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自社ビルが丸の内ならもっと良かった

アルバイト先(会社)の男性課長は腰が低かった。50代前半というのに白髪交じりだった。後で知ったが課長は3人兄弟の長男で、2人の弟が社長、専務として会社を引っ張っていた。

話し好きの課長が父親を語った。ある日「弟2人を社長と専務にする」と言われ冷たいなと思った。「他界して3カ月。無意識に父親の部屋をのぞきに行くんです。親子なんですね」。

課長以外は20代と30代の女性2人だけ。社員30人前後の会社で、7階建ての自社ビルが自慢。東京八重洲にあった。課長は「丸の内ならもっと良かったんだけどね」と笑い飛ばした。

父親を社長と呼び、弟を社長、専務と呼ぶ。呼ばれるときはさん付けだ。万年課長にも定年がある。次期社長は社長の長男(高校生)だという。そこまで生きたいと初めて欲を見せた。

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