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ベルモンド傑作選1「恐怖に襲われた街」

 宣伝文句に「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」だけがベルモンドじゃない!と書いてあるが、確かにそう。そしてそれはフランス映画全般にも言えることだと思う。ヌーヴェルバーグやその後のベッソン等の世代など、フランス映画といえばおしゃれ?難解?アート?みたいなイメージがあるが、実際フランスで動員を集めるのはコメディーだったりする。  個人的にはフランス産コメディーをきちんと系統立てて観たいのだが(向こうでは大スターのルイ・ド・フュネスとか日本ではマイナーだし)、そういう機会もなかなか

    • 「ある画家の数奇な運命」

       とてもよい作品だった。アートに関心がある人間であればなおさら、伝説の芸術家の半生に迫るフィクションということで興味がわく。第二次大戦をはさんで東ドイツと西ドイツ、その世情を知る上でも興味深いし、現代の問題でもある優性思想などにも問題提起をする作品だった。役者さんもいいし、映像も素晴らしいし。  と、基本文句ないのだけど、でも気になることがあった。  主人公二人のラブシーンだ。  裸の二人が抱き合うシーンの多さ。  別にラブシーンやヌードがけしからんというのではもちろん全くな

      • 「スパイの妻」

         久しぶりに混雑した映画館で一席おきを懐かしみながら「スパイの妻」を鑑賞。  多くの評論家が蒼井優の素晴らしさを書いていて、私もそれに異論はないが、個人的には高橋一生の凄さを強調しておきたい。  彼の、何よりも動きの美しさに痺れた。そしてセリフの切れの良さ、得体の知れなさ。私は往年の森雅之を思った。  三船を目指す人は多いだろうが、森雅之を目指す人は少ないと思う。  ぜひこの静かな凄み、姿の美しさ、底の知れなさ、を保っていってほしい。できるならこの凄さを生かせるような役をたく

        • 「鵞鳥湖の夜」

           昔はノワールもの、バイオレンスものも好きでよく見たが、年を取ったらめっきり弱くなった。それでもこれを観ようと思ったのは、スチールの絵に惹かれて。  確かにバイオレンス的場面はあるし、血も流れるしリアリティもある。けれど、かなり抑制された映像で、監督がどこまで見せるかをきちんと意識しているのがわかる。結果、私のようなちょっとそういう場面がつらくなってきた人間にも大丈夫な品の良さがあった。  何より映像の美しさに、それもアジア的な美しさに久しぶりにうっとり。主人公二人のなんとも

          「鴻池朋子 ちゅうがえり」

           基本的に映画でも美術展でも予備知識を入れずに観るようにしているので、鴻池さんのことは全く知らなかった。あるいはどこかで作品をチラ見していたかもしれないけれど、記憶はしていなかった。  なので最初はどういうアーティストさんかわからず、なんとなくぐるぐると(このぐるぐると、は後から思うと結構ポイントである)見ていた。真ん中の滑り台を滑ったあと、彼女の書いたものがいくつかあるのに目を通すうち、これはすごいと思うようになり、おそらくわざとだろうが出口に作品一覧があるのに気づき、それ

          「鴻池朋子 ちゅうがえり」

          「マーティン・エデン」

           久しぶりのイタリア映画鑑賞。この一筋縄ではいかない青春映画(としても普通に見れる)を観ながら、というか普通に涙腺を弱めながら、イタリア映画の匂い、その底力を感じていた。それはヴィスコンティのような、ロッセリーニのような、デ・シーカのような、アントニオーニのような、フェリーニのような。そうやって何もせずとも頭に浮かぶ名前を思うと、私も結構イタリア映画を観てきたのだなと改めて思う。つまりそういう往年の名画、名監督の伝統の上に、この作品はしっかり立っていると感じた。  不意に挿入

          「マーティン・エデン」

          クラシック倶楽部

           NHK-BSPで毎朝5時から放映されている「クラシック倶楽部」をきちんと見始めて3カ月くらいになる。  そもそもクラシック音楽に対する教養はない。ヨーロッパの文化全般が大好きで、映画や美術は割と詳しいほうではないかと自負しているが、クラシック音楽になるとなぜか食指が伸びなかった。普通に有名な曲を聴けばいいなと思うことは思うが、心を揺さぶられる、もっと聴きたい、もっと知りたい、というような経験を持ったことがなかった。  それが、あるきっかけで毎朝この番組を見るようになった。次

          クラシック倶楽部