2022年、仕事と私生活と読んだ本を振り返り
何を書くか
2022年最終日ですね。
今年は転機の多かった1年になりました。
たくさん失敗し、たくさん学び、働く環境を変え、新しいことを始め、そこそこ本を読んできた1年でした。
仕事、仕事以外の活動、本、の観点で2022年を振り替えり、現時点でのsnapshotを取得してみたいと思います。
仕事
昨年末時点ではエンジニアマネージャーとして壁を感じて、難しいなぁみたいなことを考えていました。
結論から言うと、エンジニアマネージャーとしてのキャリアは一旦横に置いて、再度エンジニアとしてのキャリアを歩んでおります。
ここは正直言うとポジティブな意思決定ではないので、あまり細かいことを書いても仕方ないところではあるのですが、エンジニアマネージャーから降り、会社も変えてから4ヶ月ほど経過したところで、結果としてはとても充実した日々を送っております。
エンジニアマネージャーとして試行錯誤して失敗してきた経験も、今エンジニアとして働いている中で、無駄にはなっていないと痛感しております。
現在は教育系スタートアップでSREとしての仕事をしており、毎日Terraformのリファクタリングや環境構築、運用タスクなど行なっております。
それぞれのタスクについて、マネジメントをしていた際の視点を持ちながらセルフコントロールができるので、ROIを考えてどこまで深みに入っていくのか、最優先で考えるべき事業成長への貢献に対して考えたときに適切な力の入れ方はどれくらいなのか、そういった考えを持ちながら仕事ができている実感はあります。
しばらくはSREやデータ基盤系のエンジニアとして働く期間を取ろうと思いますが、その後のキャリアはまだ考えていません。
今の会社が好きなので、自分のバリューが出せる領域、求められるポジションで頑張っていこうという気持ちです。
仕事以外の活動
昨年に引き続き、コミュニティ活動に力を入れていました。
転職したあとはよりコミュニティに力をいれることができ、また、コロナ禍の状況も加味しながらオフラインイベントの復活なども進められたので、コミュニティ的にも充実した1年になりました。
コミュニティとして特筆すべき活動成果としては以下が挙げられます。
オンラインでのカンファレンスイベント実施
関西、東京でのオフラインイベント実施
また、自身が運営しているコミュニティ以外にも、JAWSイベントやAWS Dev Dayへの登壇もでき、趣味登壇にも時間を使えた1年だったなと思います。advent calendarも3本寄稿できました。
特にAWS Dev Dayではあのしょこたんと共演することができました。コミュニティを始めとしたアウトプット活動の集大成といっても過言ではないですね・・
しょこたんの前で発表した資料の詳細は下記に紹介しています。
https://qiita.com/kzk-maeda/items/ec1af1c9be7eb3dcb1c0
読書
本題です。
今年を振り返ると100冊ほどの本に出会うことができました。
(仕事関係:趣味で2:8くらいの比率です)
印象に残った本、誰かにおすすめしたい本について以下に列挙していきます。
上げ始めたら際限が無くなりそうなので、各ジャンルで3冊ずつに制限して紹介します。
技術書
初めてのGo言語 ―他言語プログラマーのためのイディオマティックGo実践ガイド
Goで開発していたのが数年前で、最近のパラダイムに追いつくことと、当時は深く考えていなかった言語仕様を知るために読みました
packageの取り回しなどが過去の記憶から大きく変わっていたのでいい復習になったことと、mem空間共有の仕様など知らずに使っていた詳細な言語仕様を一通りインプットできた気がします
業務で使うことが少ないので使いこなすには時間がかかりそうですが、来年も機会を作って触れていきたいですね
実践Terraform AWSにおけるシステム設計とベストプラクティス
Terraform自体はもう5年くらいの付き合いですが、今回大掛かりなリファクタを主導することになったので改めて体系的に入門するために購入しました(本自体は昔から気になっていたのですが、まだ読んだことなかった)。
Terraformの基本的な知識は復習がてらくらいでさっと読み通したくらいですが、設計についての考え方にも言及があったので、リファクタ後のガイドライン策定に大いに参考にさせてもらいました。
ソフトウェアアーキテクチャの基礎 ―エンジニアリングに基づく体系的アプローチ
今年のO'Reilly本の中で特に発売前の話題性が高かった気がするので、何となく購入してみました。
アーキテクチャ一般の紹介にとどまるかと思っていたのですが、そもそもアーキテクチャとは何か、どういう観点で比較検討すべきなのかといった前提の話から、アーキテクチャをチームで育てていくためのソフトスキルについても言及があり、ソフトウェアエンジニアリングに携わる人に広くおすすめできる本だったと思います。
仕事関係その他
2010年ごろの本で、今なお根強い人気を誇る本だと思います。
システム要件を言語化してステークホルダー間で認識を揃えるために必要な考え方として、「要求」から整理することについて深く言及されている本です。
スタートアップにおいても、チームで開発する上で、「システムへの要求は何か」「そのために必要な要件は何か」「要件を満たせる仕様はどういうものか」という順を追って認識を合わせていく重要性を感じることは多く、そのための思考プロセスを組み立てる際に参考になる本でした。
Who You Are 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる
昨今の会社で「カルチャー」を定義していない会社の方が少ないのでは、と感じるくらい各社「カルチャー」というものについて言及し、採用市場においては差別化を図ろうとしていると思います。
しかし、真に浸透した「カルチャー」と言うのはどのように作られ、維持されるのかについて実例を交えて記述されている本はあまりない印象でした。カルチャーの大切さを説いている本はたくさんあるのですが。
この本は小手先のHowToではなく、自分自身がリーダーとしてどういう立ち居振る舞いを行う必要があるか、それがいかにカルチャーを作っていくのかについて述べられており、マネージャー時代の自分を内省するのにいい教材でした。
エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
冒頭で述べたように、今年はマネージャーから降りる選択をしたのですが、マネージャーから降りて心が少し落ち着いてから、この本を手に取って自分のマネージャーとしての振る舞いを反省することにしました
マネージャーになったとき、何もわからずに何となく仕事をしながら、有名なマネジメント本を読み漁っていたのですが、この本を最初に手に取って、ある程度必要なスキル体系のインデックスを頭に作っておいた方がよかったなと思いました
特に、マネージャーとして厳しい意思決定やコミュニケーションを強いられる場面が多々あったので、そういう際にバイブル的に手元に置いておければ良かったなと思います
しばらくはマネジメントから外れる予定ですが、またいずれ必要になる可能性があるので、再読必至の一冊になりそうです
小説系
ここからは80冊から厳選するのかなり厳しいですが、本当に珠玉だと思った本に絞って紹介します・・
本屋大賞候補作、朝井リョウさんの、マイノリティについて正面から切り込んだ衝撃作です
マイノリティについては理解があるつもりでいる人ほど、読むと自分の認識の甘さにショックを受けて、自分が築いてきた世界観が崩れる感覚を味わえます
ストーリーとして面白いだけでなく、「多様性って何だろう」と深く考えさせられる一冊でした
今年映画化もした、凪良ゆうさんの代表作
世間から見える真実と、当人たちが知っている真実との乖離、その中で好奇の目を向けられながら生きづらい選択を強いられる2人の人生に、心臓が掻き毟られる思いでした
映画では省略されていましたが、最後に梨花が呟く台詞が本当に好きで、エピローグを繰り返し読みました
恩田陸さんの本はこれまで機会がなく手に取ったことが無かったのですが、本屋で見つけて衝動買いしてしまいました
クラシック音楽の厳しい世界と、その中で渦巻く天才たちの常人には見えない苦悩が長大なストーリーの中で緻密に描かれていて、かなり長い本ですが時間を忘れて読み耽りました
音楽の描写を文章に起こすのってすごく難しいと思うのですが、音楽の専門用語を散りばめつつも感性に訴える美しい描写で表現されていたあたり、中々感じられない読後感でした
小説系(ミステリ)
厳選が無理だったのでミステリを別ジャンルにすることでちょっと紹介数増やします
司法修習生でありながら作家として作品を生み出した五十嵐律人さんの本格法律ミステリです
法律を本格的にテーマに据え、無罪と冤罪の違い、無辜の救済など、かなり考えさせられる現代法律の問題を浮き彫りにしつつ、ストーリーとしては2重の裏切りが仕掛けられていて、最後はとても驚かされた一冊です
著者の五十嵐律人さんは森博嗣さんに憧れていることを公言されている、まだ若い作家さんなので、今後S&Mシリーズの法律版のような名作を生み出してくれるのではと勝手に期待しています
去年『六人の嘘つきな大学生』で衝撃の出会いを果たした浅倉秋成さんが今年も話題作を提供してくれました
知らないところで自分に成り済ましたSNSアカウントが炎上(しかも殺人で!)しているという、非常に現代的なテーマで、一度ネガティブな内容が広がってしまうと、社会はいとも簡単に敵になる、ということがリアルに描写されていて、背筋が凍るようなストーリーでした
六人の嘘つきな大学生を読んでから浅倉先生のファンなのですが、本作も大きなどんでん返しと、胸が温かくなる展開があり、魅力をふんだんに詰め込んでくれた一作でした
夕木春央先生は過去にもメフィスト賞を受賞されているので名前は知っていたのですが、作品に触れたのは本作が初めてでした
個人的にクローズドサークルもののミステリって、好きで読みはするのですが、そこまで後を引くほど印象に残ることが少ないのですが、このラストの衝撃は今なお読んだ瞬間の感情が鮮明に思い出されます
イヤミス系が苦手な方にはおすすめできないですが、読後に辛い気持ちになることが快感、という人には全力でおすすめできる一冊です
その他
苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」
森岡毅さんはUSJ関連の本を読んだことがあって割と好きな人だったのですが、たまたま僕が「仕事辛い」と思っていたタイミングと、書店でこの本を見かけたタイミングが重なって、手に取ってみることにしました
会社ではなく職能で選ぶ、とか、なりたい自分から逆算してキャリアを設計する、とか、通常状態の自分だと、読んでも「それはそうだよね」くらいの感想になりそうな内容ですが、まさに仕事で限界を感じていたタイミングで読んだので、異常に心に染みてきた話が多かったです
正直、生存者バイアスがかなりかかっているとは思いますが、それを差し引いても自分が疲れてきた時に拠り所になる本だなと感じました
BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相
シリコンバレーで市場最大規模の事件となった「セラノス」において、著者の独自調査目線で、会社で何が起きていたのかを綴った本
ノンフィクション小説のような読みやすさで、内容がすらすら入ってくる反面、結構えげつないことをやっているので、要所要所でハラハラしながら読み進めました
自身もスタートアップに身を置いているので、事業と顧客に対する誠実さを失ったら終わりだし、会社がそういう空気感になってきたら去らないといけないと強く感じました
ウイルスVSヒト 人類は見えない敵とどのように闘ってきたのか
2020年から今なお猛威を奮っている新型コロナウイルスによるパンデミック下で、改めて正しい知識を身につけておきたいと思い手に取りました
生化学観点からの感染症の紹介から、それぞれの治療のための医学進歩の歴史に触れ、最後には今SNSで騒がれている陰謀論にも言及し、1人の研究者目線で今世界で起きている問題について私見を述べられている一冊でした
行き過ぎた陰謀論に靡くことは流石にないと思いますが、基本的な感染症に対する知識がないと正常な判断ができないんだろうなということを学んだので、引き続き学術的に信頼できる本を手に取って知識をアップデートしていきたいと思います
最後に
2022年は、仕事においては自分のキャリアの中でも最大クラスの挫折を味わい、環境を変えて持ち直し、コミュニティ活動に精を出し、100冊ほどの本に出会った1年でした。
2023年はどんな一年にしていこうか、その抱負はまた改めて残してみたいなと思います。