「けい」(小劇場)演劇界の実態意見交換会 2日目 会話ログ
こちらの記事を読まれていない方は、ご一読いただいてからログをご確認いただけたら嬉しいです。
問題意識や開催理由などが書いてあります。
スペースの録音音声をスタンドエフエムという音声配信アプリで再録音、はじめと終わりのみ編集した記録とともに、話された内容を整理します。
参考部分は以下のように載せていきます。
00ː00~ 話題
話し手 「発言の内容まとめ」
話し手はコミュニティの内側の人か外側の人かを分けて表記しました。
例えば、俳優さんは(内側、俳優)と表記します。
反対に、演劇になじみのない会社員の方がいたとしたら(外側、会社員)とします。
同意などがあり、同じ考えを言っていたら(応じた人数分)表記します。
オガワは(内側、俳優)ですが、区別するために(オガワ)と表記します。
発言については、文脈の補足としてときおり言葉や説明を入れています。
特に参考になった発言は太字にしてあります。
実際の録音を聞かれる方は4時間ありますので、ゆっくりとお聞きください。
22日(火)21時~ 実態意見交換会2日目
2日目 1本目
0:00~ 開始、演劇界の30代の世代について
内側、劇団主宰
「20代は元気があるけど、30代はどうしたらよいか分からない世代が多い気がする」
「40代、50代で内部分裂したり辞めたりして劇団が崩壊」
「プロデュース公演が30代から増えていると思う。劇団では維持できない」
オガワ
「根本宗子さん、川名幸宏さん(2021年に東京夜光劇団化)」
内側、劇団主宰
「集客、コラボなどして十分にできていたが疲れたので離れていた」
「コスパが悪くなった、拘束時間が長くなって体力・精神的にもきつくなった」
5:20~ 予算とギャラ
オガワ
「俳優はギャラ少なめ、スタッフには多めな問題」
「ギャラ配分はどう決めているか」
内側、劇団主宰
「スタッフは一日拘束でどれくらいか決めて、そこから算出」
「俳優には臨機応変に、同じくらいかチケットバックを多く払うようにしていた」
「予算自体をとても抑えていた方だと思う。当時はチケットが安く、一般の人が来やすかったので黒字にはなりやすかった」
オガワ
「チケット料金は何年くらいに上がった印象か」
内側、劇団主宰
「実質引退したのは2000年前。2000年代から上がっている」
「当時は2000円か2500円くらい。予算を組んだうえで客席数と客席単価を計算してそれくらい」
「今は3500円、4000円が普通。観に行きたい若い子は行きにくいし誘いにくい」
「ライブハウスは変わらず2000円代」
「若い子は予算組みが根本的に違う。かけるところにかけてない」
「プロスタッフの相場を知らない」
オガワ
「予算を抑えるときは、全体予算を組んで減らすか、0から計算して収まっている感じか」
内側、劇団主宰
「同時にやる。戯曲を書くとき、どれくらいかかるか把握する」
「画家や照明、造形の人とコラボをしていたときは、個展と一緒にやって、場所代のみを負担していた」
「状況によって自分で作品を出していた」
「活動を復活させてからは劇場にあるものを使った」
オガワ
「そのノウハウはどうやって培ったか」
内側、劇団主宰
「小さい頃から。会社を作る気でいた」
「人件費は置いておくと、一番コストがかかるのは劇場費、稽古場代」
「稽古場をうろうろする時期がある。無料の場所がないと有料の場所に」
14:20~ 法人化、仕事とのバランス
オガワ
「劇団の法人化する、しないのメリットデメリットについて」
内側、劇団主宰
「一般企業の人から仕事を得ようとするとき、当時は信用度がなかった」
「法人化した方が企業とやり取りがしやすかったし、出演依頼・営業などがしやすかった」
「デメリットは手続きが色々面倒」
「会社作るのは自分でできるので、法人化した方が楽な人は楽」
オガワ
「1日目では税務処理、企画書作成が演劇界全体としてまだ弱い実態があると思った」
「法人化する人が増えたら社会的な印象が変わるだろうなと思う」
「しかし、法人化するという選択肢がそもそも出てこないのかも」
内側、劇団主宰
「継続的な会社としての収益がないと難しい」
「(日常的な)他の業務もやりつつ公演を打つというバランス感覚が必要」
「一人企業では別だが、収入がないと社員(劇団員)に給料を支払えない」
「社員を増やして、食わせていくと考えると公演だけでは難しい」
オガワ
「自分は契約社員で働きながら演劇活動をしていくと考えている」
「一人企業としてバランスとりながら、年に一回の公演で十分だと考えている」
「若い人たちは正社員・契約社員にならず、アルバイトをしながら活動する人が多い」
「自分は舞台に出ない方だから収入が安定して、ワークショップなどに参加できている」
「アルバイトしながらだと(金銭的に)キツいし、就活も難しい」
「もし社員になっても舞台に出たい人は、シフトについて悩むだろう」
「社員になるのが良いのか、アルバイトのままでも良いのかどっちだろう」
内側、劇団主宰
「スキルや社会性を身に着けるとしたら会社員の方が良い」
「シフト自由なバイト(居酒屋・コールセンターなど)と、契約社員(事務作業など)とでは、行う業務や職種の幅が出てくる」
オガワ
「療育の仕事をしている。次は事務(簿記)の仕事をしたい」
「自分でできた方が強い」
24:50~ 概要説明
32:30~ “開く”ためには
内側、劇団主宰
「地域に活動を広げるとしたら、俳優が動いた方が良い」
「俳優は決まった作品性がない」
「劇団が入ろうとすると、自身の作品性と闘うことになる」
「地域の人たちと関わることが大切になるので、俳優が地域に入るか、劇団が入るかで関わり方・楽しみ方が変わってくる」
「俳優が、地域でできる何かを見つけた方が良いのかなと思う」
内側、広報
「地域のお客さんに観に来てもらうには、ポスティングから始まる」
「3ヶ月、地域に滞在して制作する。地元住民に受け入れてもらうために、挨拶回りから行っていく」
「その後、ポスティングやポスター掲載をお願いする」
「協力してもらう場所から、お手紙を出してもらったりもする」
「騒音などでクレームをもらったときは一軒ずつ回って意見をうかがう」
「こちらから情報を巻いて待つのではなく、持って行って働きかける」
オガワ
「”閉じている”と感じるか」
内側、広報
「小劇場劇団が公演情報を出すとき、情報が不十分だと思うときがあった」
「『この俳優を知っていますよね』という前提のようなものがある」
「知らない人が気になって観に来る可能性を、考えないで作られているのではないか」
「その視点がある劇団だとできて、視点が浅いところはできていない感じ」
40:30~ “開いている”のイメージ共有
オガワ
「俳優が芝居をするとき、相手や空間に”開く””閉じる”という言葉が使われる」
「”開く”は他に意識が向いていて、外に対して力が働くようになっている」
内側、広報
「開いた意識を持つAさんと、閉じた意識を持つBさんがいるとする」
「Bさんは『いつも観に来てくれる人たち』をターゲットにしている」
「Aさんは、ドイツに関連する作品をするとき『ドイツ語を勉強している人』や『海外に興味がある人』が観に来るかもしれないと考え、広報する感じかな」
「ホロコーストについて扱った、劇団民藝+てがみ座のレストラン『ドイツ亭』は軒並み新聞に取り上げられていた」
「沖縄に関する、マームとジプシー『Light house』も載っていた」
「開いた視点で社会問題みたいなことを視野に入れた作品は、作品自体が”開いている”と感じる」
「新聞、メディアが取り上げるのは社会問題と向き合っている作品」
「新聞にバリバリ載って知名度を上げたいなら、そのような作品をし続けると良い」
「DULL-COLORED POPさんは毎回タイムリーに社会問題を扱っているので、取り上げやすい」
オガワ
「社会派劇団は調査を重ね、物事ベースで創作する方法が得意」
「それ以外の方法を得意とする団体は、別の”開き方”があるのではないか」
内側、広報
「エンタメ性で勝負しようとすると、映画とぶち当たる(競合になる)」
「映画は作る側が予算をかけながらも、観る側は安く手軽に観れる」
「それとエンタメ性で張り合うのは難しい」
「舞台ならではの表現にフォーカスをあて、強みを出す必要がある」
オガワ
「濱口竜介監督作品『偶然と想像』をミニシアターで観たとき、空間で笑い声が起きるなど、温かな雰囲気があった」
「演劇的な空間だったように思う」
「演劇コミュニティ内で盛り上がっていたのは、作品に演劇的要素があったからなのではないか」
「舞台ならではを突き詰めていき、外にどう持っていくかが大事なのかも」
内側、広報
「舞台ならではを作っていくのは、作家や演出家の仕事かもしれない」
「原作の本から戯曲に表現された意味があるなと感じた作品があった」
「演劇界が”開いている”か”閉じている”かは何とも言えない」
「俳優側、制作側の意識と色々あると思う」
「強いて言うなら、広報やマーケティングの視点と照らし合わせながら、お金の計算ができる、さじ加減のある人がチーム内にいるかどうか」
内側、劇団主宰
「そう思います」
内側、広報
「新聞売り込みの仕事をしていて、掲載ハードルが低いのは地方版」
「伝統芸能系は載りやすいジャンルだけど、載れて地方版がぎりぎり」
「小規模な演劇は切り口を工夫しないと難しい」
内側、劇団主宰
「演劇の情報を載せるもの自体が少なくなっている」
「SNSで拡散と言いながらも、拡散できていない」
「紙→Web関係の情報発信の移行がうまくできなかったから、余計に”閉じている”感覚が戻ってきたのかな」
内側、広報
「自分で広報できるメディアにしか載っていないから”閉じている”と捉えられる」
「他社のメディアに載る努力をしていない」
「しかし、ただのファンタジー・エンタメだと載れない」
内側、劇団主宰
「何が団体として/作品としてのウリなのかを見極めることができない」
「チラシの情報が分からない、情報が少なさすぎる」
「初見は分からないというのが発生している」
「出演者が多すぎてプロフィールが載せられない状況になっているのが余計に難しくしている」
内側、広報
「『何年ぶりの人気作の再演』『出演者は全員劇団員』と書いてあっても、知らない人には響かない」
「それを一番のメイン情報として載せているチラシがあって、ズレていると感じた」
オガワ
「誰をターゲットに制作・公演をするか考えが浮かんでいないのでは」
「ビジネスを学んで、公演はターゲットを設けるものなのかもと思った」
内側、広報
「作る側が『好きなように作らせてくれよ』というのも分かる」
「資本主義のマーケットに出た時点で、他のものと比べられてしまうので、アートがアートでいられない」
「無料公演だったら赤字を抱えながらもターゲット層を気にせずに作れる」
「そうでないのが良い人は、資本主義の上に乗っかる必要がある」
「マーケティング、ターゲットが必要になる」
「最近は全部資本主義に行きつく」
オガワ
「ファンを喜ばせる公演はあっても、新規客層を得るための公演がない」
内側、劇団主宰
「自分の作品に食いつく層を分析できてないんじゃないか」
「アンケートでどの世代に響いているか分析して、次の公演につなげる力が内部の方で弱い」
オガワ
「アンケートに答えるようになった」
「どんな人が来ているかをデータ化し、今後に生かすべきだ」
内側、観劇者
「自分はアンケートよりもツイートをする」
「宣伝を兼ねたショートレビューをツイートした方が劇団に貢献できる」
オガワ
「口コミを広げていくという方向」
地域に向けた活動の検討作業
内側、観劇者
「何をもって”開かれている”というか、今までの意見をまとめてみた」
1.人気になって、たくさんのお客さんに知られている状態
2.色んな人が出たり入ったりして劇団の内側が閉鎖空間にならない状態
3.社会性があり、情報の伝播力があるテーマを扱う舞台にする
4.マーケティングを頑張り、それに則った舞台にする
5.コミュニティ外の人の話題になるPR戦略で、内向きPR文化を変える
「オガワさんの”開かれた”演劇とはどんなことを指しているか」
69:10~ オガワの思う”開かれた”演劇
オガワ
「地域に”開かれた”演劇をしたい」
「イメージは、地域の商店街にある1階のガラス戸の建物。通りすがる人は中の様子を見たりしている。カラカラと入るとアトリエの空間が広がる。オガワを含めた若者・子ども・お年寄りの世代間交流がされている。その交流の手段が演劇」
「公演をするときは、アトリエに来ている一般人が参加する形で行う。アトリエに地域の人を招いてやったり、街の景観を活かした野外公演を行う」
内側、観劇者
「地域とは、具体的にどこの地域か」
オガワ
「埼玉県の春日部市にある武里団地」
「若者が少なく、子どもやお年寄りが多い。そこに若者として入ることで世代間交流を図りたい」
内側、観劇者
「それをワンフレーズでまとめたらどうなるか」
内側、広報
「いつ、どこで、誰が、何をするかサービスを簡潔に説明する企画概要」
※2月に作成していたこちらの企画概要を読み上げました。
もしご興味ありましたら。
71:00~ 企画概要・目的・手段の検討
内側、観劇者
「それを行う目的はどんなものか」
内側、観劇者
「それをワンフレーズでまとめたらどうなるか」
オガワ
「自分の表現方法で地域に貢献していきたいから」
内側、観劇者
「企画概要と目的をまとめてみたが、これであっているか」
オガワ
「あっている」
内側、観劇者
「手段はどんなことを考えているか」
オガワ
「今までの実績は過去に2回、武里団地の地区公民館で朗読を行った」
「武里団地の寄り合い所に出向き、その場の人たちと関わるようなこと」
「自身の出身大学のボランティアサークルと関わる」
内側、観劇者
「これから、演劇業界全体が盛り上がるにはどうすれば良いかという話、地域に向けた活動についての話、どちらの話をしていきたいか」
内側、劇団主宰
「せっかくなら地域についての話をした方が、他の人たちが自分に置き換えて考えられるのではないかなと個人的に思う」
オガワ
「ありがとうございます」
内側、観劇者。劇団主宰
「今のところ、目的も手段も明確だと思う」
82ː30~ 課題はあるのかどうか
内側、観劇者
「課題はありますか」
オガワ
1.複合的な創作活動をしていきたいについて
「他分野の人とつながりがない」
「長期的にコラボしていくことを想定しているが、オガワの創作スタイルと相性の良い人でないと難しいのではないか」
2.公民館や地域団体と一緒にすることについて
「企画書の効果的な書き方が分からない」
「教えてくれる人もいない。もっと色んな人から意見を聞きたいがつながりがない」
3.ボランティア活動などについて
「オガワ自身の実績が少ないので、売り込みにくい」
「地域の景観・文化を大切にした創作をと言っていたものの、実際に野外で行ったり、文化にふれるものは作ったことがない」
「街の雰囲気をくみ取った作品というだけでは”開いた作品”と言えない気がする」
内側、観劇者
「整理すると、3つの手段に対して5つの課題が出てきた」
「どうやって解決していきたいと考えているか」
93:30~ 課題をどう解決するか
オガワ
1.他分野の人とのつながりがないについて
「豊岡アートアクションのような場に行って、直接話を聞いていきたい」
内側、観劇者
「横のつながりのある共同組合を探して、出会う」
「劇作家協会などに向けて、無料で借りれる公民館を案内する」
内側、劇団主宰
「SNSで具体的な地域活動について発信すれば、つながりを作れそう」
「街おこしマップを自分たちで作って、お店の宣伝も兼ねながらマップを配り、つながる」
「友達や知り合いを増やしてから、青年会議所や役所に持っていくなど」
オガワ
「身近な表現者から、つながりを作る」
内側、観劇者
「つながりがないことへの解決策をまとめると4つになった」
オガワ
2.長期的なコラボができていないについて
「身近な人たちと創作ワークショップをしているが、コロナで滞っている」
「チームとしてずっと一緒に動いてくれる人がほしい」
内側、観劇者
「仲間を探す方法として、具体的に思い当たることはありますか」
オガワ
「俳優以外にも、写真や映像を撮る人とつながっている」
「その人たちと気軽にチームで作って実績をつけていくことで、足りない能力を補うようにアポイントをできるのではないか」
内側、観劇者
「仲間作りは難しい」
「2人目の同志を見つけられれば、どんどん仲間を見つけられる」
「人は楽しそうにしている人のところに集まるので、情報発信を工夫する」
内側、劇団主宰
「離れるときは離れるし、増えるときは増える」
「落ち着かないときはあるが、自分だけはブレないようにする」
「それを繰り返すことで、ついてくる人が決まってくる」
内側、観劇者。劇団主宰
「引き抜き、独立などもある」
「自分が動かないと人は動かないし、提案の準備が整っていないと難しい」
オガワ
3.地域行政にリーチして納得させるプレゼンができていない
「どういう風に調べたら資料が出てくるのかが分かっていない」
「演劇を用いて地域に貢献していく事例を探したい」
「探してもHPの活動概要にしか行きつかず、具体的な部分を知れない」
「イメージがつかない」
内側、観劇者
「木下斉(ひとし)の街おこし実践を覗いてみる」
「東洋経済オンライン、日経BP、週刊現代の記事を読んでみる」
2日目 2本目
01ː30~ 続・課題をどう解決するか
内側、観劇者
「プレゼン資料はプレゼン テンプレートで検索すれば出てくる」
「誰が誰にプレゼンするかで様式が全然違うから混乱してしまう」
「実際に春日部市の地域振興課などに提出して通った企画書を入手する」
「地域振興課の人に知ってもらい、仲良くなってもらう」
内側、劇団主宰
「窓口の人と仲良くなったら良い。融通をつけてくれたりする」
「イベントのときに名刺をもって振興課に行くのが一番早い」
「相談としてさらっと面通しして、下地を作る」
オガワ
「そのときにがっちりした企画書を用意しなくても良いのか」
内側、劇団主宰
「良いと思う。単純にざっくりと相談をしてみる」
「公民館でやるなら、担当の一番上の人(館長)に根回しする」
「ルートはそれぞれの市区町村によって違う」
「名刺を作って交換する。連絡先を知る」
「名刺がないとつなげようがない」
オガワ
4.実績が蓄積できていない
「世田谷区の経堂で地域に”開いていく”複合的な創作をしてみる」
内側、観劇者
「良いと思う。それを引っ提げて、春日部市に行けばよいのではないか」
「最初が一番しんどいだけで、後々楽になるはず」
オガワ
5.地域文化を大切にした創作ができていない
「地元は新潟県柏崎市という海に面した街」
「景観を使うとしたら、浜辺で何か野外公演をする」
「柏崎市のシンボルマークに沿ったものを題材にする」
「文化でいうと、狐の夜祭り、民話、綾子舞など、地域にあるお祭りや文化的な物事を活かす」
内側、観劇者
「その目的は何か」
オガワ
「その公演のターゲット層は住んでいる人と、訪れる人」
「どちらの人にも街を知ってもらい、好きになってもらいたい」
内側、観劇者
「それは地域振興課が考えるべき仕事であって、パフォーマーが考えることではない」
「パフォーマーが考えることはそれらの仕事でいかにお客さんにウケるか」
「オガワさんの活動のもとになる行動原理は、地域愛から来ている?」
オガワ
「そうです。武里団地は好きです」
内側、観劇者
「地元に貢献したいという気持ちがあり、パフォーマンスをしているのか」
オガワ、音声が途切れる。
内側、劇団主宰
「地域振興課についてはその通り。(パフォーマーが)気にするなら集客」
「振興課がパフォーマーに求めるのは集客力」
「音楽イベントが地方で開催され、続くのはその影響」
「何人お客さんが来て、いくらお金を使って帰ってもらえるかの導線」
「地域振興課を巻き込みたいのであれば、その導線を整えるべき」
「小さな商店街で”いつもよりお客さんが増えた”というところから始める」
内側、観劇者
「春日部ならではのことを打ち出して、つなげていく」
内側、劇団主宰
「市の情報を調べ続け、取り入れ続ける」
「今持っている情報量が少ないから、どうすれば良いのかが分からないのかも」
「春日部市を一回調べて情報を整理する、なじむことをする」
「どうしたら自分自身をなじませられるかを探る」
内側、観劇者
「アクションプランへの落とし込みができた」
検討結果
28ː40~ 作る側と観る側の視点の違いから、実態を探る
オガワ
「演劇界が抱えている問題を明確にしたい」
「しかし自分の見えている範囲、視点には限りがある」
「他の方々が感じている問題を知っていきたい」
内側、観劇者
「自分の1日目の主張と『内側、劇団主宰2』との主張は対立している」
「この二つに関してどう思うか」
内側、劇団主宰
「私は観劇者派」
「プロとアマの違いがないのが問題」
「照明、音響はプロしか食べられず、淘汰されていく」
「劇団・ユニット・プロデュースは淘汰されずに残る」
「昔は10,000以上の劇団があり、分裂によってまたさらに増える」
「今はより敷居が下がり、知識がなく、お金と場所があれば公演を打ててしまう状況になっている」
「気軽に打てるのも大事だが、先の将来が見えなくなっているし、観客も疲弊してしまう」
内側、観劇者
「内側の人たちは盛り上がってほしいと思っているのだろうか」
内側、劇団主宰
「極論、チケット値段が下がるんだったら、盛り上がってほしい」
「一般客が来ることを希望している」
「自分はやりたいことをやるだけでは自己満であり、お金を取ってはいけないと考える世代」
内側、観劇者
「どんなにマーケターがPRを頑張っても、商品力がないものは売れない」
「そこをなしにして進めるのは都合良い印象を受ける」
「オフ・ブロードウェイの1部、2部のようなヒエラルキーは実際あるのか」
内側、劇団主宰
「明確な線はないんじゃないか」
内側、観劇者
「3部、2部、1部、プレミアのように区分して、安定して面白いものを観たい人は上の区分の劇団にいくようになれば良い」
内側、劇団主宰
「たまに発掘するように下の区分の劇団を観に行く楽しみ方もできる」
「漠然と小劇場、商業、2.5次元のような分かれ方だと思う」
内側、観劇者
「実際、ひいきにしている劇団以外は行きにくい」
内側、劇団主宰
「色々な読みが働く。客席は大半が顔見知り」
「観劇者たちが『面白い』と言っている言葉と、作っている当事者が『面白い』と言うときの言葉の遣い方に違和感がある。個人的に分からない」
内側、観劇者
「『面白さ』が伝わってこない」
「チケットが売れても、買った人のことを覚えていない関係になりがち」
「観劇が趣味の人たちと、作り手はほんのり仲が悪い」
「若者を応援したい気持ちで、推しカツ半分みたいな気持ちでお金を落としているのに、カモ扱いされるのはいやだ」
「作る側は、観る側を対等な立場だと言っているものの、実際はそうではないと感じる」
「作る側は、観る側が『応援したいという気持ちでお金を落としている』ことに気づいて、利用しようとしているのではないかと思うが、どうか」
内側、劇団主宰
「私は今の若い世代の感覚とはかなりズレてはいると思うが」
「演劇人は昔から、お客様に対して人間関係のコミュニケーションが下手な印象」
「『やりがい搾取』という言葉が流行っていた時期があった」
「今は『観客搾取』がひどいと感じる」
「コロナ禍で、2.5次元が好きなお客さんが、俳優の配信を見ているときに『投げ銭をくれないと――』みたいなことを言われ、失望して離れた」
「そんな子を何人も知っている」
「お客さんと友達になろうという感覚はなくても良いが、観に来てくれた人への最低限の礼儀をなくしている」
「カーテンコールやお見送りは時代的にしなきゃいけないものになったけど、誘って来てくれた人には対応をきちんとする」
内側、観劇者
「ブロマイド、ツーショットチェキ、おひねり投げ銭制度、会員制のファンミーティング、生誕祭、イベントへの顔出し出演、アマゾン欲しいものリスト、ファンアイテムの通販、有償noteやブログ、クラウドファンディングで助けを求める、などではないか」
内側、劇団主宰
「そのくらい。昔の物販は台本、パンフレットぐらい。たまにピンバッジ」
「それは『お金を欲しい』ではなく、お客さんに対して『興味があったら』という程度だった」
「そういう物販の品ぞろえになったのは、ライブハウスを真似したのかも」
「今は予算が足りない、ギャラの補填のためという狙いが見えてしまう」
「大義名分で隠してくれれば良いが、いかにもな劇団は失礼なように思う」
「(観客は)払いたいなら払えば良いとは思う」
内側、観劇者
「今はツイキャスやshowroomなどが流行っている」
「パフォーマンスを観てもらいたいのか、自分たちをマネタイズしたいのか分からなくなる」
「観る側としても疲れがたまってくる」
内側、劇団主宰
「個人的には、グッズ販売や動画配信をするよりも『2回観に来て』と言う方が気持ち的に幸せです」
「作る側としてはそっちの方が健全だと思う」
50ː30~ 小劇場がアイドル興行をしつつあるという実態
オガワ
「個人的に、冒頭の対立構造でいうと中立派」
「サッカーはプレミアリーグもあれば、下位リーグの試合もある」
「プロを目指す人もいれば、趣味で続ける人もいる」
「趣味で続ける人たちはたくさんいて良くて、観られなくなったとき、自然と観られるように頑張るのではないか」
内側、観劇者。劇団主宰
「幅広く受け入れる派⇔プロ意識派との間の解決策として、区分する派」
「リーグ制にすることに落ち着いている」
オガワ
「自分もその派閥です」
内側、観劇者
「ファン心理を活用した推しカツを、劇団側がアテにすることはどうか」
オガワ
「商業演劇を観に行く人たちは、それで良いのではないかと思う」
「観客としては推しにお金を注ぐことに幸せを感じるのではないか」
「そのような公演の形があることについてはいやだとは思わない」
内側、観劇者
「一人の観劇者として、好きな人がやっていればそれで良い」
「しかし、良いなと思った俳優の次回公演に行ってげんなりしたことがある」
オガワ
「俳優としては、俳優の仕事をしているだけなので誰も悪くはないと思う」
内側、観劇者
「実際、かろうじて収益化できている劇団はアイドル興行をやっているところだと思う」
「避けるようにしているのはダブルキャスト、スタッフ欄がないところ、イントロダクションがポエムのようになっているところ」
「避けるようにしてからはだいぶ楽になった」
「『あるところで、誰が、何をして、どうなるのか』というストーリーが分かる劇団を観に行くようになった」
「楽屋ネタや、日舞の真似などで観客を温め続ける作品を上演する、クラスターが一部いる」
「何がしたいのか分からないと感じるが、その劇団にも固定客はいる」
「虚構の劇団や大人計画、ナイロン100℃のような過去に”尖っていた”とされる劇団のパロディで終わってしまう」
63ː40~ 情報や金銭の巡りに関する実態
内側、劇団主宰
「今なら今のやり方(尖り方)があるはず」
「気持ちはすごく分かる」
「観る側が求めているものと、作る側のやりたいことが一致していないんだと思う」
「その意味で”閉じている”かなと思う」
「カルチャー好きの人が口コミを広げてくれる時代があった」
「情報が拾いやすかったし、紙媒体もあったが、今はない」
「評論をまとめる媒体、Webサイトがない」
内側、観劇者
「批評空間とジャーナリズムがない」
「どの劇団も応援団しか求めていない」
「否定的な感想を載せたとき、拾われなかったり、変にさらされたりする」
「感想を言うのが怖くなってしまう」
内側、劇団主宰
「好き嫌いを素直に言えなくなってる状況が厳しいし、ないから育たない」
内側、観劇者
「幸いにも金銭面に余裕があり、面白い作品を観れる確率が低くても趣味として続けていけるが、若い人たちはお金がかかって大変だと思う」
内側、劇団主宰
「知り合いの2.5次元舞台が好きな子が、小劇場に好きな俳優が出るとき、お金がかかってつらいと言っていた」
内側、観劇者
「深く小さく自分(劇団・俳優)に集まってくれる人たちからお金を吸い上げる」
「観客として吸い上げられたときの喪失感がある」
内側、劇団主宰
「主宰の立場から考えると、予算の部分の考え方が行き当たりばったりな劇団が多いからそうなっていくのではないか」
内側、観劇者
「はまってしまうと底なし沼」
「知り合いの俳優には『生きていくには仕方がない』と言われたりした」
「小劇場界隈の周辺には沼が広がっていて、一つ間違えると未経験者は足を取られてしまう」
78ː00~ キャスティングに関する実態
内側、劇団主宰
「女の子はどういう俳優像を目指したいか道筋が分からないまま、消耗品として消費されてしまうと感じる」
「事務所に入っても消費される可能性もあるし、どの劇団に入るか、オーディションを受けるかの目標がないからそうなってしまうのでは」
内側、観劇者
「良い俳優は、面白い芝居にコンスタントに出ている俳優」
内側、劇団主宰
「手当たり次第に出たいではなく、自分が出たい舞台が分かる人」
内側、観劇者
「キャスティングはコネクションとオーディションのどちらが比率的に高いか」
内側、劇団主宰
「小劇場はオーディションとコネクションの半々だと思う」
「コネクションというより、知り合い関係で声をかけて募る」
「観に行って気に入った人に声をかける」
内側、観劇者
「キャスティングディレクターは主宰が兼ねることが多いのか」
内側、劇団主宰
「そうだと思う。ワークショップ→本公演の形もある」
「まず、小劇場は台本ができているかどうかで動きが違う」
「台本や企画書がなくてオーディションを開くところもある」
内側、観劇者
「プロデュース公演が増えている弊害で、思い描くキャラクター通りのキャスティングをして、純粋なお芝居の上手さを観られない」
内側、劇団主宰
「プロデュース公演は集客力も頭に入れて考える」
「ノルマにしている場合もある」
「集客力のある俳優をキャスティングする場合もある」
内側、観劇者
「集客力は分かるものか」
内側、劇団主宰
「だいたい分かる。制作さん同士で通じ合ってる場合もある」
「ただ、主宰や作演出、団体側が自分で呼ぶ気概があれば、集客を気にせずキャスティングできると思う」
「好みはあるものの、小劇場はアイドルっぽい人たちがいるわけでもない」
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90ː30~ 良かった観劇の話
230:20~ 雑談
振り返ってみて考えたこと
【2本目について】
劇団側の制作面の考え方(予算組みの方法、キャスティング、物販)から、現在の小劇場興行の在り方が垣間見えた。
その在り方の背景には音楽界のアイドル興行の考え方があり、観る側⇔作る側の関係性において「観る/観られる」ではなく「応援する/される」になっている。
観る側は「お芝居を観たい」が作る側は「応援されたい」と考えている。
”応援される方法として演劇をしている層”が演劇コミュニティ内にあるのではないか。
作る側が「応援してくれるよね」という強い立場をとることもあり、
「応援する/される」のバランスが崩れることで問題が起きる。
アイドル興行を行っている劇団が収益化できているという結果もある。
金銭的に余裕のある観客がファンについているという結果でもあり、未経験者や初心者がアイドル興行を行う劇団にハマると危ういのではないか。
「お芝居をやりたい/お芝居を観たい」「応援してもらいたい/応援したい」など、それぞれが持つ別々のニーズをきちんとすり合わせられる仕組みや導線を設けたら良いのではないか。
(リーグ制区分、ジャーナリズム、Webサイトなど)
互いにすり合わせられない現状が”閉じている”ということではないか。
相手に意識を向け、すり合わせようと働きかける力がないのではないか。
働きかける力を磨くときに必要なのが、マーケティングやPRの視点ではないか。
【1本目について】
2本目での流れにつなげると、
オガワは「演劇を身近な文化にしたい」というニーズを「地域の一般人」とすり合わせるための仕組みや導線を整えようとしていると感じた。
しかし現状では、すり合わせる「地域の一般人側からのニーズ」が分からないため、調査を重ねて実践を行っていくべきだ。
そのすり合わせがきっと、壁をなくして”開いていく”力のひとつなのではないか。
2日目 まとめ
オガワのマイクが不調だったため、2本目はオガワのログがほとんど残っていません…。
2日目は演劇コミュニティ内部での意見交換になった印象です。
当時は後半部の会話をどうまとめるか考えながら聞いていました。
しかし、現在の自分が振り返ってまとめてみると”開く”と”閉じる”の中身につながる内容だったと感じました。
個人的には、この辺りの言葉が良いなと思いました。
「観る側が求めているものと作る側のやりたいことが一致していない」
「パフォーマンスを観てもらいたいのか、自分たちをマネタイズしたいのか分からなくなる」
興行についてのお話と絡めると「やりたいこと」の中身が複雑に思います。
この一連のお話で考えたのは”観る=応援する”とは一概には言えないから、すり合わせが必要なんだということでした。
観客として、僕自身も応援のために観ることもありますが、確かに面白さを求めて観ることもあると思いました。
劇団によってはどちらの気持ちも持って観ることもあるため、こちらも複雑に思います。
また、俳優として客演するときや自身のユニットの活動で宣伝するときは、
応援してほしいという気持ちも混ざっています。
複雑なニーズのすり合わせを行っていくとき、
おそらく、どんな姿勢ですり合わせようとするかが大切な気がしました。
1本目でお話にあがった姿勢がとても参考になります。
これは地域の人たちとすり合わせるための働きかけでした。
また、社会派のテーマを扱った作品を新聞に取り上げてもらおうと、広報に力を入れて、多くの人の目に触れようとすることも働きかけな気がします。
演劇コミュニティの人たちだけでなく、社会の人たちのニーズ(隠された声)にも応えようとしているのではないかと感じました。
3日目に続きます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
リンク集をつくりましたので、もし気になるところがありましたら覗いてみてください。
リンク集
30代でプロデュース公演を行う方々
・根本宗子さん
・川名幸宏さん(2021年に東京夜光劇団化)
社会的なテーマの作品で新聞に掲載された公演と劇団
・劇団民藝+てがみ座さんのレストランドイツ亭
・マームとジプシーさん「Light house」
映像作品でも演劇的な空間が広がったと感じた
濱口竜介監督作品「偶然と想像」
将来的に地域活動の拠点にしたいと考えている
埼玉県春日部市の武里団地
オガワのやりたいことを書いているシート
街おこしの実践の参考に出来そうな木下斉(ひとし)さん
「妖怪」モチーフに、人が翻弄されて人でなくなる作品を描く鬼の居ぬ間に
劇作家、演出家の奥村千里さん
観終わったあと、5分で忘れる喜劇をモットーにする東京にこにこちゃん