「マーティン・エデン」
久しぶりのイタリア映画鑑賞。この一筋縄ではいかない青春映画(としても普通に見れる)を観ながら、というか普通に涙腺を弱めながら、イタリア映画の匂い、その底力を感じていた。それはヴィスコンティのような、ロッセリーニのような、デ・シーカのような、アントニオーニのような、フェリーニのような。そうやって何もせずとも頭に浮かぶ名前を思うと、私も結構イタリア映画を観てきたのだなと改めて思う。つまりそういう往年の名画、名監督の伝統の上に、この作品はしっかり立っていると感じた。
不意に挿入されるドキュメンタリーフィルムや、幻想的な展開も魅力的だが、電車で一緒になって共に住むようになった親子や、街中の本屋などの描写がたまらなく魅力的で、作品に強さや命のようなものを吹き込んでいたと思う。
主人公は私が触れるまでもなくその人物を生き切っていて、その肉体表現の素晴らしさに心を掴まれっぱなしだった。
そして、音楽がすべて素晴らしかった。私にしては珍しく(普段はあまり音楽が耳に入ってこない)どの場面もどの曲も心を揺さぶられた。最初にエレナの弾くピアノ。途中で挿入されたポップス。最後の場面はバッハなのか。見返して音楽ももう一度聴きなおしたい。
ジャック・ロンドンの名前は聞いたことがあっても、作品は知らなかった。有名ではあっても文学の正史的なところからは追いやられているような印象は、なるほどこういうところにあったのかと、むしろ追いかけてみたくなる経歴だった。原作も読んで改めて映画を見直したくなった。