「妄想コレクター」そう、妄想を集める人に。。。
妄想コレクター
HISASHI楽曲は、尖ったもののように見えるものが多いけれど、この楽曲しかり、テーマ性というか、何を書こうとしているのかがわかるものも多く、関心事の幅の広さだったり、深さだったりに驚かされることが多い。ポップだったり、エッジが立ちすぎて、言葉の理解から進めなければならないものから、今回の楽曲のようにテーマ性があって、うったえたいことが割と見えやすいマイナー調楽曲もある。本人は、ポップな方が作っている時に楽しいらしいが、マイナー調の楽曲のニーズがあることもわかっているようで、ここにHISASHIのコンポーザーとしての真骨頂が存在すると考える人も多いのではないか。私も比較的、マイナー調楽曲の方が好みだなと思う。
HISASHI楽曲は毎度何かしらかの点で、驚かされるポイントがあるのだが、この楽曲において挙げるとすれば、間奏にニュースアンウンスが入っていることだ。男性、女性それぞれが交互に異なるニュースを読んでいくのだが、最後の一文だけ、2人のアナウンサーの口から放たれるワードが一緒であるという演出。
「容疑者は17歳の少年でした」
一時、「17歳」というワードが世間を賑わせたことがあったが、そういう社会情勢を受けた上で、HISASHIなりの解釈をした上でのアウトプットだったのかもしれない。それを、あえて歌詞の中に盛り込むというよりは、楽曲の世界観の中で、至極自然に演出的な役割として入れ込んでくるあたり、HISASHIの持つセンスであると感じる。完全に批判的にはしないが、どうすればよかったのかをリスナーにも問うような仕掛けを楽曲の中に施してくる。目の前の事象に目を閉じて、見て見ぬふりしている状態もできるのに、あえて自らそこに足を踏み入れてみて、自身も追体験をしてみたりしながら、言いたいことは伝えていく。音楽という形で。
そして、誰かとともに探っていくことができるのが音楽を通じてできることだと思うので、GLAYの場合はバンドという形で一つの楽曲として、世の中に発信している。
HISASHIが持つ問題意識のようなものやそこへの広さ・深さはもちろん脱帽ものだが、それをミュージシャンとして、エンターテインメントに昇華させている点が何より秀逸であると感じる。「妄想コレクター」においても、歌詞の中でストレートに意見・意向を伝えることができるのに、あえてその形を取らず、一貫してミュージシャンの立場としてできることを考えている。
だからこそ、歌詞がメロディの中に食い込んでピタッとハマる感じは、HISASHI楽曲の特筆すべき点の一つであると言える。
何度口にしても、これほどまでにバラバラな言葉をワンフレーズにまとめ込み、かつ口が覚えていて、とにかく気づくと口ずさんでしまう。中毒性が半端ない。