話題曲の間に名作が隠れていたりする

a Boy〜ずっと忘れない〜

はじめてオリコンランキングでTOP10入りを果たした「グロリアス」に続き、バラードとしての金字塔である「BELOVED」、そして初めてシングルランキングで1位に輝いた「口唇」の間にリリースされたのが、「a Boy〜ずっと忘れない〜」だ。前後にリリースされた2曲と比較すると特筆すべき目立った特徴はないし、なんなら曲調からも少しのんびりした印象を受けるかもしれない。
当時学生だった自分も実はそう思っていた。

ただ、年齢を重ねることにより、好きな楽曲や染み入る楽曲の顔ぶれが変わってきたりもする。当時はわからなかった楽曲の魅力にとりつかれることもしばしば。音楽は映像だといつも言っているが、その映像が最初に聴いた時のまま鮮明に残っているものもあれば、更新されていくこともある。この楽曲は後者で、のちに映像が更新された(というより、映像を持たなかった状態に、どんどんと映像が追加されていくイメージ)。

確かにタイトルからも、主張の強い楽曲でないことは一目瞭然。英語的に解説をするのであれば、誰かを特定しない冠詞「a」を使っているため、作者もどこにでもいるような少年を想像できる状態にしたかったのではないかとの推測もできる。だからこそ、自己主張の強い主人公像は、最初から捨て去られていたであろう。

たった独りの戦いを今でも誇りに思うよ

華やかな街を通り抜け路地裏の片隅で
したたかに産まれ生きてく 子猫の様に
ビルの風 欲望の渦 踊りながら すり抜けてゆくよ
口笛を吹きながら

お前の心 孤独と背中を合わせて
失くしてた自分の1/2を求めてゆく

時が過ぎてもあの笑顔を忘れない
たとえ土に還ることが人の宿命(さだめ)だって

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歌詞の4フレーズを抜粋したが、キラキラした日常はそこにはなく、何気ない日常をほんの少しだけ背伸びをしながら過ごす主人公を想像できるだろう。口笛を吹きながら〜と歌いながらも、それも自身を鼓舞するための一種のおまじないのような行為で。

でもそういう日常が何よりも尊くて、何よりも危なっかしくて、どうしても守りたいものだったりする。キラキラに憧れ続けた20代を終え、自身の身の振り方に模索する30代。この頃から、響き始める楽曲だと思う。
今だからこそできる共感部分、多いです。

イントロのHISASHIのギターとか、間奏でのアコギとかも、急かさずにマイペースで進んでいくことへの決意のようなものをも感じられ、ふっと気づくと涙腺を刺激されているようなそんな歌。

まずは、じっくりと歌詞を噛み締めながら、想像を膨らませてほしい。


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