インフラから離れた暮らしを実現して、虫村に来る人に「バグ」を起こしたい 〜めざせ!KyunJoyマスター 中村真広師範【後編】〜
押忍!Kyun株式会社の代表・teruこと、奥本照之であります!!
タイトルの「KyunJoy」という言葉は、自分の心がときめく「Kyun」と、喜び・楽しむ意味の「Joy」を足した造語で、Kyun株式会社の代表として世界にKyunJoyすることの大切さや素晴らしさを普及していくために、僕の生き方を見て「KyunJoyしている漢だ!」と思ってもらえる人間になる必要があると感じました。
そこで、僕目線で「KyunJoy道」の先達とリスペクトしている方にインタビューする連載を立ち上げることになりました。
出演者の方(=師範)との稽古(=インタビュー)を通じて「KyunJoyマスター」を目指す所存であります!
今回は前編に引き続き、僕が以前働いていたツクルバの共同代表として上場させた後は代表を退任し、現在はここ藤野に移住して「虫村(バグソン)」の村長や株式会社KOUの代表取締役をしている中村真広師範にお話を伺います。
虫村とは?なぜ東京から藤野に移住したのか?ツクルバ共同代表を退任して村長になったのか?中村さん稽古をつけてもらいながら、「KyunJoy」に生きるためのヒントを探っていきました。
アートワークと経済活動を両立している理由
teru:押忍!後編もよろしくお願いいたします!
中村:よろしく(笑)。
teru:今は虫村とKOU、それぞれでどのようなことをされているんですか?
中村:虫村の村長は僕にとってはアートワークで、完全に経済活動から切り離して自分のため。
KOUは経済活動、社会や誰かのため、という感じで両立しているかな。
世間から一番追い風をもらえるものって経済活動だから、資本主義の需要に乗っかると資金を集めやすくて、社会にインパクトを出しやすい。
KOUでは、個人と組織のやりたいこと、つまり「Will」をチューニングする「emochan」という事業をやっていて。
双方のWillがそろっていないと、個人はここで働いていていいのか不安になったりモチベーションが下がったりするし、組織側はその人が不安を抱えながら仕事をすることで、成果が出ていないと評価せざるを得なくなってしまい、ミスマッチが起こってしまう。
そんなWill間のチューニングできたら、働いてる人がより幸せになって、組織の売り上げにもつながるかもしれない。社会から資金投資という追い風をもらえたら、世界の幸せの総量を増やせる、これを実現したいと思っています。
teru:改めて聞くとすごいサービスですね……。
中村:アートワークとしてやっている虫村は、「バグ」の村で「バグソン」と読むんだよね。虫を英語に訳したバグと日本語のバグるをかけ合わせた造語です。
中村:この建物はソーラーパネルを設置して電力供給していて、上水道施設はなくて、シャワーもトイレもすべて雨水タンクから来ています。
東京だとインフラで全部接続されてコントロールされているけど、ここは完全にオフグリッド(電力も水も自給自足している状態)でインフラから自立しています。
あとは、コンポストトイレを設置しているので、うんちやおしっこも堆肥化して庭にまけば野菜が育って、それを食べて生活するという循環が生まれる。人間がここに暮らすことで、周りの生態系が豊かになり、そしてインフラに頼らない暮らしを作りたいなと。
都会で暮らす人に「?」を付けて帰ってもらいたい
teru:上にある建物(写真左上)は中村さんのご自宅だと思うんですが、今いる建物(写真右)はどのように使われているんですか?
中村:外から来てくれる人が短期滞在や合宿をできるようにする予定かな。
当たり前にあるはずの上下水道や電気がなくても大丈夫ということを知ってもらって、ちょっとバグっていうか「東京の暮らしって……?」って疑問を持って帰ってほしいんだよね。特にこれから資本主義を引っ張っていく、例えばベンチャー企業の経営層の方が頭に「?」を付けて帰ってもらえたら、東京も変わっていくんじゃないかなって。ウナギの稚魚放流みたいな(笑)。
teru:なるほど、東京と反対の暮らしができるんですね。藤野に移住した理由も、こういう暮らしがしたかったからなんですか?
中村:そうそう。東京って消費の街で、お金があれば美味しいものを食べられて好きなところに行けるけど、逆にお金がないと何もできない。
そう思ったときに東京に住んでいるべきではないんじゃないかと吹っ切れて。子どもの教育を考えるタイミングでもあったので、移住を検討し始めたんだよね。
teru:都心住まいの僕も少し分かります。
中村:いくつかの土地を候補に回っていたある日、屋久島に家族でリトリート(日常から離れた環境に身を置き、いつもと違った体験を楽しむこと)しに行って。ひとつ屋根の下で拡張家族的に共同生活をしたり、自然の中で瞑想をしたりしたら、自分の感覚が開いていくのが分かって、最後は木漏れ日の美しさだけで涙が出てきた。
東京ではノイズが多すぎるから開くはずのものを閉ざしていたということに気付いたんだよね。人と心が通じ合う、こういう人間関係がほしいという想いを深めて、その後に藤野にご縁があって、移住することを決めて。
大きな理由のひとつは、子どもにシュタイナー教育(一人ひとりの個性を尊重し、個人の持つ能力を最大限に引き出すことを目的とした教育)を受けさせられること。
自分は受験をしたし、人の物差しで点数や偏差値を決められてきたけど、藤野には逆の世界が広がっている。探求したいものを探求して学びを深める、これが欲しかったし、子どもたちにもやらせたいなと。
teru:たしかに、東京だとすべてお金で解決できますよね。水とか電気もそうですけど、自分の居場所が足りないのであれば、推し活をしようとかコミュニティを作ろうとかできますし。
中村:ここに移住してから、生活のすべてをコントロールできるのか、はよく考えるようになったかな。
東京って時間も空間も全部自分で管理・コントロールできる。用水路とかも全部計算されてコントロールされているし、暑ければエアコンを付ければ快適になるし、急がなきゃって思ったらタクシーに乗れば時間を短縮できる。
でも、ここに住んでいると、偶発的にいろいろなことが起きるわけよ。植えてないのに、麦が育ってたりね(笑)。
teru:両極端ですね(笑)。
中村:同じように、キャリアプランや経営も計画通りにいかないことの方が多い。プランを描くと、その通りやらないといけないと思って、ズレていけばいくほど人生が上手くいってないと評価や感じてしまうから、プランニングしなくてもいいんじゃないかなって。
とはいっても、虫村も雨水タンクや電気でお湯を作っているから、完全に管理することを手放すことはできない。コントロールすることは悪いことじゃないし、計画も立てるんだけど、その通りいかないこともあるよねというスタンスは大切にするようになったかな。
KyunJoyとは「自律と他律のバランスを取り続けること」
teru:他の転職エージェントが他律的な要素を強みとしてキャリア支援をしているので、自分たちは自律に振り切っているんですけど、自律的に行き過ぎてる人には反対側に寄せるようなこと、例えば市場価値とのバランスを取るようなこともアドバイスするんですよね。
分散投資というか、いろいろな物差しがあることを伝えて、自律と他律のチューニングのお手伝いをしてるのがKyun Agentなのかなと。
中村:他律が存在しないと、自律も成立しないからね。
「自分らしく自律的に生きることがいい」ってシンプルに片付けたくなるけど、その自分らしさと定義しているのは自分自身だけではなくて、家族とか周りの人との関係性で成り立っている。
人それぞれちょうどいいバランスも違うし、フェーズによっても変わってくる。だから、自律と他律のバランスを取れているかを自分に問いかけることがKyunJoyなのかもしれないね。
teru:押忍!
本日は稽古をつけていただき、ありがとうございました!
今回のKyunJoyの心得 by teru
一番の学びは、自律と他律のバランスが大切ということでした。
自律はひとつのことに依存せず、自分でコントロールできる状態で、中村さんの場合はアートワークと経済活動のふたつに身を置くことで、自律しているんだなと。
自律に必要なのは、ゲーム(やりたいこと)のルールを理解すること、物事を高い抽象度で見ること、というのも気付きとして大きかったです。本業である仕事に複数のゲームのルールを入れて同時に解決しようとする方が多いですが、それによって物事が複雑になることが多いと感じています。
なので、それぞれのルールを最適な形で実現していくことが大切なんだなと思いましたね。そして、意図的に自分や社会を俯瞰するためには、「虫村」のような非日常の場所に行くことが必要だと思います。
Photo/IKKI FUKUDA Interview & Text/外山友香 Design/ハヨン Edit/篠原泰之
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