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「まだ亡くならないの」と失礼な電話
祖父の死亡に気づいたのは朝食のときだった。母親から「ご飯だからおじいちゃん起こして」と言われ、様子を見に行ったら亡くなっていた。前日まで元気だったのに、あっけなかった。
戸籍には「昭和38年3月7日午後9時40分本籍で死亡」と書いてあった。死亡に気づくまで10時間かかっている。いまなら「午後9時40分」と書いた根拠は何なのかを聞いていただろう。
父のときも最初に気づいた。危篤と言われ休暇を取り帰省した。2~3日経ったら、会社から「まだ亡くならないの」と、失礼な電話があった。私は苦笑し「まだなんですよ」と答えた。
父はひたすら眠っているばかり。看病疲れで病室には誰もこない。一人で寝顔を見ていたら突然、両目を開けた。他界したのはその数分後だった。私は悲しいというよりホッとしていた。