つないだその指を離さないで

Satellite of love

12年前はこうだった。これは、「Satellite of love」が収録されたアルバム『GLAY』を引っさげてのツアーのファイナル公演の映像。この時は、もちろん、この日が最高潮。歌い終えたTERUが、ドライアイスの中に静かに吸い込まれていく神々しさは鮮明に記憶している。映像で見てもなかなかの鳥肌ものだが、会場でみて、聴いた時に感じる歌の圧力のようなものは、その場から人の動きを奪うほどだ。

ここから、「Satellite of love」(以下:サテライト)は進化を続ける。バンドとしての魅力が存分に詰まっている楽曲だが、結局TERUの歌に圧倒されるのが、この楽曲の特徴。というか、運命、宿命(さだめ)。ある意味でのTERUの喉の調子のバロメーターとしての役目すらあるのではないかというくらい、TERUの喉の調子一つで、この楽曲の完成度が変わる。
サテライトの進化の変遷を順を追ってみていきたいくらい。というか、それがまとまった円盤が出たら買う!

歴代サテライトとは言っても、そうちょくちょくセトリに入ってくるわけではない。なんせアルバムの曲だ。セトリに入っているだけでも御の字だ。

今回のツアーでは、コロナ禍でも自分たちの指に触れてくれていて、離さないでいてくれてありがとうというTERUのMCの後に演奏された。本編のラストだ。
余談だが、最前の席になってみて実感したのは、ドライアイスの量が異常であること。ステージの真下にいて、機材コードを管理していたスタッフの方が、その量の耐えきれなくなって、むせながらこちらサイドに這い出てくるほど。ステージから少しだけ離れている私たちの足元もモクモクするような量。演出ってすごい。

本編ラストのサテライトは、ある意味での破壊力が凄まじい。何が破壊力かって?そりゃ、TERUの声ですよ。TERUの声は、ラストに向かってどんどんと太さ、力強さとしなやかさを増す。だから、本編ラストにサテライトをもって来られると、ファンととしては、もう動きを封じられたに等しい状態。
あの時のTERUの声、歌、叫び・・・それを的確に表現できる言葉は存在しない。あの会場で、あの空間で、あの時のステージを見ることでしか味わえない感覚、感情、衝動・・・「pure soul」での嗚咽とはまた少し違う、歌詞とかそういうものをすべて巻き込んだ上で、TERUの声に昇華させ、魂に、細胞に全てを送り込まれているような感覚に陥っていた。と思う。正直、実は圧倒されていて、よく覚えていない。それこそ、スタッフの方がステージ下から飛び出してきた時に、「あんなに二酸化炭素吸って大丈夫かな?」なんてちょっと冷静さまであったほど。
目の前の光景が、その光景を生み出している空間が、そこに響き渡るTERUの声があまりにも非現実的すぎて、その場が終わってしまうことが悲しすぎて、実感がなかったのだろうと今になって思う。

TERUの声は、神々しい。ただ、授かったものだけでは、30年も続けられない。TERUの魂の歌は、叫びは日々彼が感じていることに対してのこれ以上のない「解」なのではないか。そして、彼のボーカリストとしての矜持の賜物。50歳超えてもなお、12年前のあの映像すら可愛く思えてしまうような進化の形をステージで見せる、魅せる。

記憶は薄いが、体が細胞が憶えているようで、キーボードを叩きながら、呼吸をすることをちょいちょい忘れてしまった。

7/3のWOWOWの放送で、自分の細胞と答え合わせをしよう。




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