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キユーピー醸造との協働、レストラン事業などを通じて“お酢の魅力”をもっとアピールしていきたい【株式会社庄分酢(後編)】

九州の醸造メーカーを中心に構成される「九州ビネガー会」。各社のものづくりへの思いを紹介するシリーズ『TSUNAGUレポート』の第4回。今回は福岡県大川市の庄分酢。創業300年の歴史を誇り、一子相伝の製法を大切に受け継いできた老舗企業。伝統製法でつくる「有機玄米くろ酢」をベースにしながら、酢酸菌入りの「かすみくろ酢」、女性向けの「酢飲」、「ビネガーサイダー」シリーズなど、意欲的な商品を次々と発表し、話題を集めています。後半では14代目社長の髙橋一精さんと15代目となる息子の清太朗さんに、事業の広がりとその思いについてお伺いしました。

15代目が中心に開発した「かすみくろ酢」

いま庄分酢は、そろそろ息子・清太朗へのバトンタッチの時期に来ているのです。彼が中心となって開発プロジェクトを進めた商品もあります。
 
その一つが「かすみくろ酢」です。キユーピーさんの研究で、酢を作る「酢酸菌」という成分が、体にいいということが最近分かってきたんですね。今までのお酢の製造工程では、「酢酸菌」は取り除いてしまう成分でしたが、それをあえて残した、古来製法の「にごり酢」なんです。
 
「酢酸菌」を加えることで免疫力の向上が期待できる上、酸味と香りはマイルドで使いやすいお酢です。時代を経た醸造蔵の中には「蔵付き菌」という、香り豊かなお酢に欠かせない菌がすんでいるのですが、キユーピー醸造の研究員の方が当社の蔵に来て、「蔵付き菌」を採取。いくつものデータを取って研究を重ね、商品化されました。
 
古来製法を続けている庄分酢と、先進的な研究を行っているキユーピー醸造さん。これは、お互いの力を掛け合わせて生まれた画期的な商品なんです。2年前の発売当時から、通販を中心に人気を集めています。私は、毎朝ヨーグルトに大さじ1入れて、ジャム、ママレードなど加えながら食べていて、毎日続けていただきたいお酢ですね。

「やみつきくろ辛みそ」は、辛みそにお酢を加えると、断然まろやかになることに着目した商品です。これも清太朗が中心で立ち上げた商品で、2021年から構想があり、2022年4月に販売開始。現在、辛い調味料が流行っているという時代のニーズもあり好調で、鍋やラーメンなどに使うのに最適の一品です。
 
そして会社として、今力を入れているのが「赤酢」。酒粕からつくるお酢なんです。「赤酢」は江戸前寿司に使われるのが通例ですが、九州でもそんなお寿司屋さんが増えてきたんです。そんな状況を感じて、うちにはいい酒粕があるので、活用していきたいという思いからです。
 
用途としては、今のところお寿司がメインですが、広げていきたいと思っています。旨みが強いし、色はお赤飯のような“赤”。その色をうまく生かした料理など提案していきたい。将来、冷凍にしてお寿司やおにぎりを販売するとか、そんなプランも進行中です。
 
お酢から広がって、お酢に関連した商品を生み出す。当社で実現できないものは、他社とコラボしながら企画していく。そして、変えるべきと、残すところを見極めながら、伝え方は時代に合わせていくという考え方で、どんどん展開していこうと思っているんですよ。

お酢を「おいしく食べていただきたい」

お酢作りとあわせて、レストラン経営も行っています。朝倉市には2009年にビネガーレストラン『時季のくら』、大川市本社の2Fには2012年に「酢Ristrante SHOUBUN(リストランテ ショウブン)」を開業しました。
 
レストランを始めたきっかけは、「お酢をおいしく食べていただきたい」という思いから。以前から、お店に「団体で行くので、試飲、試食をしたい」という問い合わせが多かったのです。それなら2Fでやろうと考え、作ったのが「酢Ristrante SHOUBUN」です。
 
「当社の商品の味を知っていただだくため」、そしてこう使えば、こうおいしくなりますよという「使い方の提案」ですね。古民家の風情ある空間の中で、前半はイタリアン、後半はお寿司、お吸い物など、それぞれにお酢を活かした和洋折衷の料理を楽しんでいただけます。
 
店の雰囲気作り・コーディネーションは、専務で妻の陽子が担当しています。始めるにあたりフードコーディネーターの資格を取り、ワインの勉強や、お茶も習いに行くなど活躍してくれています。器のセレクトなども彼女のセンスで揃えています。

九州ビネガー会での成果と、今後への思い

九州ビネガー会には、親父の代から参加させていただいています。私はビネガー会の中では庄分酢として第2世代で、その下に息子の第3世代がいる。その長い交流があって、キユーピー醸造さんとも「かすみくろ酢」という商品を生み出すこともできました。
 
2022年には「九州ビネガー会 創設50周年イベント」も行われましたが、参加企業の方々とも交流を深め、この50周年をきっかけに前を向いて、さらにワンステップ上がるような会になってほしいと思っています。
 
お酢は、日本古来の「食文化」。お酢のおいしさ、素晴らしさ、そして日本の伝統的な発酵食品の良さをどれだけアピールできるか。若い人たちにもその良さを知ってもらいたいし、食べておいしいと思っていただきたい。それが私の思いですね。


〈15代目・清太朗さんが語る、「時季のくら」の魅力〉

当初、発酵の拠点として新しい工場用地を探していたんです。それで、水と空気がきれいな朝倉市に土地を見つけ、2009年に工場を新設。同時に食のスポットも設けたいと考え、ビネガーレストラン「時季のくら」を開業しました。
 
四季を感じてもらえる空間の中、地元の食材を使って、お酢を活かした料理を提供する――。そんな思いを、地元大川在住の建築家・大宅栄治さんに聞いてもらって、建てたものです。
 
メニューの「時季のくら御膳」(2,200円)は、「オレンジとキャロットのラぺ」(美味酢)、「りんごと洋ナシのリコッタチーズ添え」(りんご酢)、「豚バラのくろ酢煮込み」(万能くろ酢たれ)など内容は季節によって変わりますが、各種のお酢をバランスよく使用し、提供しています。

料理の作り方はお客様に聞かれたら、全部お教えしています。自然に囲まれた環境で、お酢という発酵食品の良さを味わっていただきたいです。土日祝はバーベキューなども開始したので、アウトドアとしての魅力も発信していきたいですね。
 
―後編 おわりー

(プロフィール)
髙橋 一精 たかはし かずきよ
株式会社庄分酢 代表取締役社長。1954年生まれ。東京農業大学在学中の1977年帰郷し、家業を継ぐ。1997年代表取締役社長に就任。現在は息子の15代目・清太朗氏と共に会社運営・商品開発を行っている。
 
髙橋 清太朗
株式会社庄分酢15代目。東京農業大学卒業後、キユーピー醸造株式会社に入社。ビジネス畑で経験を積んだ後、2016年庄分酢に入社。現在は、14代目・一精氏と共に会社を支えつつ、新製品開発などを精力的に進めている。
 
●(株)庄分酢ホームページ
https://shoubun.jp/ 庄分酢 検索

●ビネガーレストラン「時季のくら」
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