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幼なじみの父は常にひげもじゃだった

幼なじみの彼女の父親は、鼻の下からあごまで黒いひげを伸ばしていた。40歳前だというのに長老の風格があった。高校の入学式当日、駅で汽車を待っていたら彼女が遅れてやって来た。

彼女は見知らぬ男性と一緒。ぽかんとしていると「わりといい男でしょ、父だよ」と笑った。生まれて初めてひげなしの顔を見た。一張羅の背広にネクタイを締め、雰囲気が全然違った。

還暦の年に高校の同期会があった。彼女とは卒業以来の再会。父親のひげのことで話が弾む。当日朝、突然ひげをそると言い出し、30~40分かけさっぱり。父親も娘同様、いい日だった。

ここ数年、散髪する回数が減り、ひげをそる回数が多くなった。ひげより頭髪が伸びないかな。父親の亡くなった歳は超えた。母親の98歳は不可能だ。くだらないことを考え、日が暮れる。

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