補欠部員の父親がいい話を持っていた
夏の県大会開幕まで1カ月を切ったころ、高校野球の助っ人(取材)で静岡の強豪校を見て回る。ノルマは10校で、支局員が各校の注目選手をリストアップ済み。難しい仕事ではなかった。
問題はサイド記事だった。野球部関連のいい話を探す必要がある。これは毎日が綱渡り。3校目のときは困った。いい考えが浮かばず、暗くなるまでバックネット裏でボーっと練習を見る。
そんなとき、野球帽を被った男性が近寄ってきた。「取材ですか?」「そうです」「どこから」「東京です」。いろんな話をした。その男性は補欠部員の父親で、おいしい話を持っていた。
父親は息子の顔が見たくて野球場へ。家と学校の距離は約1㌔だが、息子は野球部寮住まい。野球一筋で、家に来るのは正月の3、4日だけとか。またも綱渡りながら、なんとかしのいだ。
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