようもなく気になっていて、どんな時も、あなたの笑顔が浮かびます。あなたの声が聞こえます。頭の中にいるんです。何度も妄想するくらい、あなたのことが、気になっています。
あの時、何かが外れました。
街が寝静まって、灯りもつかない桟橋の上、薄い月明かりの下、あなたはぼくのそばにいて、ぼくの話をただ聞いている。打ち明けちゃってもどうしようもない、言葉ばかりを吐き出している。昔の記憶がグルグルめぐって、次第に胸が苦しくなった。このまま生きてもどうしようもない、自分ばかりを責め続けていて、うまく人生を送れないよなんて考えていた。黙り込んだぼくの隣、あなたは肩を擦り寄せて「不器用だね」。あなたの心が、ぼくの心に触れた気がした。ぼくの一番深いとこ、誰にも見せない秘密の部屋。孤独を重ねる部屋の扉を、あなたはそっとノックした。
ぼくは笑ってごまかした。心を見せるのが怖かった。心に迫るのも怖かった。どうなっちゃうか分からないから、つよくつよく閉じている。想いも言葉にしてこなかった。伝えるのが異様に怖い。たったの2文字で世界が変わる。あなたは友達。ぼくの友達。だけど身体は熱くなって、満たされていく、あなたとの時間で。
寂しい時、あなたがいたらと思った。弱ってる時、あなたが聞いてくれたらと思った。初めて、欲しいと思った。あなたの言葉、あなたの微笑み、あなたの温もり、あなたの時間。欲しいと思えば思うほど、理性で自分を閉じこめる。獣の様な醜い欲望、子どもの様な都合良さで、満ちてはち切れそうな扉を今、開けてしまうのを許してください。
衝動的で、いても立ってもいられない、炎の様に熱くなり、想いを伝えたくてしょうがなくなる。あなたはそう言っていましたね。
これが、「好き」かは分からないけど、確かに言える言葉がある。
あなたといたい。
あなたが欲しい。
心と心でつながりたい。
そばにいてください。
そばにいてください。
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