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未だにオーロラ観たことない

ふと通路反対側の窓に目をやる。
溢れんばかりの陽が手前から奥へ次々と機内を射していく。
カウントダウンのようでなんか面白い。
予定より少し早い22時手前。
機体が滑らかに下降を始めた。

アラスカに到着。
別名がThe Last Frontierでありながら、記念すべき(?)最初の滞在地。

空港到着口に降り立つと同時に、纏わりついていた生暖かいサンフランシスコの空気がカラッとした新鮮な風に流されていくのを感じた。

そうそう、こんな感じこんな感じ、とその空気感の違いを見分けられている(気がしている)自分をちょっと誇らしく感じながら待ち合わせ場所へ向かう。





アラスカ、と聞けば何を思い浮かべるだろう。

オーロラみれる?
雪?
イヌイットみたいなのいる?
え、てかどこそれ?
国、ではないよね、、、?
たしかロシアじゃね?
、いやカナダのどっかだったっしょ、、!

となっていたのは紛れもなく4年前の自分。
でも高校3年の夏から始まるアメリカ留学の派遣先としてその名を知ったからそれが合衆国のどこかであることはよく考えれば明白だった。

何も知らず飛び込んだこの土地で多くを経験した。
あえて多くは書き連ねないけれど苦い思い出の方が多い。

話せないのは覚悟してたけどそもそも聞き取ることすらできない英語。
夏場は23時まで沈まず、冬場は11時まで昇らない太陽、不眠気味。
想像以上の価値観の多様性。

そして突然のパンデミック。
何が何だかわからないまま早期帰国した。
出逢った人の9割には直接別れを告げることができなかった。


徐々にそのどうしようもなさに諦めがついていったけど、それからの4年間戻りたい気持ちは消えなかった。文字通りの不完全燃焼。悔しかったのかも。いろんなことが。

これが今、アラスカに戻ってきた理由。


あともう一つ理由が増えたような気がしていて、それは星野道夫さんの影響。
もともと存在は存じ上げていたけど、留学から帰ってくるまで実際に著書を手に取ることはなかった。でも一度手にしてからはなんで今まで読まなかったんだよおーーー!って結構自分を恨むくらいにはどんどんと惹かれていった。今年冬には東京で開催された個展「悠久の時を旅する」にも行った。自分の知らなかったアラスカもそこにはあった。

彼の持つアラスカの自然への眼差しがすっごく魅力的に感じたし、振り返れば変にやみつきになるような風景をもう一度この目に収めたかった、というよりこの足で踏みたかったって感じに近い。
今の自分がもう一度アラスカの大地を踏んだら俺は何を感じるだろう。どう表現するだろう。自分のことなのに他人のことのように、いやそれ以上に予想が付かなかった。

「アラスカに行くのなら人生最後にした方がいい、若いうちに行ってしまうと他の自然が小さく見えてしまうかもしれないから」といったのは誰だったか忘れたけれどそんな言葉もあるらしい。けどもう遅い。もう見ちゃった。知っちゃった。てか人生最後をいつにするとかどうやって決めれんの。

とにかくそんなわけで、アラスカに行くことはずっと前から決めていた。

世界一周の計画を練り始める際に、行きたい国や都市もだけど、同時に周り方を考える必要がある。

東から周るか、西から周るか。

前回の滞在は9-3月。もう冬は十分だ。
日本から世界一周をする時は西周りが定番だけど、夏のアラスカに行きたいって理由だけで東周りを選んだ。


現時点、大雑把だけどこれが「なんでアラスカなの?」の答え。
聞かれたらこれ読んでもらうことにしよーっと。




同じだったのは空気だけじゃない。

まるで観たことのある映画の世界に入り込んだかのような感覚。
この景色知ってるぞ!と思わず指差して叫びたくなるような。

同じ空港。
同じ駐車場。
同じ車。
同じ道路。
同じ店。
同じ交差点。
同じ家。
同じ玄関。
同じ階段。
同じ部屋。
同じベッド。
同じキッチン。
同じテーブル。
同じソファ。


何も変わっちゃいなかった。
何も変わってないことが俺にはとてつもなく有難い事だった。
じゃなきゃきっと、あなたの涙は流れなかった。

そして極僅かでも、一番変わるのは人なんだなと感じた。
だから会う必要があったんだとも感じた。

それらが "同じ" で在り続けていることに本当に気がつけるのは、多くても一度きりしかないんだろう。少なくとも今は。






来てから1週間が経った。
今、その同じソファでこの文章を綴っている。




今回はちゃんと、帰る前にさよならを伝えたいと思う。








きっとまたすぐ帰ってくるけどね!
未だにオーロラ観れてないんだもん!!!
次こそは!!





読んでくださった方、ありがとうございます。
前回も読んでくださった方、ありがとうございます。
備忘録と言いますか、でも未来のためだけではなくて今の自分のためにも頭をほんの少しだけ整理できるように綴っていたりもします。
また書くと思うので良かったら読んでみてください。

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