第一章:2話 アーロンの決意のお話し
照久が転移してからおよそ三ヶ月が立ち
冬の寒さも通り過ぎ、春になる為に暖かくなって来た頃
俺は、ある程度この世界の常識がわかってきた。
ここには、俺の居た世界とは別の世界で魔法もあって魔物も居る物騒な世界に居る。
ここは、ピユロ村で俺の住んでいる家がピユロ村の領主邸だという事。
驚いた事に俺は、騎士爵タウラス家は、お貴族様の長男だ。
そして、今はまだ帰って来てないが5歳になった
兄弟のヒールと、6歳のカーロンがいると言われた。
カーロンは6歳だが、妹について行きたいとしつこいので止むを得ずヒールについてく事を了承したと言う。
この世界は5歳になると、旅をさせるらしいのだ。
それも、願掛け見たいなものだ(どんな時でも、たとえ死んだとしてもここに帰って来れる様に)と言うものらしい。
ーーー全く!なんていう習慣だ!
(いくら護衛が付いているから)と言って5歳の小さい子供に3ヶ月、四ヶ月も旅をさせるなんて。
そして、そろそろ兄弟たちが戻ってくる。
「ただいまぁ!」
ーーーー聞こえたと同時に玄関の扉が開き
二人は重たそうなリュックを背負い込み。
そこには、金髪のショートカットで毛先が内巻きになって、眼がくりっとした少女と
髪の色は紫と言うより黒っぽい青い色で、目は黒でちょっと前髪が目にかかり、やんちゃそうな少年が
そこにいた。
「おう!おかえり!!」
へぇ……この二人が俺の妹と弟なのか?
しっかし、よく似てるなぁ。妹の髪はお父さんで顔お母さんってとこか。
それから……弟は…っと
髪がお父さんで…顔は…お母さん…だよ…な?
「ははっ」
これは、将来美男美女だな間違いない…
「にーちゃん俺の顔見て何笑ってんだよ、俺の顔に何がついてるか?」
カーロンは不思議そうに俺の顔を見ながら言っている。
「いや、なんにもない」
俺は、将来は絶対美男美女だなと思って笑っていた。なんて言えなくて、笑いながらたらし込む。
「ふふっ変なお兄ちゃん」
妹が笑いを我慢したように口に出す。
そんな会話をしていると
「はいはい!ヒール!カーロン!おかえり!3人とも、もうすぐご飯できるから、手と顔を洗ってらっしゃい!」
「はぁい!」
っと元気な返事で慌てて外へ飛び出して行く。
俺を含めて3人が家に戻り
そして、お父さんが帰ってきてドアを開けたと同時に
「おお!ヒール!カーロン!かえったのか流石は、俺の子供だ!」
お父さんは、嬉しそうに笑いながら力強くヒールとカーロンに抱きつく。
「お、お父さん…痛いって!」
「く、苦しい…」
ヒールとカーロンは、苦しそうで引き下がりながらのたうち回る。
お父さんはヒールとカーロンが帰ってきてから、安心したような顔ををしていた。
ーーーご飯の支度ができて
「はぁい、皆んなご飯できたわよぉ」
「はぁい!」
部屋からお母さんの声が聞こえて外にいた俺達は家の中に入り
俺は、くんくんと匂いを嗅ぎ
「この匂いは…今日はシチューか!!」
母さんのシチューは絶品だ!野菜の甘味と牛乳の滑らかさ、そしてちょうどいいスパイスにチーズの存在感。
日本にいる時はここまで美味しいシチューを食べた事のない程に美味しかった。
「全国の料理人もお手上げですねお母様。」
「ま!アーロン嬉しい事言ってくれるじゃない!」
「そうだろ?ままの作る料理は世界一だろ?」
「あなたったらそんなに褒めて明日は雨かしら?」
「本当に、旅の時ヒール大変だったんだぜ?母さんの料理を食べたいって聞かなくてさ。」
「なっ!お兄ちゃんだって、ため息ついてたじゃない!」
「お、おい!知ってたのかよ!」
そして、家族の笑いは湧き上がり幸せそうな顔を皆んながする。
俺は、こんなに幸せに満ちていた、こんな生活がずっと続けばいいのにな…
ーーーご飯も食べ終え、片付けが終わって皆んなが寝静まった頃。
近藤は今どうしてるかな?あいつ、結構なんでもできるし上手い事やってるんだろうなぁ。
奥さんは、どんな奥さんなんだろう?
そんな事を俺は、寂しさを抑えながら考えていた。
そして、急にトイレに行きたくなり、下に降りて用を足し、また二階に上がると奥の方の部屋が明るい
俺は気になって見て見ると。
そこには、お父さんとお母さんが居て、なにやら言い争いをしているようだ。
俺は、耳を研ぎ澄ましてこっそり聞いた。
「だから、あいつは魔法の才能がある!魔術養成学校に行かせるべきだ!」
「だめよ!あの子が…占い師の言うとうりにしろって言うの?それは、だめよ!」
「そ、それは…それじゃあ、もし今のアーロンが魔術を習いたいって言ったらどーするんだ?」
「……その時私は…止めたいのだけれど…私は止められないと思うわ…」
あの子??他にも家族がいたのかな?占い師?何の話をしているんだ?
例えば、前に違う家族がいて魔術養成学校に通ったが命を落としたみたいな?
っと俺はそんな推論を立てていた。
お父さんは、魔術養成学校にいかせたいのだろうか…なら行くべきなのだろうか…
俺は剣を教わりたいのだが……
そんな二人の会話を聞きながら俺は考えていた。
そして、何もなかったかの様に俺は部屋に戻り、
そんな事を考え続けていると、急に眠気が襲ってきて目を閉じ始めて眠りつく
ーーーー朝になり。
何事もなかったかの様に父と母は普段どうりだ。
「おはようございます!お父様!お母様!」
「お!アーロン起きたな!おはよう!!」
いつも以上に元気だった。
だけど、どこか無理をしている感じの声に聞こえ、
この時俺は、この人達にはもう。そんな笑顔はさせないと誓い。「やりたい事を言う」と決心する。
「お父様お母様お話があります。」
っと言うと。お父さんとお母さんはお互いの顔を見て、ゴクリっと唾を飲み込み
「な、なんだ?アーロン」
「俺は、騎士になりたいのです!この世界を守る騎士になります!」
「だ、だめよ!そんなのだめ…」
お母さんは、涙をこぼしながらそう言っていた。
お父さんはお母さんの背中を摩り
「ママ…きめたろ?二人で止めないって約束したじゃないか」
「アーロン二人で話がある。こっちに来い。」
何がダメなのか(魔術養成学校に行く訳じゃないのに)俺には分からない。
なぜかと言うと、この二人が(子供の夢を)応援しないなんて、ある訳がないのだから。
たかが、三ヶ月だけど…この家族の事を見てきたのだ!子供の夢を反対なんてする人らじゃない事ぐらい分かる…
そして、無言でお父さんについていった。
そこに着くと、見渡す限り緑ですごく絶景な所に ポツリっとお父さんは座った…
「どうだ、綺麗だろう。ここはな…昔…ある人が好きだった場所なんだ」
どこか寂しそうな声で言っていた。
「とても綺麗ですね…お父様…感動しました。」
「どうだ、この町は…すきか?」
「え、ええ勿論ですとも!昔っから僕は好きですよ!」
「嘘をつくな!」
「え?」
俺は、頭が真っ白になり…真剣な眼差しを見て、(何も隠せない)とそう悟ると
「お前がアーロンじゃない事くらいお父さんもお母さんも、とっくに知っている。」
「!?」
俺は、何も言葉に出来なかった…ただ俯いて話を聞くぐらいしか出来なかった…
「お前は何処からきた?お前は誰だ…」
俺は、俯いたまま落ち込む。
話せば、この日常が無くなっちゃうじゃないかと心配だった。
もし、(もう。お前は俺の子供じゃない!出ていけ!)と言われたらどうしようと思ったからだ。
考えれば考えるほど、この三ヶ月間の記憶が蘇ってきて泣きそうになる
なんで…俺は、泣きそうになっている。前の世界でも一人だったじゃないか…友達付き合いもしてこなくて、ずっとアニメを見ていたオタクだったじゃないか…
でも……そんなの…そんなの!とても寂しいよ…
そんな事を考えていると、俺の涙が溢れ出る
「すまん…いきなり聞いた俺が悪かった。昔話をしようか…2年前にある子供が居た。その子供は内気な性格で、5歳になるとヒールとカーロンみたいに旅に出した。それから、その子供は戻ってきた。護衛がボロボロになった状態でな」
「もしかして…それが!?この場所が好きだったのも…もしかして」
俺は、今の話しの全てを察した様に口にしていた。
「あぁ!…そうだ…お前だ!でも、護衛はお前の事を(守れなかった)と言って泣いていた。
でも、何故か急にお前が後ろから現れたんだ。
そして、それを見た護衛がびびっちまって幽霊だとか怯えて逃げていった…冗談の言う奴じゃなかったし、あの感じは嘘をついているとは思えなかった。
そして、お前は扉の前で倒れて、俺がベッドまで運び
それから、2年…お前の目が覚めたのは、7歳の今のお前と言う訳だ。」
「2年後!?そんなの信じられません!それでは何故!俺が目を覚ましたとき。あんな普通に接してくれたんですか!何であんなに俺に優しくしてくれたんですか!」
俺は、訳が分からず全ての感情をお父さんに押し当てるかの様に俺は、抱きつきお腹を殴りながら泣いていた。
「まぁ…まて!アーロン!話はまだある!悩んださお母さんもお父さんも、2年間いっぱい悩んだ。
それから俺が、仕事で王都に行った時、ある占い師に出会った、そしてこう言われた。
「其方たちにこの世界の運命を変える存在の者が現れましたね?」とな……俺は、気になっていたけど無視をした…嘘だと思ってた。でも…
信じざるを得なかった。それから、お母さんともヒールともカーロンとも話し合った。
そして、アーロンが目を覚ましたら俺らは、いつも通りに接する…とな」
「そーですか…お父様…だからお母様は、俺になる前のアーロンになると思って、俺を戦わせる運命にしたくなかったのですね…それでは、最後に質問していいですか?」
俺は冷静さを取り戻していた。
「なぜ、そんな事がありながらヒールとカーロンを旅に連れて行ったのですか?」
「……それは、監視していたからだ…」
「監視?」
「あぁ……魔法でお母さんがいつ何処でも飛んでいける様に監視していたからだ……」
魔法は、寝てると使えないよな…では…
「まさか……三ヶ月間寝てないって事ですか!?」
「あぁ……お母さんはずっと無理をしていた…
ずっと眠らずに、24時間…寝ずにずっと魔力を使って、監視していた。
この世界には、眠らず草と言うのがあるからな。
その薬は眠くならないんだ…それでも効果が切れれば、その分の眠気は襲ってくる。だから、お母さんは命がけで監視して居たんだ」
なんていう無理をしやがる…
そんなに辛いのに、俺らに悟られない様にしていたというのか…
っと思うと、お母さんがどれだけ偉大か気づき、
その事にも気づけなかった自分が悔しくてまた泣いていた。
「だから、ヒールとカーロンが帰ってきた時…お母さんは抱きしめなかったなかったのですね…」
「そうだ。でも、その夜はすごく泣いていた。
そのあと、ぐっすり眠りについた。
そしてまたいつもの時間に起きて、朝ご飯をつくっていた。
俺が、もう大丈夫なのか!?もうちょっと寝てろ
って言うと、もう大丈夫よあなた!ありがとう…でも…私はあの子達のお母さんですもの!あの程度でくたばるものですか!と言っていた。
これで全部だ。さぁ、次はお前の番だ。アーロン」
俺は、全てを伝えた。
元々こんな魔法も無い魔物も居ない「日本」と言う国に住んでいて「アニメ」というこんな感じの世界で世界を救う物語系が好きだったと言う事。
そして、そのアニメに憧れて騎士になりたいと思っていた事。
そして俺は、日本に居た頃は、メーカーや生産者に商品を仕入れてそれを売る仕事をしていたっと言う事。
少女を助けて、命を失って目を覚ませばこの世界に居たと言う事。その全てを伝えた。
「そうか。そんな事が…魔法がなく争いもない世界…そんな簡単に自分のやりたい事を見つけられる世界…そんな世界があるんだな…羨ましいな
俺はもう。何も驚かない…よし!俺はお前を俺の子供と認める!」
「え?認めてくださるのですか?」
その瞬間俺は、嬉しかった。もうあの日常を取り戻せないと思っていたからだ。
「あぁ……認めるさ!だってその…なんだ…日本だったか?その世界では、命をかけてまで少女を守ったんだろう?それはもう俺の息子だ!」
といい、頭を撫でてくれた。
そして、俺は父に抱かれながら泣きじゃくっていた。
いい大人が台無しだ。でも今は今は泣かしてほしい………
こんなに泣くのは、いつぶりだろうか…
そして、朝に話しをしていたのがもう、夕方になっていた。
俺が、泣き止んだ頃。
「そろそろお母さんの所にいくか!」
「アーロン!」
家に戻り玄関を開けると、お母さんは飛び込んで俺に抱きついてきた。
「ごめんね…アーロン…ずっと隠していて。本当にごめんなさい。」
お母さんは泣き叫んで、俺に謝った。
「大丈夫ですよ!お母様!こんな俺だけど家に置いてくれてありがとうございます!でも、お母様?僕はそれでも騎士になりたいです。」
俺は、真剣な眼差しでお母さんに言う。
「そこまで言うのなら…分かったわ……それじゃあ約束して!全てを投げ出したくなって嫌になったらこの家に絶対戻ってくる事!いい?」
「はい!わかりました!必ず守ります!」
そして、ヒールが下に降りてきた。
そうか、ヒールもカーロンもこの話しは知っているのか……
まぁ、俺からは口にしない方が…いいよな…
聞かれたら答えるようにしよう。
「おかあさん…お話はおわったの?お腹減ったよぉ」
「そうだね!ご飯にしましょう!今日は皆んなが大好きなポトフよ!」
この時の食べたポトフは一生俺はわすれないよ…お母様。