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母ひとり、ハンカチ振っていざさらば

遠野駅での歓送会 (05年2月23日)数十年前の3月、遠野駅から夜行列車に乗って上京した。出発前に同級生と東京での再会を約束すると、彼は財布から1000円札を出し「餞別だよ」と笑った。

私は前日、同じ夜行列車で1日早く上京する他の同級生と駅前で偶然会った。そのときは「住所を教えてくれ」と言いいながら手帳と万年筆を手渡して、ついでに万年筆をプレゼントしていた。

卒業生が上京する3月下旬は連日、後輩の応援団や吹奏楽部員が遠野駅に集合した。列車が到着する30分ほど前から、応援歌を歌い先輩を送り出す。そのため、発車が定刻より遅れたこともある。

この光景は、遠野駅ばかりではない。主要駅(?)の宮守駅でも見ることができた。私もそれなりの覚悟を持って上京する数人の同級生と一緒に、両駅で歓送会をしていただきありがたかった。

吉幾三「酒よ…我が人生」の歌詞に「(略)青森の駅からは 母ひとり 泣きながら追いかける着物の母が居た(略)」とある。私も母ひとり。初めてハンカチを振ってくれた母と静かに別れた。

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