新聞・雑誌掲載短歌(2021年)

クラスター 人も凶器になるものか酒場へ行った人のさびしさ
短歌研究詠草(1月)高野公彦 選 佳作

特別にだれに止められるでもなく心がGoToしないわたくし
読売歌壇(2021年1月11日)栗木京子 選 (2020年12月9日登録分)

製品の多国籍化の進みおり組み立てるのは日本人なれど
短歌研究詠草(2月)高野公彦 選 佳作

ひとしきりもみしだかれたトトロには君の疲れた体温がある
うたう★クラブ(2月)斉藤斎藤 選 ★佳作

暖房をつければ徐々にすわれゆく私の肌の水の分子は
乾きたる唇にあて吹きこめばトランペットはぷわーと鳴りぬ
乾きたる口の中より出で来しか唾抜きからはつばの出で来ぬ
短歌研究詠草(3月)小池 光 選 佳作

コロナ禍の真中に上げてくれた時給20円分よけい働く
第12回 角川全国短歌大賞 馬場あき子 選 秀逸

ハゲタカに持って行かれた退職金コロナバブルで無事取り戻す
少しずつ紙くずを買うそして売るその瞬間に生きている俺
取引が終わる0時の5分前金のチャートを見いる虚しさ
短歌研究詠草(5月)米川千嘉子 選 佳作

わたくしのメインバンクの行員が債権買えとしきりにせまる
短歌研究詠草(6月)米川千嘉子 選 佳作

ざっくりと枝打ちされし柿の木の幹から芽吹く春の来たれば
短歌研究詠草(7月)永田和宏 選 佳作

何人の命を救う量だろう宇宙に運ばれて行く酸素
短歌研究詠草(8月)永田和宏 選 佳作

フリューゲルホルンの音は寂しくて君がかわりに頬を濡らした
ウイントン・マルサリスという名を出せば君はいつでも饒舌になる
短歌研究詠草(9月)水原紫苑 選 佳作

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