過ぎ去りし日から来た男 1/2
夜中に山道を自転車引いて登るって対向車の運転手さんもびっくりしますよね。どうも、円狐(まるこ)です。
前回だったか前々回だったか少しお話しましたが名古屋にある専門学校在学中、授業は落ちこぼれの上に制作課題もみんなの視線を浴びる中、幾度となくけなされ、何かにつけて悪い例にだされ、先生に目をつけられ、もうやる気が失せちゃったのです。
学校より映画館でのバイトの方が居心地良くなってしまい、だんだんと学校とは距離が広まっていきました。
と、共に本当に死にたくなっちゃったのです(あっさり言うな!)。
バイト先には1週間ほど休みをもらい、26年前の9月、ここにはもう僕の居場所はないと友人からもらった自転車で死に場所を求め一旦京都まで行こうと数千円、身分証の保険証、そして2日分くらいの着替えを持ち、夜中に地図も持たず月明かりを頼りに出発しました。
国道沿いを進み、標識だけを頼りに、現代のようにスマートフォンという便利な携帯電話はもちろんなく、今どこにいるのか、何時なのかも不明なまま一旦太平洋側に出ようと南に向かいました。
桑名市を通過、四日市、小学生の頃習ったな、四日市ぜんそく。あの頃はまだ僕がこんな、死に場所を探す旅にでるなんて思いもしなかっただろうな、なんて想い馳せながら工場地帯通過、鈴鹿市にはいり、今ほど猛暑ではなかったにしろ、この時点ででもう全身池にでも落ちたかのようにずぶ濡れでした。
だんだんと雲行きが怪しくなり、少し北西に進路をとり鈴鹿峠に差し掛かった頃には雲は地上に迫るように低く重く広がり、雷鳴か聞こえてきました。山で雷に打たれて死ぬなんてどのくらいの確率なんだろう、それはそれで一瞬だろうし痛みはないのかな、などと思いついたもののそれより何より、鈴鹿峠ではさすがに自転車を漕ぐことはできず引いて登っていきました。通り過ぎる乗用車もだんだんと数が減り往来はトラックのみになり脇道で疲れ果てて休憩していた時のことです。
あたりが一瞬、虫の音も雷鳴もなくなりシーンとなり、代わりに聞こえてきたのはピキーーーンという耳鳴りのような金属音、そしてそれをかき消すかのように1台のトラックがいままでの静寂を切り裂き山道を登ってきました。
この間、わずか数秒。
極め付けはトラックのヘッドライトに照らされた反対車線の脇道に佇む1人の男…。
ちょっと待って! ここでおしまい? タイトルに1/2とついてる時点で気がついてたけれどここで終わらせる? いつの間にか円狐につままれてる! とお嘆きのあなた。
そうですよね、では、また次回におあいしましょう。
円狐(まるこ)